自分で書いた差分ほど、雑に見てしまう。そこが一番まずい。
「差分レビュー」や「レビュー依頼」を自分宛てに投げる感覚で Claude Code を使うと、勢いで書いた変更を一度外に出せる。すると、読みにくい命名、説明不足のコメント、余計なファイル変更が、かなり早い段階で見つかる。
人間の目は、実装した瞬間の文脈に引っ張られる。だから「動くしまあいいか」で流しやすい。Claude Code に赤入れさせる価値は、そこを機械的に叩ける点にある。コードの正しさだけでなく、差分の見た目、変更範囲の広さ、説明の足りなさまで見させると、後で恥をかく率が下がる。
やり方は単純だ。作業が一段落したら、未コミットの差分をまとめて見せて、レビュー観点を先に渡す。Claude Code はターミナルから使うエージェントなので、ローカルのファイルを見ながら指摘を返せる。ここで大事なのは、「直して」と丸投げする前に、まず「レビューして」と頼むことだ。いきなり修正させると、確認したい論点まで勝手に書き換えられることがある。
たとえば、こんな依頼文で十分だ。
以下の差分をレビューしてほしい。
目的はコード修正ではなく赤入れだ。
見てほしい観点:
- 変更の意図が diff から読み取れるか
- 命名が曖昧ではないか
- 不要な変更や紛れ込みがないか
- コメントや README の説明が足りているか
- もしこの変更を他人に渡すなら、どこで止まるか
指摘は重要度の高い順に並べてほしい。
修正案があるなら、どのファイルのどの部分をどう直すかも書いてほしい。
もう少し厳しめにしたいなら、レビュー対象を絞るといい。差分全体を見せて「何かある?」と聞くと、だいたい浅くなる。レビューの質は、問いの切り方で決まる。たとえばこんな言い方が効く。
この変更は、実質的にUIの文言修正とロジック整理だけのつもりだ。
それ以外の挙動変更が紛れ込んでいないか確認してほしい。
特に、
- 副作用の増減
- 既存のテストが壊れそうな点
- ついでにやったリファクタが大きすぎないか
を厳しく見てほしい。
ファイル整理や文書作成に使う場合も考え方は同じだ。たとえば、不要ファイルを削除したあと、Claude Code に差分を見せて「消しすぎていないか」「同名の別ファイルを巻き込んでいないか」を見る。文章なら、章の並べ替えや不要な重複を整理した差分を出して、「意味が変わっていないか」「説明が抜けていないか」を赤入れさせる。非エンジニアでも使い道はかなり広い。
筆者は以前、リファクタ後の差分をそのまま見せて「整っているか」を確認したつもりになり、地味に不要なファイル変更を混ぜたままコミットしかけたことがある。自分の目では「関連する変更」にしか見えない。だがレビューさせると、変更に紛れた設定ファイルの書き換えや、説明のない文言変更が普通に突かれる。あれは助かる。人間の惰性を容赦なく外してくる。
ただし、気をつける点もある。差分レビューをさせるときに、最初から「問題を探して直して」とだけ渡すと、Claude Code が広めに手を入れたがることがある。赤入れのつもりが、勝手に整形や文言変更まで広がると、どこが本当に直したい差分だったのか見えなくなる。まずは指摘だけ出させる。修正はそのあとだ。
もう一つ、差分が大きすぎるとレビューは鈍る。これは人間のレビュワーと同じで、巨大な変更は論点がぼやける。機能追加、命名整理、不要ファイル削除を一緒にやると、Claude Code も「何を見ればいいのか」を見失いやすい。大きな作業は、先にコミットを分けるか、レビュー対象を「このフォルダだけ」「この仕様変更だけ」に切るのが正解だ。
実務では、こんな流れにしておくと扱いやすい。
git diff --stat
git diff
差分の大きさを見て、重いと感じたら先に切り分ける。そのうえで Claude Code にレビューを投げる。必要なら、変更理由を一緒に渡す。
この差分は、重複コードを減らすための整理だ。
ただし見た目の整理ではなく、振る舞いが変わっていないかを最優先で見てほしい。
もし説明不足の箇所があれば、README かコメントのどこに補足を足すべきかも教えてほしい。
この使い方のいいところは、単に「バグ探し」では終わらないところだ。差分の赤入れを何度か挟むと、自分の書き方の癖が見えてくる。変更を広げすぎる、説明を省く、命名が雑になる。そういう癖は、実装中にはなかなか見えない。レビュー用の会話にすると、そこが露骨に出る。
最後に一つだけ。Claude Code に差分を見せる前に、余計な生成物はなるべく片付けておくといい。ビルド成果物や一時ファイルが混ざっていると、赤入れの焦点がぼやける。レビューの前に「今の差分は人間が読める形か」を整える。ここをサボると、AI に見せるために人間が読む、という本末転倒になる。そこまで行くとだるい。
自分の差分を Claude Code に赤入れさせるコツは、賢い問いを一発で当てることではない。
まずレビューさせる。観点を絞る。大きすぎる差分は分ける。これだけで、変更の質はかなり上がる。