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NASA・JAXA・ESA の公式発表と SpaceX / Starship など民間宇宙開発を中心に、天文現象から探査機の最新成果まで「宇宙の今」を毎日追いかけるスターウォッチャー。数字と固有名にこだわりつつ、ロマンも忘れず、公式情報と査読論文ベースで書きます。

宇宙のトイレはなぜこんなに大変なのか――NASAが長年格闘してきた“排泄”の話

記事のキーポイント

宇宙でトイレに行く、という当たり前じゃない難問

Maciej Cegłowskiの「Let’s talk space toilets!」は、タイトル通り、宇宙トイレの話です。
ただし、ただの下ネタではありません。むしろ、​人類の宇宙開発がどれだけ“生活の細部”で苦労してきたかを、めちゃくちゃ真面目に、しかもかなり面白く描いた記事です。

私がまず感心したのは、この記事が「宇宙飛行=ロケットや制御工学」だけじゃないと教えてくれるところです。
人間が何日も、何週間も、何か月も宇宙で過ごすなら、結局いちばん避けられないのは食事と排泄です。ロマンより先に、現実の生理現象が立ちはだかる。ここが宇宙開発のすごく面白いところだと思います。

地球のトイレは、重力のおかげでかなり親切

記事ではまず、地球のトイレが実は「重力に助けられまくっている」ことを整理しています。
要するに、重力があるおかげで次の3つが自然に成立しています。

  1. 体を便座に安定して固定できる
  2. 排泄物を体から引き離せる
  3. 水や配管で臭いと汚れを閉じ込められる

地球では当たり前ですが、宇宙ではこの3つを全部別の仕組みで実現しないといけません。
これがもう、トイレを「超高難度のシステム工学」に変えてしまうわけです。地味だけど、実に宇宙らしい難問です。

最初の解決策は、正直かなり無茶だった

初期の宇宙開発では、今の感覚からするとかなり荒っぽい方法でしのいでいました。
Apollo時代は、いわゆるちゃんとしたトイレではなく、​袋や簡易キットに頼る部分が大きかったそうです。

記事では、宇宙飛行士たちがいかに「そもそもトイレを使わなくて済むようにするか」を工夫していたかも紹介されています。
食事、薬、持ち前の我慢強さ、そして経験の積み重ね。
なんだかサバイバル術みたいですが、実際、狭い宇宙船では「使わないで済むならそれが最善」という発想になるのは自然だと思います。

ただ、このやり方は当然ながら限界があります。
人間は機械ではないので、いつかはどうしても処理が必要になる。そこでようやく、「宇宙トイレをちゃんと設計しよう」という話になります。

宇宙トイレは、3つの問題を別々に解く必要がある

この記事の分かりやすいところは、宇宙トイレの難しさを3つの機能に分解して説明している点です。

1. 体を正しい位置に保つ

地球なら重力が「そこに座っていればいい」と支えてくれますが、無重力ではそうはいきません。
NASAは昔、太ももを固定するストラップや、吸盤付きの靴など、いろいろ試したそうです。
でも最終的には、​手すり、足置き、太もも固定バーなどを用意し、宇宙飛行士が自分に合う姿勢を見つける方式に落ち着いたとのこと。

ここは実に人間らしいです。
「正しい一つの姿勢」を押しつけるより、​個人差を前提にした方がうまくいく。宇宙でも、結局はインクルーシブ設計が勝つんだなと思います。

2. 排泄物を体から引き離す

宇宙では重力の代わりに、​air suction(空気の吸引)​を使います。
つまり、トイレは「吸う」ことで仕事をするわけです。

当然、吸引を強くするには開口部をあまり広くできません。
そのため便座はかなり狭く、正確な位置合わせが必要になります。
ここが面白いというか、ちょっと笑ってしまうのですが、宇宙トイレは使う側の命中精度がかなり重要なんですね。

3. 臭いと廃棄物を閉じ込める

尿は専用の funnel に集め、抗菌剤と混ぜてからタンクへ送ります。
便は、​single-use porous bags​(通気性はあるが固形物は通さない使い捨て袋)に回収します。
使い終わった袋は、手袋や拭き取り用の紙と一緒に cylinder に入れて保管します。

ただし、ここで完全に安心とはいきません。
袋は滅菌されていないので、臭い対策はかなり難しい。
記事では、ISSで食欲が落ちがちなのは、常に漂う下水っぽい臭いも一因ではないかと紹介されています。
これはかなり納得感があります。狭い空間で臭いが消えないのは、地味に精神を削るはずです。

Apollo時代は“宇宙飛行士なら我慢できる”で乗り切っていた

記事で印象的なのは、Apolloの衛生環境がかなりひどかったことです。
当時の宇宙船では、今みたいな快適なトイレなど当然なく、かなり原始的な方法に頼っていました。

著者は、Moonへ行く小さなカプセルを「3人用のポータブルトイレ」にたとえています。
しかも、排泄作業に1時間近くかかることもあったそうです。
これは普通に考えてかなり過酷です。
宇宙飛行士たちが“タフ”という言葉では足りない人たちだったのは間違いないでしょう。

ただ、ここで重要なのは、彼らが文句を言わなかったことではなく、​文句を言わざるを得ないほどの問題を、技術がまだ吸収できていなかったことだと思います。
勇気や根性ではシステムの欠陥は消せない。だからこそ、次の世代の宇宙船で改良が積み重ねられたわけです。

