Claude Code に雑に「これ直して」と投げて、そのまま広い場所を触らせる。これがいちばん危ない。
事故の多くは、モデルの頭の良し悪しではなく、触らせる範囲が広すぎることから起きる。だから先にやるべきは、作業場所を固定することだ。別名で言えば、触らせる範囲を狭める、だ。
筆者はこれを甘く見て、ホームディレクトリや巨大なプロジェクトの根っこで作業を始めて、余計なファイルまで読ませてしまったことがある。結果、コンテキストが無駄に膨らみ、返ってくる修正案もぼやけた。小さな修正のはずが、確認のための往復だけで疲れる。Claude Code は優秀だが、何でも見せれば賢くなるわけではない。むしろ逆だ。
作業フォルダを先に決める、とは要するに「今回の仕事はここだけ」と最初に囲うことだ。これだけで、誤爆、読みすぎ、書きすぎが一気に減る。ファイル整理でも文書作成でも同じで、対象を絞ったほうが、指示も結果もシャープになる。
たとえば、案件ごとの書面を作るなら、案件フォルダを先に切って、その中だけを相手にする。重複ファイルや不要キャッシュを掃除するなら、対象のディレクトリを決めてから走らせる。コード修正でも、リポジトリ全体ではなく、まずはこの機能のフォルダだけ、という決め方のほうがずっと安全だ。
実際のやり方は単純でいい。まず、作業用の空フォルダか、今回の対象だけをまとめたフォルダを作る。そこへ、必要なファイルだけを置く。Claude Code はそのフォルダをカレントディレクトリにして起動する。これで、見なくていいものを見せずに済む。
mkdir -p ~/work/案件A
cd ~/work/案件A
claude
既存のファイルを扱うなら、全部をそのまま投げ込むより、必要なものだけコピーしておくほうが事故が少ない。
mkdir -p ~/work/請求書整理
cp ~/Documents/請求書/2024/*.pdf ~/work/請求書整理/
cd ~/work/請求書整理
claude
Claude Code への依頼も、最初から範囲を明示したほうがいい。たとえばこうだ。
このフォルダ内の請求書PDFだけを見て、重複しているものを候補として挙げてください。
削除はまだしないで、一覧だけ出してください。
開発作業でも同じである。
このフォルダの中だけを対象にして、設定ファイルの重複と不要な記述を探してください。
他のフォルダは触らないでください。
ここで大事なのは、「どこまで触ってよいか」を言葉で終わらせず、実際の作業場所でも縛ることだ。プロジェクトのルートに置いたまま何でも頼むと、Claude Code は関連ファイルを広く見にいく。そうなると、必要以上に文脈を食うし、確認ポイントも増える。小さな整理のつもりが、大きな相談になる。だるい。
筆者が一度やらかしたのは、文書整理の案件で、巨大な親フォルダを丸ごと作業場所にしてしまったことだ。見せたくない古い資料や別案件の下書きまで視界に入り、必要のない比較や参照が混ざった。人間の仕事でも、机の上に関係ない書類が積まれていると集中できない。Claude Code も同じで、雑多な場所では雑になる。
だから、次のどちらかに寄せると安定する。
ひとつは、作業専用フォルダを作るやり方だ。対象ファイルをそこへ集めて、そこで完結させる。削除や置換を伴う作業に向いている。
もうひとつは、既存リポジトリの中でも、対象ディレクトリをはっきり決めるやり方だ。機能単位、案件単位、資料単位で区切る。広い場所にいるなら、最初に「この配下だけ」と明言する。
たとえば文書作成なら、案件フォルダの中に source と draft を分けるだけでもいい。Claude Code に下書きを作らせるなら、元資料は source、書き換え対象は draft に置く。こうしておくと、どこを触るべきかが明快になる。
mkdir -p ~/work/案件A/source ~/work/案件A/draft
cp ~/Documents/案件A/元資料.md ~/work/案件A/source/
cp ~/Documents/案件A/下書き.md ~/work/案件A/draft/
cd ~/work/案件A/draft
claude
依頼文も、場所と役割をセットで伝えるとぶれにくい。
source にある元資料を参照して、draft の文章を整えてください。
draft だけを書き換えて、source は変更しないでください。
この「作業場所を固定する」発想は、実は削除や整理だけでなく、確認にも効く。レビューしてほしいときに、余計なファイルが見えていると、話題が横に広がる。逆に、対象フォルダだけに絞っておけば、Claude Code も人間も迷いにくい。返答が速くなるというより、返答の質が安定する、という感覚に近い。
気をつけたいのは、狭くしすぎて必要な参照元まで閉め出すことだ。元ファイルが別フォルダにあるのに、それを見せずに「勝手に推測して」とやると、当然ずれる。ここでのコツは、対象は狭く、参照元は必要最低限だけ別途渡すことだ。広く放置するのではなく、必要なものだけ持ち込む。これが一番事故が少ない。
もうひとつ、作業後に対象フォルダを放置しないことも大事だ。作業専用フォルダは、次の案件に流用すると汚れる。古いファイルが残ったまま次の依頼をすると、また余計なものを見せる羽目になる。終わったら片づける。地味だが効く。
Claude Code を使うとき、つい「何を頼むか」ばかり考えがちだが、先に決めるべきは「どこでやるか」だ。ここを押さえるだけで、修正の誤爆も、相談の脱線も、かなり減る。作業フォルダを先に決める。たったそれだけで、Claude Code はずっと扱いやすくなる。