コンテキスト管理を雑にすると、Claude Code はすぐ「前の話」を背負い込んで重くなる。これを放置してから「なんか話がズレるな」と首をひねるのは、だいたい手遅れだ。/clear は失敗の後始末ではなく、作業を切り替えるための道具として使う。
Claude Code のセッションは、ひとつの長話にしすぎるとだるい。依頼の文脈が積み上がり、関係ない前提まで抱えたまま応答する。コード修正でも文書作成でも同じで、「今やっている仕事」と「さっきまでの仕事」が混ざった瞬間に精度が落ちる。だから、/clear は気分転換ではなく、仕事の区切りを明示するために入れる。
まず感覚だけ先に言う。次のどれかに当てはまるなら、ほぼ /clear でいい。
一つ目は、作業の目的が変わったときだ。たとえば、最初はバグ修正を頼んでいたのに、途中から仕様の相談に変わる。あるいは、ファイル整理をしていたのに、急に文案の推敲を始める。これは同じ仕事ではない。前の前提を持ち越すメリットがないので、切ったほうが早い。
二つ目は、別のディレクトリ、別の案件、別の対象に移るときだ。Claude Code は作業中のファイルや会話の流れを覚えているぶん、狭い範囲では強い。だが、A案件のルールをB案件に持ち込むと面倒が増える。筆者は、ひとつのリポジトリで雑に作業を続けたせいで、前の変更意図を引きずった提案を何度か食らった。人間から見れば「その話は前の案件だろ」で済むのだが、会話が長いと境目がぼやける。ここは潔く切るべきだ。
三つ目は、「なんでそうなる?」が増えたときだ。返答が急に鈍る、前提の取り違えが増える、同じ説明を何度も求められる。これ、セッションを長く引っ張りすぎたサインであることが多い。会話の残骸が邪魔をしている。人間でも長電話のあとに要点を見失うのと同じだ。
実際の使い方は単純だ。Claude Code の対話中に /clear を打てば、セッションの文脈をリセットできる。つまり、今までの会話をいったん捨てて、まっさらな状態で次の指示を始める。これが「コンテキストを掃除する」というやつだ。
たとえば、こんな切り方で十分だ。
ここまでの変更方針はいったん整理できたので、セッションを区切ります。
/clear
改めて次をお願いします。
- 目的:
- 対象ファイル:
- やってほしいこと:
- 触ってはいけないこと:
この書き方のいいところは、単に /clear で終わらせない点だ。区切ったあとに、次の仕事の前提を短く書き直す。これをやると、Claude Code も迷いにくい。長い会話を引きずるより、必要な条件だけを再提示したほうが強い場面は多い。
コード修正なら、こんなふうに言うといい。
/clear
新しいセッションとして続けます。
目的はログ出力の整形です。
今のタスクでは、認証まわりは触らないでください。
対象は src/logger.py だけです。
文書作成やファイル整理でも同じである。むしろ非エンジニア用途のほうが、区切りの効果は分かりやすい。たとえば、契約書の下書きを直していたあとに、別の案件の説明文を作るなら、前の案件名や条件が残っていると困る。写真整理でも、旅行フォルダのルールをそのまま仕事資料に持ち込むと、分類の癖が混ざる。/clear は、仕事の棚を入れ替える動作に近い。
逆に、切らなくていい場面もある。小さな修正を何往復かするだけなら、同じセッションで詰めたほうが速い。たとえば、一つの関数を直し、その周辺のテストも直し、最後に差分の説明を書く。これは同じ流れだ。わざわざ切ると、さっき共有した前提まで毎回言い直す羽目になる。ここで区切るのは無駄が多い。
判断基準はかなり実務的でいい。次の問いに「はい」が多ければ /clear だ。
このあたりが重なったら、会話を続けるより切るほうが合理的だ。
注意したいのは、/clear が「履歴を消す魔法」だと勘違いすることだ。少なくとも、作業の区切りとして使うなら、切る前に必要な情報は手元に残しておくべきだ。変更したいファイル名、守りたい方針、決めた命名ルール。これをメモせずに消すと、ただの忘れ物になる。筆者も一度、区切ったあとに「さっきの条件なんだっけ」と戻れず、結局手で再説明した。あれは余計なロスだった。切るなら、残すべき要点を先に抜いてから切るのが筋である。
もう一つ、長いセッションを「賢さ」と勘違いしないことだ。長く続ければ文脈が増えるので得だ、という発想は半分しか合っていない。古い前提まで積もると、むしろノイズになる。Claude Code は人間の同僚みたいに「さっきのは忘れて」と空気で察してくれない。こちらが明示的に切る。そこをサボると、会話がだんだん鈍る。
実務では、こういう区切り方がやりやすい。
作業の開始時に、最初の条件を短く書く。途中で目的が変わったら、いったん /clear。次の仕事の目的、対象、禁止事項を三行くらいで再提示する。これだけで十分だ。大げさなルールはいらない。雑な長話を続けるより、区切る、言い直す、進める、のほうが速い。
/clear をうまく使えるようになると、Claude Code の印象がかなり変わる。何でも覚えさせて粘る道具ではなく、仕事単位で頭を切り替えられる道具になるからだ。コードでも文書でも整理でも、この感覚は効く。長く使うほど、むしろ短く切るのがうまい人のほうが強い。要するに、セッションは育てるより、適切に畳むほうが大事だ。