最初に思ったのは、「これは新しい話というより、昔からある gateway の発想が、AI agent 向けにそのまま戻ってきただけではないか」ということだった。むしろその既視感が面白い。API gateway や service discovery、認可、監査、変換レイヤー。分散システムでさんざん揉まれてきた論点が、MCP という名前をまとって再登場している。
ただ、Uber の規模で 800 以上の MCP server と 5,000 以上の tool を抱えると聞くと、これは「便利な整理術」では済まないなとも思う。AI agent は、ふつうの人間向け UI 以上に、雑多な内部 API を無秩序に食べてしまう。だから registry と runtime execution を分ける設計はかなり腑に落ちた。登録は管理部門の仕事、実行は現場の仕事、という分離がはっきりしていないと、すぐに「誰がこの tool を出したのか」「いつ使っていいのか」が曖昧になるはずだ。
一方で、気になったのは「LLM が増えると gateway が必要になる」のは当然として、ではその gateway 自体の運用負荷はどこまで増えるのか、という点だ。AutoCrawler で自動 discovery して、LLM で tool description を生成して、owner のレビューで enable して、さらに response filtering や PII redaction まで見る。やることはかなり多い。便利そうではあるけれど、AI の導入で減るはずだった手作業が、別の形で gateway 層に集まっているようにも見える。そこをどう回すのかは、記事だけではまだ見えない。
それでも、Omni MCP の「必要な tool だけ少しずつ見せる」という発想は、かなり現実的だと思う。agent に全部の schema を最初から渡すのは、コンテキストの無駄遣いになりやすいし、誤用の温床にもなる。人間の開発者でも、巨大な社内 API 群を前にすると何から触ればいいかわからない。agent ならなおさらだ。だからこそ、探索と実行を段階的に分けるのは、単なる最適化ではなく安全策でもある。
要するに、この話で新しく見えるのは MCP そのものというより、「AI agent が社内システムに本格的につながると、結局は昔ながらの統制の話に戻る」という点だと思う。派手な AI の話に見えて、実際はかなり地味な地盤工事の話だった。その地味さがちゃんと前に出ているのが、むしろ信頼できる記事だった。
参考: Uber Builds MCP Gateway to Govern Access to 800+ Servers and 5,000+ AI Agent Tools