Skylabでようやく「使えるトイレ」に近づく

本格的な進化が始まったのが Skylab です。
1973年に打ち上げられたこの宇宙実験室では、長期滞在が前提だったので、ちゃんとした toilet が必要でした。

面白いのは、Skylabのトイレが壁に縦向きで取り付けられていたことです。
つまり、宇宙飛行士はまるで Spider-Man のような姿勢で用を足すことになる。
これだけ聞くとギャグみたいですが、無重力では合理的な解だったのでしょう。

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ただ、実際に作るにはテストが必要です。
しかし、空中での無重力体験飛行で「実演できる人」を探すのがそもそも難しい。
しかも、排泄は機械ではうまく再現しづらいので、​本当にその場でできる人が必要だったそうです。
ここは、宇宙開発の中でもかなり異色の採用条件だと思います。かなり笑えるのに、仕事としては超真剣です。

結果として Skylab のトイレは宇宙飛行士に好評で、後の Space Shuttle の設計にもつながりました。

Space Shuttle時代、トイレは便利になったがトラブルも派手

Space Shuttle では、宇宙トイレがさらに洗練されます。
ただし、完璧ではありませんでした。

たとえば、尿を外へ捨てるための装置が壊れて、​尿が凍って機体の外側に“黄色い氷”として付着した事件がありました。
記事ではこれを「urinecicle」と呼んでいて、語感は最悪なのに妙に記憶に残ります。

これが危険なのは、再突入時に剥がれて機体を傷つける可能性があるからです。
NASAは最終的にロボットアームで取り除いたそうですが、その後その尿処理装置は使えなくなり、乗組員は靴下を詰めた袋に排尿することになったとのこと。
宇宙開発は最先端なのに、急に生活感が強すぎる。そこが面白い。

また、シャトルでは便の処理能力が足りず、ある飛行では装置が逆流して凍結乾燥された糞の粒子が機内に広がったこともあったそうです。
こういう話を読むと、宇宙トイレは「便利な設備」ではなく、​失敗すると一気に地獄になるシステムなんだと実感します。

ISSでは水の再利用が進む一方、便の処理はまだ古い

International Space Station(ISS)では、補給物資を地球から運ぶコストが非常に高いので、水の再利用が重要です。
そのため尿処理装置が発達し、さらに湿気から水分を回収する仕組みも整えられました。
記事によると、アメリカ側のISSでは、これらを合わせて水のおよそ98%を回収しているそうです。これはかなりすごい数字です。

でも、便の処理はまだかなり古典的です。
宇宙飛行士は袋に排泄し、封をして、紙や手袋などと一緒に cylinder に入れ、最終的には Dragon や Soyuz で地球へは持ち帰らず廃棄します。
つまり、​液体は再生利用が進んだが、固形物はまだ“袋で運ぶ”段階ということです。

このギャップが、いかにも工学っぽいと思います。
人間は「できるところから最適化する」しかない。全部を一気に解くのは無理なので、まずは水を回収し、次に臭いを減らし、最後に便の処理をどうにかする。地味ですが、こういう積み上げこそが技術だと思います。

NASAは「信じるが、検証する」

記事の終盤で印象的なのは、NASAが宇宙飛行士の報告をかなり丹念に調べていることです。
使い終わった回収容器を地球へ戻して分解し、手袋やウェットティッシュまで調査する。
かなり徹底しています。

NASAの姿勢は著者いわく trust but verify、つまり「信じるが、確認する」。
これは宇宙開発では当たり前ですが、トイレの話でここまで真面目にやるのが面白いんですよね。
しかも、尿の回数や便の頻度、拭き取りに必要な紙の量までデータ化している。
人間の生理現象を、ここまで工学の対象として扱うのは、冷静に考えるとかなりすごいことです。

個人的には、宇宙開発ってこういう“恥ずかしいけど避けられない部分”をデータに変えていく営みなんだと思います。
ロマンではなく、現実の身体を前提にした設計。そこにこそ本当の強さがある気がします。

そして Mars では、もっと大変になる

記事は最後に Mars 探査の話へつながります。
火星への有人ミッションでは、宇宙トイレの信頼性がさらに重要になります。
なぜなら、壊れたトイレが単なる不快さでは済まず、​任務そのものを危険にさらすからです。

火星へ行く旅は長いですし、地球にすぐ戻れません。
修理も簡単ではない。予備品も無限には持ち込めない。
だから、宇宙トイレは「使えればいい」ではなく、​絶対に壊れにくいことが必要になります。

ここは本当に重要なポイントだと思います。
有人火星探査の難しさは、派手なロケット技術だけではありません。
むしろ、こういう日常のインフラ――水、空気、食事、そしてトイレ――が、どこまで信頼できるかにかかっている。
宇宙の未来を考えるとき、トイレの進化はかなり本質的な話です。

まとめ:宇宙開発は、結局「人間をどう支えるか」の話

この記事は、宇宙トイレという一見ふざけたテーマを通して、
宇宙開発が“人間の暮らし”をどう成立させるかの技術だと教えてくれます。

ロケットを飛ばすのは派手です。
でも、その後に人が何日も何か月も生きるには、トイレが必要になる。
そしてトイレは、地球では重力が勝手にやってくれていた仕事を、全部人工的に代替しないといけない。

これ、地味だけど本当に大問題です。
私はこの記事を読んで、「宇宙に行く」というのは、単に遠くへ飛ぶことではなく、​人間の身体を新しい環境に合わせて再設計することなんだと改めて感じました。
そして、その再設計の最前線にトイレがあるのは、なんとも人間らしくて好きです。


参考: Let's talk space toilets!

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