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Canva調査で見えた「AIマーケティング」と「人間らしさ」のズレ

キーポイント

「AIを使う側」と「見る側」の温度差がかなり大きい

Canvaが公開した「State of Marketing and AI Report 2026」は、かなり興味深い調査です。
ひとことで言うと、​作る側はAIに夢中、見る側はまだ人間の手触りを求めている、という話です。

マーケター側では、​97%が毎日AIを使っているそうです。しかも99%がAIへの投資を増やす予定
この数字だけ見ると、「もう広告やマーケティングはAI前提なのでは?」と思ってしまいます。実際、その空気はかなり強いです。

でも消費者側は違います。
78%が「AIがもっと良い広告を作れるとしても、人間が作った広告のほうがいい」と回答し、​87%が「最高の広告には人間らしさが必要」と考えているとのこと。
ここ、かなり本質的だと思います。人は“成果物の完成度”だけではなく、​誰が、どんな意図で作ったかを気にしているんですよね。

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問題は「AIを使ったか」より「それを伝えたか」

この記事で面白いのは、消費者がAIに対して単純に拒否反応を示しているわけではない、という点です。
むしろ焦点は透明性にあります。

調査では、消費者が安心する条件として次のようなものが挙がっています。

つまり、「AI使ってるなら即アウト」ではなく、​ちゃんと説明して、選べるようにしてほしいということです。
これはかなりまっとうな感覚だと思います。食品でいえば原材料表示が欲しいのと似ています。何でできているかわからないものを、いきなり食べたい人は少ないですよね。

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“AI slop” が増えているのは、かなり象徴的

調査では、​**“AI slop” という言葉の言及が9倍**に増えたそうです。
これは、低品質で雑、いかにも機械がそれっぽく量産した感じのコンテンツを指す俗語です。

この言葉が広まっているのは、かなり象徴的です。
AIはたしかに便利ですが、​雑に使うと一気に「安っぽさ」が前面に出る。そして今のユーザーは、その違和感をかなり敏感に察知しています。

調査でも、​41%のマーケティングリーダーがAI slopをすでに大きな課題だと認識しているそうです。
さらに、​70%の消費者がAI広告には何かが欠けているように感じると答えています。

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個人的には、ここがいちばん面白いところです。
AIの問題は「作れるかどうか」ではなく、​何を基準に作るかなんですよね。
要するに、これは技術問題というより運用や編集の問題ではないかと思います。AIはあくまで道具で、雑な成果物を量産するか、丁寧な表現に磨き上げるかは、人間側の設計次第です。

マーケティング現場では、AIはもう“日常”

調査によると、​68%のマーケティングリーダーが、AIによってマーケティングが影響するビジネス判断が増えたと答えています。
つまりAIは、単に画像やコピーを作るだけでなく、​意思決定のスピードや量そのものを変えているわけです。

Canvaが引用している数字を見ると、投資の勢いもかなり強いです。

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これは、もはや「導入するかどうか」の段階ではなく、​どう活用するかの段階に入っていることを示しています。
ただし、ここで油断すると“AI slop” が増える。なので、便利さに酔うほど品質管理が大事になる、というちょっと皮肉な構図です。

CanvaとAnthropicの提携は、この流れにピタッと乗っている

このレポートの公開と同じ日に、CanvaはAnthropicとの提携拡大も発表しました。
対象は Claude for Small Business。つまり、小規模事業者がClaudeを使って、CanvaのBrand Kitに沿った広告やデザインを自動生成できる仕組みです。

Brand Kitというのは、​ブランドの色・フォント・ロゴなどをまとめた設定のことです。
これが連携されると、AIが作った素材でも、勝手にブランドイメージから外れにくくなります。これは地味だけどかなり重要です。
AIに“それっぽいもの”を作らせるのは簡単ですが、​毎回きちんと自社らしく見せるのは意外と難しいからです。

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しかもこの連携は、QuickBooks、PayPal、HubSpot、DocuSign、Google Workspace といった業務ツールにも広がるそうです。
要するに、AIは「面白いおもちゃ」から「仕事の土台」に移りつつある、ということですね。

これからの競争軸は「AIの有無」ではなく「信頼」

この話でいちばん大事なのは、​AIを使っていること自体は、もう差別化になりにくいという点です。
むしろこれからは、​どう開示するか、どう品質を担保するか、どう選択肢を残すかが競争力になるはずです。

Canvaのレポートが示しているのは、AI時代のマーケティングで勝つ条件が「より速く作ること」だけではない、ということです。
消費者は、速さよりも納得感を見ています。
そして、その納得感は「ちゃんと人が関わっている」「AIを使ったなら隠さない」「雑に量産していない」というサインから生まれるのだと思います。

個人的には、これはかなり健全な反応だと感じます。
AIを全部否定するのではなく、​使うなら筋を通してほしいという態度だからです。
マーケターにとっては少し面倒ですが、長期的にはそのほうがブランドを守れるはずです。

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要するに、AIはもはや避けられない。
でも、​人間らしさまで不要になったわけではない
むしろ今は、人間らしさをどう残すかが、AI時代の広告やブランドづくりの勝負どころになっている、という話だと思います。


参考: Canva report: nearly every marketer uses AI, but consumers still want the human touch

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