暗号資産のデータ分析プラットフォームとして知られる Dune Analytics が、従業員の 25%を削減しました。
発表したのは共同創業者兼CEOの Fredrik Haga 氏。理由は、会社の重点を AI と 機関投資家向けの暗号資産導入 に絞り直すためです。
正直、これはかなり象徴的なニュースだと思います。
Duneは「暗号資産のデータを見える化する会社」という印象が強いのですが、その会社が今や「AIで作業を自動化し、より大きな顧客に売る方向」へ進んでいるわけです。いかにも今の業界らしい動きです。
Duneは、ブロックチェーン上のデータを集めて分析し、ダッシュボード(グラフや指標をまとめた画面)として見せるサービスです。
たとえば「どのプロジェクトに資金が集まっているか」「特定のトークンがどれだけ使われているか」などを、見やすく追えるようにします。
ここでよく出てくるのが SQL という言葉です。
これは、データベースに「この条件で情報を取ってきて」と指示するための言語です。要するに、データをうまく扱うための専門的な命令文のようなものです。
Duneの新しい方向性で目立つのが Dune MCP。
記事によるとこれは、SQLやデータ基盤の知識がなくてもダッシュボードを作れるようにする製品です。つまり、専門職の人でなくても、AIの助けを借りて分析画面を作れるようにする狙いがあります。

ここはかなり面白いところです。
Duneはもともと「データを扱える人向け」の印象が強い会社でした。それが今度は、AIを使って、もっと広い層に使いやすくする方向へ寄っている。
言い換えると、**“難しいからこそ価値がある”世界から、“難しさをAIで隠して広く使ってもらう”世界**へ移ろうとしているのだと思います。
Haga氏は、会社を「core data products」に集中させるためだと説明しています。
要するに、あれこれ手を広げるのではなく、Duneの中心であるデータ事業を磨き直すということです。
さらに彼は、会社が今後は
の2つに「all-in」すると述べています。
ここでいう onchain は、簡単に言うと「ブロックチェーン上で直接行われる活動」です。
機関投資家というのは、個人ではなく、企業やファンドのような大口の投資家のこと。つまりDuneは、個人の暗号資産ユーザー向けだけでなく、プロ向け・大口向けの市場をより重視するというわけです。
個人的には、これもかなり自然な流れに見えます。
暗号資産市場は熱狂だけで成長する時期を過ぎ、今は「ちゃんと儲かるか」「どう効率よく運営するか」が重視されやすい。
その結果、B2Bっぽい動き、つまり企業向けの堅いサービスに寄っていくのは、かなり筋が通っています。
記事では、今回の人員削減の2か月前に、Haga氏が 300件の面接を実施し、その際に “AI fluency” を重要条件にしていたとあります。
“AI fluency” は、ざっくり言うと
「AIを自然に使いこなせること」
です。単にAIを知っているだけでなく、仕事の中でAIを当たり前の道具として扱えるかどうかが見られていたわけです。
しかも彼は当時、
「AIを実際に使い込み、自分の仕事領域をどう変えるかを考えていないなら採用しない」
というかなり強いメッセージまで出していました。
これはかなり攻めた姿勢です。
普通の会社なら「AIに興味があります」くらいでも通りそうなところを、Duneはもっと踏み込んで、AIを前提に仕事を作り変えられる人を求めていた。
今回のレイオフを見ると、あの採用方針は単なるポーズではなく、かなり本気だったのだろうなと思います。
Duneだけの話ではありません。記事によると、暗号資産業界では最近、似たような動きが相次いでいます。
背景には、AIによる業務効率化と、利益率を重視する経営があります。
ここで重要なのは、AIが「魔法みたいに人を減らせる」からという単純な話ではないことです。
記事では、採用・人材市場の専門家たちが、
これはかなり本質的だと思います。
つまり、「AIがあるから人を減らす」のではなく、景気や市場の空気として、もう大きな組織を抱えたまま攻める時代ではない。そこにAIが乗っかって、削減が進みやすくなっている、という見方です。
記事の後半で紹介されている専門家のコメントは、なかなか示唆的です。
RiskPodの採用責任者であるRobert Lycett氏は、AIはたしかにジュニアレベルのコストを削っていると語っています。
たとえば、事務的で低レベルな作業はAIでかなり代替できるので、給与コストを大きく下げられる、というわけです。
一方で彼は、「AIは解雇の理由として便利だから使われている面もある」とも述べています。
これはかなり生々しいコメントです。
要するに、会社が本当にAIだけを理由にしているとは限らず、もともと整理したかった人員を、AIを口実にしている場合もあるということです。
HashtagWeb3.comの創業者Vedang Vatsa氏は、Web3の仕事が丸ごと消えるわけではないと言っています。
むしろ、基本的な技術職は削りつつ、AIをブロックチェーン製品に組み込める優秀なエンジニアには高額を払う、という構図だと説明しています。
これ、かなり現実的です。
つまり「人を減らす」一方で、必要な人にはもっと高いレベルを求める。
AI時代の仕事は、平均点の人をたくさん集めるより、尖った人を少数精鋭で使う方向に寄りやすいのかもしれません。
Art of Blockchainの創業者Shubhada Pande氏は、これは単純に「AIがWeb3の仕事を奪う」という話ではなく、仕事の進め方を再設計しているのだと見ています。
彼女によれば、AIによって少人数でも
などを効率よく回せるようになる一方で、繰り返し作業や影響の小さい仕事は危うくなるとのことです。
そして重要なのは、これからの人材には
ことが求められる点です。
ここは私もすごく同意します。
AIは便利ですが、出力をそのまま信用すると危ない場面が少なくありません。
だから本当に価値が高いのは、AIを使える人というより、AIの出力を見抜ける人なのだと思います。
Haga氏は、会社はまだ資金的に十分余裕があるとも話しています。
また、過去8年間いろいろな荒波を乗り越えてきた、と述べています。
つまり、今回の削減は「会社が危ないから」というより、今後の成長モデルを作り直すための痛みを伴う再編という位置づけです。

ただ、こういう話を聞くといつも思うのですが、
「戦略転換」と「人員削減」は、経営者側から見ると美しい言葉でも、現場の人にとってはかなり重い出来事です。
Duneのケースも、AIで効率化する未来を語る一方で、その裏で多くの人が職を失っている。ここはかなり複雑で、手放しでは喜べないところです。
それでも、Duneの動きは今のWeb3業界の空気をよく表しています。
AIで仕事を圧縮し、機関投資家向けに売り、少数精鋭で回す。
この流れは、今後ほかの企業にも広がるのではないかと思います。
Dune Analyticsの25%削減は、単なるリストラではなく、会社の重心が変わったサインです。
「暗号資産データの会社」から、「AIでデータ活用を簡単にし、機関投資家向けにも広げる会社」へ。かなり大きな方向転換です。
個人的には、これはWeb3業界の次の標準形を先取りしているように見えます。
派手な拡大より、AI・効率化・プロ向け市場。
なんというか、夢の時代から、かなり現実的な時代に入ってきた感じがします。
参考: Dune Analytics Slashes 25% of Workforce in AI, Institutional Pivot - Decrypt