最初に思ったのは、「プリンタの世界、まだこんなに面倒なのか」ということだった。しかも相手が“古い業務機”ではなく、2023年に出たHP Laser 1008aだというのが妙に効いている。WindowsとLinuxでは使えるのにmacOSだけ置き去り、しかもAirPrintもない。こういう中途半端な孤立は、実際に困る人が少ないぶん、公式対応がつきにくいんだろうなと思う。
それでも、Claude Codeを使ってmacOS向けのdriverを作ってしまった、というのは素直に面白い。AIがすごいというより、人間が「どうせ既存のdriverがないなら、作ってしまおう」と踏み込めるようになったことが大きい気がする。特に、SPL3みたいなかなり癖のある独自print languageを扱っている点は、ただの小技ではない。エラー画面を読ませたり、Linux containerの中でHPのrastertospl codecを動かして本物のSPL3を出したりと、かなり泥臭い手順をAIと一緒に詰めている。ここは「AIが勝手に解決した」という話ではなく、むしろ人間がかなり細かく面倒を見たから成立したのだろう。
あと、記事で地味に引っかかったのは、開発者本人がこの過程でmacOS driverの仕組みを学んだ、という部分だ。AIを使うと手を動かす前に完成物だけ手に入る、というイメージもあるけれど、実際にはこういう局所的で厄介な問題ほど、作りながら仕組みを覚えるほうが早いのかもしれない。少なくとも今回は、AIが学習のショートカットにもなっている。便利だけれど、同時に「知らないことを知らないまま通す」危うさも少しあると思う。だからこそ、最後にMIT licensedのinstallerとしてきちんと公開しているのは安心感がある。