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GitLabがレイオフを“オープンに”進める理由:AI時代の再編で何が起きているのか

キーポイント

本文

GitLabがまた、テック業界でおなじみのあの重いニュースを持ってきました。
レイオフです。しかも今回は、ただ人数を減らすだけではなく、会社の構造そのものを組み替える「再編」とセットになっています。

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Business Insiderによると、GitLabは「agentic era」に向けた対応として、​6月1日までに人員削減を含む再編を進めると発表しました。対象人数は現時点では公表されていません。株価は発表後の時間外取引で7%下落したそうです。こういう反応を見ると、市場はだいたい「それ、つまりレイオフですよね」とすぐに空気を読んでしまいます。

そもそも「agentic era」って何?

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正直、この言い方はかなりAI業界っぽいです。
「agentic era」とは、ざっくり言えばAIエージェントが仕事の中心に入ってくる時代のことです。

ここでいうAIエージェントは、単に文章を作るAIではなく、

といった、開発の流れそのものに関わる存在です。

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GitLabのCEO、Bill Staples氏は、今後のソフトウェアは​「機械が作り、人間が指示する」​形に近づくと見ています。
個人的には、この見方はかなり本気度が高いと思います。単なるAIブームへの便乗ではなく、​会社の設計図をAI前提で描き直そうとしている感じがあるからです。

何が変わるのか

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CEOのメモで特に重要なのは、今回の再編が「人を減らす」だけではなく、​組織の形そのものを変える点です。

主な変更は4つあります。

  1. 小規模拠点の国を最大30%減らす方針
    小さなチームがある国の数を絞り、顧客対応はパートナーネットワークで続けるとのこと。
    これは、グローバル企業がよくやる「全部を自前で持たない」方向です。

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  1. 組織をフラットにする
    つまり、管理職の階層を減らして、現場と意思決定を近づける。
    最大で3層分の管理職レイヤーを削るとしています。
    こういう話は聞こえはいいのですが、現場からすると「上司が減る」というより中間管理職の役割がかなり厳しくなるという話でもあります。

  2. R&Dを約60の小さなチームに再編
    「end-to-end ownership」という言葉が出てきますが、これは要するに最初から最後までそのチームが責任を持つという意味です。
    仕事を細かく分断するのではなく、チーム単位で完結させる。
    この考え方自体はかなり筋がいいと思います。うまく回れば、意思決定が速くなり、責任の所在も明確になります。

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  1. 社内業務にAIエージェントを組み込む
    レビュー、承認、引き継ぎをAIで自動化し、必要な役割を見直す。
    ここが一番「いよいよ来たか」という部分です。
    AIを“使う”のではなく、​社内の仕事の流れの中に埋め込むわけですから、かなり踏み込んでいます。

GitLabの考え方は、かなりはっきりしている

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CEOのメモを読むと、GitLabは単にコスト削減したいわけではなく、
​「ソフトウェア開発の未来に合わせて会社を作り替える」​
というストーリーを強く打ち出しています。

特に印象的なのは、こんな主張です。

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この見立ては、かなり面白いです。
普通は「AIが進んだらエンジニアの仕事は減るのでは?」と思いがちですが、GitLabは逆に、​ソフトウェアが増えるからこそ、難しい問題を解ける人の価値は上がると見ています。

これはたしかに一理あります。
ソフトウェアを作るハードルが下がれば、世の中にはもっとアプリや機能が増えるはずです。すると、今まで手が回らなかった領域にも開発需要が広がる。
ただし、その恩恵がすべてのエンジニアに均等に降り注ぐかというと、そこはかなり怪しいとも思います。AIに置き換えられやすい仕事と、むしろ価値が上がる仕事の差は、今後もっと開くのではないでしょうか。

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それでも「不安が消える」わけではない

CEOは、今回のプロセスを「openly(オープンに)」進めると説明しました。
希望退職の受付期間も設けていて、できるだけ透明にやる姿勢を示しています。

でも、率直に言えば、​透明だから安心できるかというと別問題です。
メモの中でもCEO自身が、これから数週間はチームにとって​「real uncertainty(本当の不確実性)」​があると認めています。

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ここはかなり重要です。
レイオフの局面では、「説明してくれている」ことと「従業員が安心できる」ことは、全然イコールではありません。
むしろ、オープンに進めるほど、当事者は「自分は残るのか、外れるのか」をずっと考え続けることになり、精神的にはきつい。これはなかなか生々しいです。

会社としては“未来対応”、でも人にとってはかなり重い

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GitLabは今回の再編を、​旧来の組織構造から、AI時代に合った構造へ移るための変化として描いています。
理屈としてはわかります。むしろテック企業としては自然な方向かもしれません。

ただ、個人的にはここに少し冷たさも感じます。
「AIで効率化して、組織を小さく、速く、強くする」という話は、投資家や経営陣には魅力的でも、現場の社員にとっては生活とキャリアの問題です。
未来の戦略としては立派でも、その過程で切り捨てられる人がいるのは事実です。

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一方で、今回の動きはGitLabだけの話ではありません。
生成AIやAIエージェントを前提に、​組織の人数、階層、役割を再定義する企業は今後もっと増えるはずです。
つまりこれは、GitLabのニュースであると同時に、​これから多くの会社が向かうであろう方向の予告編でもあります。

まとめると

GitLabの発表は、単なるレイオフではなく、
​「AIエージェントが中心になる時代に、会社の形を作り直す」​
というかなり大きな賭けです。

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うまくいけば、より速く、より柔軟で、より強い開発組織になるでしょう。
でもその裏では、組織の再編にともなう不安や痛みが確実にあります。

私はこの手の発表を見るたびに、技術の進化は本当に面白い一方で、​その進化を会社の形に落とし込むときの冷たさも同時に見えてしまうな、と思います。
AI時代の「効率化」は、たしかに未来っぽい。
でも、その未来に誰が残り、誰が押し出されるのか――そこまで見ないと、本当の意味では語れないのではないでしょうか。

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参考: GitLab employees are the latest to face layoffs limbo. Read the CEO's memo about restructuring 'openly.'

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