NitterのGitHubリポジトリで、READMEが更新された。ぱっと見ると小さな文言修正に見えるが、実際にはプロジェクトの存続をめぐるメッセージが書き換わっている。X Corp. からの法的通知に触れつつ、「Nitter は続く」と明言した点がこの更新の核心だ。加えて、寄付導線や機能説明も整理され、単なる文書修正以上の意味を持つ内容になっている。
このコミットは、Nitter の README と資金提供まわりの設定を更新したものだ。対象は .github/FUNDING.yml と README.md の2ファイルで、合計25行が追加され、17行が削除された。FUNDING.yml には ko_fi: zedeus が1行追加され、README の寄付欄には GitHub Sponsors、Patreon、Liberapay、Ko-fi へのリンクが見やすいバッジ形式で並ぶようになった。
README の冒頭では、Nitter を「free and open source alternative Twitter front-end focused on privacy and performance」と説明している。要するに、X/Twitter の投稿を見るための代替フロントエンドで、広告や追跡を避け、軽量さを売りにしている。画像付きのバッジで Test Matrix と Docker の状態、ライセンスも示し、プロジェクトが継続的にビルドやテストを意識していることも伝えている。
一番目立つ変更は冒頭の注意書きだ。以前の README には、「2026年8月24日に X Corp. から cease and desist letters が送られ、Nitter のインスタンスとリポジトリの permanent takedown を求められた」と書かれていた。今回の更新では、その文章に続けて「Following legal advice, the Nitter project will continue. More details will be announced soon.」という一文が追加された。つまり、法的な圧力があったことは認めつつ、プロジェクト自体は続けると宣言している。
機能説明の箇所にも細かな修正がある。以前は「No JavaScript or ads」としていたのを、「No JavaScript required」「Zero ads」に言い換えた。RSS feeds には「instance-specific, often disabled due to abuse」という注意が付いた。ここから、RSS は便利だが、各インスタンスごとに提供状況が違い、悪用が多いため止められていることもあると分かる。ロードマップでは「Embeds」が取り消し線付きで扱われ、実装を目指す項目というより、別ページのガイドを参照する形に変わっている。
README の末尾では、法務連絡先も少しだけ変わった。以前は「For legal inquiries」だったのが、今回は「For legal inquiries and DMCA requests, contact legal@poast.org」となり、DMCA 申請もその窓口で受けると明記した。全体としてこの更新は、Nitter の説明文を整えただけではなく、法的な圧力を受けながらも存続を宣言し、資金集めと対外的な案内を整え直した動きだと読める。
この更新でいちばん気になったのは、「Nitter lives」という短い文言が、かなり実務的な意味を持っている点だ。プロジェクトの存続を宣言するだけなら、SNS で一言出せば済む。だが README の先頭に置くのは違う。README は GitHub の顔であり、検索にも拾われる。そこに残る文言は、利用者だけでなく、インスタンス運営者や外部の協力者にも向けた正式なメッセージになる。法的な通知を受けたあとでこれをやるのは、単に強気だからではなく、「まだ案内できる状態にある」と示したいからだと思う。
ただし、ここで書かれているのは勝利宣言ではない。「More details will be announced soon」とあるように、今は説明を出し切らず、少しだけ余白を残している。これは賢い。争点や今後の方針を先に断定すると、後で言葉尻を取られやすい。README に載せる文言を最小限に抑えたのは、利用者に安心感を与えながらも、法的な細部には踏み込まないためだろう。オープンソースの世界では、こういう“言い切りすぎない強さ”が長持ちすることがある。
今回の差分でもう一つ大きいのは、寄付まわりの整理だ。GitHub Sponsors、Patreon、Liberapay、Ko-fi に加え、BTC、ETH、XMR、SOL、$Nitter、ZEC まで列挙されている。見た目は少し雑多だが、これは小規模なOSSでよくある現実でもある。広告を置かず、サブスクリプション型の収益も持たないなら、支援導線を増やすしかない。しかも Nitter は、単なるライブラリではなく、動かしているインスタンスがある。運用コストがかかるタイプのプロジェクトなので、寄付ページの整備はかなり実務的だ。
私は、ここにこのプロジェクトの脆さも強さも出ていると思う。脆さは、法的圧力や外部依存にかなり左右されること。強さは、それでも複数の支援手段を並べ、README の中で目に入りやすくしたことだ。特に Ko-fi を FUNDING.yml に加えたのは小さく見えて、支援の入口を増やす意味がある。支援者は「いつもの方法」が使えないと離れることがあるからだ。派手な発表ではないが、こういう地味な導線整理のほうが、プロジェクト継続には効く。
機能説明の言い回しが変わった点も興味深い。以前の「No JavaScript or ads」から「No JavaScript required」「Zero ads」に変わったのは、実は意味が少し違う。前者は“JavaScriptがない”という状態の説明に近く、後者は“JavaScriptを要求しない”という設計思想を示す。Nitter は、重いクライアント側処理を避け、ブラウザから Twitter に直接触れない構造を売りにしてきた。その特徴を、より正確な英語に直したのだろう。細かいが、こういう書き換えはプロジェクトの自己理解を反映する。
RSS feeds に「instance-specific, often disabled due to abuse」と付け加えたのも、きれい事だけでは済まない事情を隠していない。RSS はオープンな閲覧手段として便利だが、スクレイピングや自動収集にも使われる。結果としてインスタンス側が止めることがある。Nitter のようなサービスは、利用者にとっては“便利な代替フロントエンド”でも、運営者にとっては負荷とリスクを抱える装置だ。この一文は、機能の魅力を少し下げてでも現実を伝える書き方で、私はむしろ好感が持てる。使えると書くだけでなく、使えないこともあると明記するほうが、利用者との摩擦は少ない。
この更新を見ていると、Nitter の課題は技術そのものより、どう続けるかに移っているように見える。もちろん、Twitter/X の仕様変更やアクセス制限に追いつく技術的負担はあるはずだ。ただ、README がここまで法務・支援・案内に寄っているのは、プロジェクトが“作る”段階だけでなく、“守る”段階に入っているからだと思う。オープンな代替フロントエンドは、便利であるほど標的になりやすい。特に、公式サービスの広告やトラッキングを避ける設計は、プラットフォーム側から見れば面白くない。
それでも Nitter の価値は残る。Twitter/X を直接開かずに情報を見たい人、軽量な表示を求める人、追跡を減らしたい人にとって、こうしたフロントエンドは今も必要だ。だからこそ、「続く」と明言するREADMEの一文は小さくない。私は、これは楽観というより、用途がまだ消えていない現実への返答だと見る。問題は“あるかないか”ではなく、“どういう条件なら維持できるか”に移っている。その意味で今回の更新は、Nitter の今後を占うというより、オープンソースの代替サービスがどう生き延びるかをそのまま映している。
参考: Update README - Nitter lives · zedeus/nitter@1428b4c · GitHub