SpaceXが新型の巨大ロケット Starship V3 を、ついに初めて宇宙へ送り出しました。
この記事でいう「V3」は、Starshipの第3世代みたいなもの。単なるマイナーチェンジではなく、運用機に近づけるための大幅な再設計が入った“次世代版”です。

打ち上げは2026年5月22日、テキサス州南部の Starbase で行われました。しかも今回は、最近完成したばかりの2基目の発射台からの打ち上げ。SpaceXがこのロケットにどれだけ本気か、かなり伝わってきます。

高さは約 124メートル。
数字だけではピンと来ないかもしれませんが、これはとんでもないサイズです。個人的には、Starshipを見るたびに「もう“ロケット”という言葉だけでは足りないな」と思います。建造物に近い迫力があります。


今回の飛行は 12回目の亜軌道テスト飛行 でした。
「亜軌道」というのは、地球をぐるっと回る本格的な軌道には入らないけれど、宇宙空間までは到達する飛行のことです。

要するに今回は、「まずは宇宙まで行けるか」「新しい設計がちゃんと動くか」を確かめるためのテスト。
しかもStarship V3にとっては初飛行なので、成功すれば大きな一歩、失敗しても学びが多い、というかなり重要な試験でした。
SpaceXにとっては、2025年10月以来のStarshipミッションでもありました。
しばらく空いていたぶん、「Starship is back.」という見出しが妙にしっくりきます。


打ち上げは現地時間 午後6時30分 に実施。
離陸直後から、巨大ロケットらしい圧倒的な迫力があったようです。

ただし、今回も“完全勝利”というわけではありません。

1段目ブースターの Super Heavy は、33基ある Raptor engine のうち1基が停止しました。
Raptor engineは、SpaceX独自のロケットエンジンで、液体メタンと液体酸素を使う高性能エンジンです。

さらに、ブースターは帰還のための重要な動作である boostback burn に失敗。
これは、打ち上げ後に進行方向を変えて、発射地点付近へ戻るための逆噴射のことです。今回はその制御がうまくいかなかったようです。

上段の Ship 39 も、上昇中に6基の主エンジンのうち1基を失いました。
それでも残り5基で宇宙空間には到達しています。

SpaceXのDan Huot氏はライブ解説で、完全に理想的な状態ではないが、分析済みの範囲内で推移している、と説明していました。
このあたり、SpaceXらしいというか、「失敗ゼロ」を目指すというより、実機を飛ばしながら潰していく姿勢がはっきり出ています。好き嫌いは分かれるかもしれませんが、私はこのやり方はかなり現実的だと思います。

今回のStarship V3は、前世代のV2とはかなり違います。
記事によれば、V3では設計が全面的に見直されているとのこと。

特に面白いのが、hot staging に関する構造です。
Hot stagingとは、上段がエンジンを噴射し始めてから分離する方式のこと。普通の「切り離してから点火」とは違い、かなり荒っぽく見えますが、実用上は効率を上げられる場合があります。

V2では、分離時に落ちていくインターステージリングがありましたが、V3ではその周辺構造が変わっています。
ブースター上部に“フェンス”のようなハードウェアを持たせて、上段エンジンが点火するときの空間を確保する設計だそうです。

こういう変更を見ると、Starshipはもう「試作品を飛ばしている」というより、運用ロケットとして成立させるための実験を重ねている段階なんだなと感じます。ここが本当に重要です。


SpaceXはこれまでのStarshipミッションで、発射塔の“chopstick”と呼ばれる巨大アームでブースターをつかまえる回収を試してきました。
でも今回は、新しいハードウェアの初飛行ということもあり、無理に回収は狙いませんでした。
その代わり、メキシコ湾へのソフトスプラッシュダウンを目指す計画でした。
「ソフト」とはいえ、要するに安全な場所に落とすということです。

しかし実際には、ブースターは予定通りには戻れず、結果として海に落下。
ライブ映像では、宇宙から見たブースターが地球へ向かって落ちていく様子が映し出され、最後は画面が切れました。

これは失敗ではあるけれど、初飛行で無理に回収を狙わなかった判断はかなり堅実だったと思います。
新型機の最初の一歩で、発射台まで壊してしまったら洒落になりませんからね。


記事の続きでは、上段の Starship V3 が宇宙空間で何をしたのかがさらに詳しく触れられています。
たとえば、ダミーのStarlink衛星を放出し、その中の一部が自分のライトを点けてStarshipを撮影するような仕掛けもありました。

このあたりはSpaceXらしい遊び心というか、テスト飛行なのに「見せ方」がうまい。
実験データを取るだけでなく、視覚的に“何が起きたか”を伝える演出までやるのが本当にうまい会社だと思います。


今回の最大のポイントは、Starship V3が**“初めて飛んだ”**ことです。
新型ロケットは、地上試験ではわからない問題が山ほどあります。エンジンの相性、分離時の振動、機体の熱、制御系の癖……。実際に飛ばしてみて初めて見えることが多いんです。
だから、完璧ではなかったとしても、新世代機の初飛行を無事に成立させたこと自体に大きな意味があります。
特にStarshipは、将来的に月や火星まで見据えた巨大プロジェクト。その中でV3は、単なる“新型”ではなく、本当に使える宇宙船へ向かうための重要な分岐点だと思います。

個人的には、Starshipは「成功か失敗か」の二択で見ると本質を見誤るタイプのロケットだと思っています。
むしろ、どこが壊れ、どこが生き残ったかを積み上げていくことで進化する。今回もその典型でした。


Starship V3の初飛行で見えたのは、SpaceXのいつもの強気さと、同時にかなり現実的な検証姿勢でした。
離陸は華々しく、宇宙到達も果たした一方で、ブースターやエンジンには問題も出た。
でもそれこそが、次世代ロケット開発の“本番”なのだと思います。

Starship is back.
そして、まだまだ進化は続きそうです。

