「たくさん渡せば賢くなる」は、Claude Code ではわりと危ない思い込みだ。長文をそのまま投げる、関係ないフォルダまで一緒に渡す、メモを全部貼る。やりがちだが、これで答えが良くなるとは限らない。むしろノイズが増えて、出力がぶれる。要点だけ渡す、長文を圧縮する、文脈を削る。こっちのほうが、狙いが通りやすい。
Claude Code は会話の空気を読む道具ではあるが、空気を吸わせすぎると息が詰まる。特に、ファイル整理や文書作成みたいな用途では、材料を盛るほど安心しがちだ。だが実際には、余計な背景が多いほど「何を優先するべきか」がぼやける。筆者も最初は、関連資料を全部貼って「これで完璧だろ」と思い、逆に修正の手戻りを増やした。要らない文脈が混ざると、エージェントはそれを無視しきれず、無駄に広い解釈を始める。
なので、まずやるべきは「情報を増やす」ことではなく、「仕事に関係する芯だけ残す」ことだ。Claude Code に渡す前に、次の3つに分けると扱いやすい。
この3つだけで、かなり通る。
たとえば、リポジトリ内の古い Markdown を整えたいなら、こんな頼み方でいい。
このリポジトリの docs/ 配下だけを対象にしてください。
目的は、見出しの表記ゆれを減らして読みやすくすることです。
内容は変えないでください。文意が変わる書き換えはしないでください。
まずは変更案を出して、勝手に大きく書き換えないでください。
ここで大事なのは、事情説明を長々と書かないことだ。背景を語りたくなる気持ちはわかる。だが「なぜそうなったか」を10行書いても、Claude Code がやるべき作業は変わらないことが多い。必要なのは背景ではなく制約だ。何を触っていいか、何を触るなか。それだけで十分な場面は多い。
ファイル整理でも同じだ。たとえば、散らかったダウンロードフォルダを片付けたいなら、ファイル名の来歴まで説明するより、判定ルールを渡したほうが速い。
Downloads フォルダの中で、次の条件に当てはまるものだけ候補にしてください。
- 重複っぽいファイル
- すでに別の場所に保存済みの PDF
- 明らかな一時ファイル
判断に迷うものは削除候補に入れず、保留にしてください。
これで十分だ。全部を説明するより、曖昧さを減らしたほうが精度は上がる。
長文を圧縮するときも、コツは「要約してから渡す」ではなく、「意思決定に必要な断片だけ抜く」ことだ。会議メモや契約書のたたき台、議事録をそのまま食わせると、Claude Code は大事な箇所よりも、余談や重複に引っ張られやすい。そういうときは、元の文を全部貼る代わりに、自分で先に削る。
たとえば、文書作成の補助に使うならこんな形だ。
次の素材から、依頼文に必要な事実だけを箇条書きにしてください。
- 日付
- 関係者
- 決まったこと
- 未決のこと
感想、補足説明、雑談は捨ててください。
そのあと、その事実だけを使って短い報告文の下書きを作ってください。
ここでの「削る」は、雑に切り捨てることではない。材料の密度を上げる作業だ。密度が上がると、Claude Code は「何が要点か」を見失いにくくなる。逆に、材料が多いのに論点が薄いと、もっともらしいが微妙にずれた出力になりやすい。
筆者が一度やらかしたのは、修正したい文書に「関連しそうな参考資料」を山ほど混ぜたときだ。自分では補強のつもりだったが、Claude Code から返ってきた案は、参考資料の表現まで拾ってしまい、元の文書のトーンから外れた。つまり、関連資料は参考になったが、指示としてはノイズだったわけだ。こういうときは、材料を増やすほど賢くなるわけではないと痛感する。
だから、迷ったら先に削る。手順は単純だ。
この順番で十分だ。最初から全部盛りにする必要はない。むしろ、最小構成で投げて、足りないぶんだけ後から足したほうが、結果が安定する。
このやり方は、コード修正でも文書整理でも効く。たとえばバグ修正を頼むときに、ログもソースも仕様メモも全部一気に渡すより、まずは再現条件と対象ファイルだけ渡す。Claude Code が絞り込みやすくなる。そこで足りなければ、その時点でログを渡せばいい。最初から全投入すると、どの情報が効いたのか分からなくなるし、出力も散らかる。
次の2ファイルだけを見てください。
目的は、CSV 出力の列順が崩れる原因の特定です。
仕様メモはまだ見なくていいです。
まず原因候補を3つに絞ってください。
こう書くと、エージェントはかなり仕事がしやすい。何より、「今は何を見なくていいか」を明示できるのが強い。Claude Code は、与えた情報に素直に反応する。だからこそ、与えすぎると素直に迷う。
注意したいのは、削る対象を間違えないことだ。削るべきなのは、意思決定に不要な文脈だ。削ってはいけないのは、制約、例外、対象範囲、完成条件である。この4つまで削ると、ただの丸投げになる。そこは違う。短くするのと、雑にするのは別物だ。
非エンジニアの用途でも、この差は大きい。たとえば、案件ごとに資料をまとめたい弁護士や、学習用にPDFを整理したい人なら、「全部見ておいて」は危ない。代わりに、対象フォルダと判定基準を渡す。重複、最新版、不要なキャッシュ、送付済みの書類、こうした分類軸を先に絞ると、Claude Code はかなり実用的になる。逆に、関連しそうな資料を大量に放り込むと、判断の芯がぼやける。
少し慣れてきたら、依頼文そのものをテンプレ化しておくといい。毎回長文を作る必要はない。むしろ、短い型を持っておくほうが強い。
目的:
対象:
やらないこと:
出力形式:
この4行を埋めるだけで、だいたい足りる。長い説明は、その後に本当に必要なぶんだけ足す。Claude Code には、材料を削って渡したほうが、仕事の筋が通る場面が多い。これは遠回りに見えて、いちばん早い頼み方だ。