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AnthropicのAIがMicrosoftの穴を掘り当てすぎている

AnthropicのAI「Mythos」が、Microsoftの脆弱性をものすごい勢いで見つけている、という話です。しかも見つける速度が、Microsoftの修正速度を上回っている。セキュリティの世界ではかなりぞっとする状況です。

「AIがバグを見つけると便利だよね」で終わる話ではありません。むしろ本当に怖いのは、その発見スピードが速すぎて、守る側の人間が追いつかないことだと思います。この記事は、その現実をかなり生々しく伝えています。

まず押さえたいポイント

この記事の面白いところは、AIが“攻撃者側の武器”になる前に“防御側の武器”として試されているのに、もう防御側が息切れし始めている点です。いわば、盾を作るための機械が、盾を作る工場のキャパを先に食い尽くしている感じです。

Microsoft社内で起きていたこと

Ars Technicaが紹介している元記事によると、Microsoftのエンジニアたちは5月中旬、Project Glasswingという取り組みについてオンラインと本社で会議を開いていました。ここで話題になっていたのが、Anthropicの新しいAIモデル「Mythos」です。

Mythosは、ソフトウェアの脆弱性を見つけるために一部の組織へ提供されていました。目的はわりとはっきりしていて、ハッカーや敵対的な国家が同じようなAIを使って悪用する前に、先に穴を見つけて塞いでしまおう、というものです。理屈としてはきれいです。かなり賢い発想だと思います。

でも現実はそう甘くなかったようです。

Microsoft側で使われていた Claude Mythos Preview は、同社がパッチを当てる速度よりも速くバグを見つけていたとされます。会議では「hype通りか?」という質問に対して、担当者が率直に「Yes」と認めたそうです。しかも、かなり切迫したニュアンスで。

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資料では、4月だけでSharePointに対し 90件の critical、141件の important の脆弱性を見つけたとされていました。しかも5月前半にはさらに増えていた。SharePointは企業や政府で広く使われるコラボレーションソフトなので、ここに穴があると被害の広がり方も大きいです。

正直、この数字はインパクトがあります。人間の感覚だと「そんなに見つかるの?」となりますが、AIは一度に膨大な探索を回せる。セキュリティの仕事が、もはや“職人芸”だけでは回らない領域に入っていることを感じさせます。

直す順番が、むしろ弱点になる

Microsoftは見つかった脆弱性をすべて一気に直すわけではありません。通常の企業と同じく、深刻度で優先順位をつけます。

ここで出てくるのが critical、important、moderate、low という分類です。ざっくり言えば、critical は「すぐ大事故につながる」レベル、important は「被害がかなり大きい」、moderate は中くらい、low は軽め、という感じです。

これ自体は合理的です。救急外来でも、まず重症患者から診るのが当たり前ですから。

ただ、この記事の肝はそこにあります。AnthropicのAIは、複数の低〜中程度の欠陥を“つなげる”ことができる、と指摘されているのです。単体ではそれほど危険でない穴でも、4つつながると結果的に高深刻度の攻撃になることがある。これはかなり嫌な話です。

Vinh Nguyen氏は、「4つの low-level flaws をつなげれば high severity に相当することがある」と述べています。私もここは重要だと思いました。従来の優先順位づけは、「単独の危険度」を見る設計です。でもAIが穴を組み合わせてくるなら、単体では見逃されがちな部分が、あとで大きな突破口になる。これは防御側の発想を変えざるを得ません。

600件超の修正が“異常”ではなくなりつつある

Microsoftは毎月「Patch Tuesday」と呼ばれる定例の修正日を設けています。そこでまとめて脆弱性修正を配るわけですが、2026年6月には200件超、7月14日には600件超の修正を出したとされています。これが過去最高級のペースだというのも、なかなかの異常事態です。

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しかも、その大半が important や critical。low や moderate はごく少数だったといいます。つまり、修正対象の多さそのものが問題になっている。

この状況を見て、Zero Day InitiativeのDustin Childs氏は「bug apocalypse」と表現したそうです。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、言いたくなる気持ちはわかります。穴が次から次へと見つかるなら、通常運転の修正体制では確かに追いつきません。

Microsoftは「バグの総量はしばらく減らない」と認めつつ、人的リソースとAIベースのトリアージを強化していると説明しています。ここでいうトリアージは、どれを先に直すかの仕分け作業です。医療のトリアージと同じ考え方ですね。

ただ、私にはこれが“善戦している”というより、“火災現場で消火ホースを増やしている最中”に見えます。ホースは増えるけれど、火元も増えている。追いつかない感じが、どうにも重いです。

なぜMicrosoftは特に厳しいのか

この記事では、Microsoftが特に狙われやすい理由にも触れています。まず、製品の利用者が世界中に多い。Microsoft 365、Teams、Copilot、SharePointのような製品は、企業や政府に深く入り込んでいます。狙う側からすると、1つ穴を見つければ得られるリターンが大きい。

さらに、古いコード、いわゆる legacy code を多く抱えているのも厳しい点です。昔の技術で書かれた部分は、今の基準では見直されていない脆弱性が残っていることがある。これが“technical debt”、つまり技術的負債です。家で言えば、リフォームせずに住み続けた結果、壁の裏に古い配線やガタがたまっているようなものだと思うとわかりやすいです。

AIが穴を見つける速度が上がるほど、この古い部分はますます危険になります。しかも、こうした問題はMicrosoftだけの話ではありません。オープンソースを含むソフトウェア業界全体が、同じような圧力を受けるはずです。

いちばん怖いのは、「見つかったけど直しきれない」状態

この記事を読んでいて一番引っかかるのは、脆弱性が見つかること自体ではなく、見つかりすぎて修正が追いつかないことです。

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昔なら、脆弱性が見つかるのは限られた数でした。だから人手で順番に潰すやり方でも、なんとか回った。でもAIが一気に大量発掘してくると、修正の“渋滞”が起きます。しかも、低い深刻度として後回しにした穴が、後で組み合わされて致命傷になるかもしれない。

ここは本当に厄介です。安全のための優先順位が、AI時代には裏目に出る可能性がある。守る側の常識が、そのままでは通用しなくなる瞬間を見ている感じがあります。

AnthropicのAIは、攻撃者に先んじて防御を助けるために使われたはずでした。それなのに、結果として「守る側がどこまで直せるか」を試す圧力装置になっている。皮肉ですが、かなり現実的な皮肉です。

この記事が示していること

この話は、単なる「Microsoftが大変らしい」で終わりません。AIが脆弱性発見を劇的に加速させるなら、セキュリティ業界は発見後の処理能力まで含めて設計し直さないといけない、ということです。

今後は、脆弱性を見つけるAIよりも、それをどう分類し、どう直し、どう再検証するかのほうがボトルネックになるのではないかと思います。つまり、次の競争は“見つける力”だけではなく、“直し切る力”です。

Microsoftのような巨大企業がこの状態なら、他の企業はもっと厳しいかもしれません。AIはセキュリティを強くする道具である一方、運用の限界もあっさり露出させる。今回の記事は、その両面をかなり鮮やかに見せています。


参考: Anthropic is finding bugs faster than Microsoft can fix them

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