その場しのぎで同じ場所に全部押し込むと、あとで確実に詰まる。Claude Code でも同じだ。案件単位で分ける、要するにフォルダ設計を先に決めて、整理用の作業場所を案件ごとに切るだけで、あとから「この差分どれだっけ」「この原稿どこに置いた」と迷わなくなる。
地味に見えるが、効き目は大きい。Claude Code に頼む作業は、コード修正だけではない。議事録の下書き、請求書まわりの整理、既存フォルダの棚卸し、重複ファイルの洗い出しまで入ってくる。ここで作業場所が混ざると、出力も入力も散らかる。人間が戻ってきたときに、どれが正本でどれが一時ファイルか分からない。これがいちばんだるい。
発想は単純でいい。ひとつの大きな「作業箱」を使うのをやめて、案件ごとに独立したフォルダを切る。Claude Code に見せる作業ディレクトリも、基本はその案件の中に閉じる。
たとえば、こんな感じだ。
work/
client-a/
01_inbox/
02_draft/
03_output/
99_archive/
client-b/
01_inbox/
02_draft/
03_output/
99_archive/
名前は自由でいいが、役割が見えていることが大事だ。inbox に入れるのは未整理の素材、draft は Claude Code に触らせる作業場、output は人に渡す成果物、archive は終わったものを寝かせる場所。こうしておくと、後から見て迷いにくい。
Claude Code を使うときは、基本的にその案件フォルダを開いて始める。
cd ~/work/client-a
claude
こうしておくと、指示も差分もその案件に閉じる。別案件のファイルをうっかり巻き込む事故が減る。筆者は昔、雑にひとつの親フォルダだけ開いて作業して、別案件の資料まで検索対象に入れてしまい、出力が妙にノイズまみれになったことがある。あれは痛い。人間が見ればすぐ分かるが、AIには「この山の中のどれを正本とするか」をちゃんと渡した方がいい。
ファイル整理や文書作成で使うなら、指示は「このフォルダの中だけで処理して」と明示するのが効く。曖昧に「この資料を整理して」と言うと、どこまで見てよいのか広がりやすい。作業場を区切る意味が薄れる。
たとえば文書整理なら、こんな頼み方が使いやすい。
このフォルダ内のファイルだけを対象にして、内容が近いものをまとめて整理してください。
新しく作るファイルは 02_draft に置き、確定版は 03_output に置いてください。
既存ファイルの上書きはしないでください。
案件ごとにフォルダを切っていれば、この指示がかなり強い。Claude Code はそのディレクトリを前提に動くので、別案件のファイルを混ぜ込まない運用にしやすい。
コード案件なら、もう少しはっきり書く。
このリポジトリの範囲だけで作業してください。
変更が必要なファイルを先に洗い出して、作業前に方針を短く説明してください。
別案件のファイルや上位フォルダは触らないでください。
ここで大事なのは、作業対象と置き場所を同じ案件フォルダに縛ることだ。中途半端に「どこでもいいから一時保存」みたいな運用をすると、あとで拾い直す羽目になる。
Claude Code は、変更内容を差分として見せる。だからこそ、どの案件の何が変わったかが、フォルダ単位で整理されていると強い。ごちゃ混ぜ環境では、差分の意味を人間が毎回読み解かなければならない。
案件ごとに分けておけば、たとえば「この案件では原稿だけ」「この案件では表計算だけ」といった形で作業の粒度が揃う。結果として、レビューもしやすいし、やり直しも楽になる。ファイル名に日付を付けるだけの管理より、ずっと崩れにくい。
それに、作業フォルダが案件単位で分かれていると、Claude Code に「いま見ているものは何か」を毎回説明しなくて済む。これは小さいようで大きい。説明コストが下がる分、こちらは中身の判断に集中できる。
ここはかなり重要だ。整理用の作業場所は、放っておくと本番フォルダのふりをし始める。最初は tmp や work のつもりだったのに、気づけばそこが正本だらけになっている。筆者もやった。ひどいときは、仮置きのファイル名に _final が増殖して、何が最終版なのか自分で分からなくなった。
だから、案件フォルダの中でも役割を切るのが先だ。
01_inbox は入れるだけ02_draft は作業中だけ03_output は渡すものだけ99_archive は終わったものだけこの並びは見た目の問題ではない。人間の判断を減らすための設計だ。迷ったら「どこに置くべきか」を見ればいい。置き場所が決まっていれば、処理の途中でファイルが迷子になる確率がかなり下がる。
この話はコードを書く人だけのものではない。むしろ、ファイル整理や文書作成に使う人ほど相性がいい。たとえば弁護士が案件ごとにディレクトリを掘って、準備書面、証拠、下書きを分ける。あるいは総務が申請書類を案件別にまとめる。そういう用途では、Claude Code に「この案件の資料だけを整えて」と渡せるだけで、後の管理がずいぶん楽になる。
大事なのは、案件ごとの境界を曖昧にしないことだ。ひとつのフォルダに複数案件を突っ込むと、あとで検索はできても、復元の手間が重くなる。検索で見つかることと、安心して再利用できることは別物だ。
案件ごとに分けるだけでも十分効くが、さらに楽にしたいなら、案件フォルダの中で名前の付け方を揃えるといい。たとえば、日付を入れるなら YYYY-MM-DD で始める。版を分けるなら v01, v02 のように並び順が崩れない形にする。ここを雑にすると、フォルダを分けた意味が少し薄れる。
Claude Code に頼むときも、命名のルールを先に渡すと話が早い。
ファイル名は次のルールでそろえてください。
- 日付は YYYY-MM-DD
- 版番号は v01, v02 のように2桁
- 最終版は final を乱用しない
final を何度も使うのはやめた方がいい。最後のはずのものが三つある、といういつもの事故が起きる。見た目は地味でも、これを避けるだけで後戻りが減る。
Claude Code をうまく使うコツは、賢い指示を考えることではない。作業場所を先に決めることだ。案件ごとにフォルダを分けて、整理用の作業場所を固定してしまえば、あとから探す手間がかなり減る。コンテキストも散らかりにくいし、差分も読みやすい。
実務では、派手な自動化より、こういう地味な設計のほうが効く。まず案件の境界を切る。次に、その中だけで Claude Code を動かす。これだけで、後から「どこへ行った」と探し回る時間が減る。