複数の案件を同じ作業場で走らせると、だいたいどこかで噛み合わなくなる。これはClaude Codeでも同じで、雑に並べると、同時編集の回避が甘くなって、ファイルの衝突防止に失敗する。結果として、同じファイルを別案件が触っていたり、片方の作業がもう片方の差分を上書きしたりする。地味だが、いちばん手戻りが高い事故だ。
ここでやるべきことは単純で、案件ごとに作業の境界を先に決めることだ。Claude Codeに丸投げしてから考えるのでは遅い。最初に「どの案件が、どのファイル群を触るか」「共通で触る場所はどこか」「触ってはいけない場所はどこか」を切っておく。これだけで競合を減らす、という話になる。
筆者は以前、資料整形の案件と原稿修正の案件を、同じフォルダ配下でうっかり並べたことがある。どちらも似た名前のMarkdownを触るので、Claude Codeに「この資料を整えて」と頼んでいるうちに、別案件の下書きまで読みに行かれた。結果、差分の見通しが悪くなり、直すつもりのない文書まで手が入った。あれは完全に置き場の設計ミスだ。
まず効くのは、案件ごとに作業ディレクトリを分けるやり方だ。Claude Codeは、見えているファイルを前提に動く。だから、関係ない案件のファイルが同じ場所にあるだけで、注意力を食う。フォルダを分ければ、それだけで事故はかなり減る。
たとえば、案件Aと案件Bを分けるなら、こんな形にする。
work/
project-a/
project-b/
Claude Codeには、毎回その案件のルートで立ち上がって、その範囲だけを触るように指示する。依頼文も、曖昧にしないほうがいい。
この作業は project-a の中だけで行ってください。
project-b には触らないでください。
既存ファイルの内容を確認して、変更が必要なファイルだけ編集してください。
この一文を入れるだけで、かなり違う。大事なのは「何をするか」より「どこを触らないか」だ。コンフリクトは、だいたい境界の曖昧さから生える。
複数案件を同時に進めるなら、共通ファイルの扱いを決めておくのも重要だ。たとえば設定ファイル、テンプレート、README、共通のメモ置き場みたいな場所は、案件Aも案件Bもつい触りたくなる。ここを無防備にすると、差分が汚れる。
実務では、共通ファイルを「編集禁止」「最後にだけ更新」「人間がマージする」のどれかに寄せるのがいい。Claude Codeに任せるにしても、共通ファイルの編集は後回しにするのが無難だ。
共通の設定ファイルは今回は変更しないでください。
案件ごとの差分だけを先に作ってください。
共通部分を変える必要がある場合は、変更案をコメントで出してください。
これをやらないと、片方の案件の都合でテンプレートをいじって、もう片方に余計な差分が入る。見た目は小さい変更でも、あとで追うとだるい。差分が増えると、何が本筋か分からなくなるからだ。
Claude Codeで複数案件を並べるときは、作業中の見通しもそろえておくといい。案件ごとに「何を終えたか」を短く残す。長文メモはいらない。むしろ邪魔になる。各案件のルートに、簡単な進捗メモを置いておくと、次に開いたときの誤爆が減る。
- ここまで完了: 画像の整理
- 次にやる: ファイル名の統一
- 触らない: 旧版PDF
これがあると、Claude Codeに「前回の続き」を頼んだときも迷いにくい。人間の記憶より、短いメモのほうが信用できる場面は多い。
注意したいのは、同時に複数のClaude Codeセッションを走らせるときだ。セッションごとに別案件を扱うのは問題ないが、同じファイルを両方が編集し始めると、結局衝突する。ここを雑にすると、最後に保存したほうが勝つだけになる。Gitを使っていても、手元の作業が汚れていれば安心はできない。
筆者も、同じ仕様書を二つのセッションで別々に整形させて、片方の修正文がもう片方で消えたことがある。原因は単純で、どちらにも「このファイルだけ見ればいい」と言っていなかったからだ。AI側の問題というより、こちらの境界設定の負けである。
だから、案件を並べるときは、最初に「共有してよいもの」と「完全に分けるもの」を決める。これだけでかなり静かになる。整理の仕事でも、文書作成でも、ディスク削減でも同じだ。たとえば重複ファイルの洗い出しをしながら、別案件で原稿を直すなら、出力先を分ける。削除候補をまとめる案件と、本文を整える案件を同じ場所で走らせるのは危ない。
少し進めるなら、案件ごとに一時置き場を作るのも手だ。出力先が混ざると、後でどれがどの案件の成果物か分からなくなる。たとえばこんな分け方だ。
work/
client-a/
input/
output/
notes.md
client-b/
input/
output/
notes.md
Claude Codeには、毎回その案件の input と output だけを使わせる。こうしておけば、ファイルの衝突防止だけでなく、作業の流れも見える化できる。案件をまたいだ横取りが起きにくい。
要するに、複数案件を並べるなら、賢さより先に配置を整えるべきだ。Claude Codeは強いが、境界が曖昧な現場を勝手に救ってはくれない。最初に線を引く。触る場所を狭くする。共通部分は後回しにする。この三つだけで、無駄なコンフリクトはかなり消える。