bunny.netが、Bunny DNSのDNSクエリ課金を完全に撤廃しました。
ざっくり言うと、DNSの問い合わせ回数に応じて料金が増える仕組みをやめた、という話です。しかも「無料化」と言っても、ただの宣伝文句ではなく、クエリ数の上限なし・リクエスト単位の課金なしまで踏み込んでいます。
DNSは普段あまり意識しない仕組みですが、Webサイトやアプリにとってはかなり重要です。住所録みたいなもの、と説明されることが多いですが、bunny.netのDNSはそれよりずっと賢い。単に名前をIPアドレスに変換するだけではなく、遅延や稼働状況を見て、どこに通信を振るかまで決められる“ルーティングエンジン”寄りのDNSです。ここがこの発表の面白いところだと思います。
bunny.netは、Bunny DNSについて次のような変更を発表しました。
ただし、bunny.netの他サービスと同様に、アカウント全体としては月1ドルの最低利用額がある点は残っています。
つまり「DNSだけが別料金で膨らむ」状態をやめた、という理解がいちばん近いです。
これ、地味に見えてかなり効きます。DNSってトラフィックが多いほど問い合わせ回数も増えるので、アクセスが伸びるほど請求が読みにくくなりがちなんですよね。そこを「DNSの料金は気にしなくていい」に変えたのは、かなり気持ちのいい判断だと思います。
記事の言い方を借りると、bunny.netのミッションは「インターネットをもっと速くする」ことです。
その考え方に立つなら、DNSは“有料のオプション”ではなく、もっと手前にある基盤であるべきだ、という発想になります。
これには納得感があります。
DNSは、ユーザーがサイトに来る前の最初の関門です。ここが遅い、複雑、高い、となると、その後のCDNやセキュリティ以前に気分が悪い。しかもDNSは、どんなにアクセスが急増しても避けられない。だからこそ、トラフィックに比例して請求が増える設計は相性が悪い、というのがbunny.netの考え方なのでしょう。
個人的にも、この判断はかなり筋がいいと思います。
クラウド系の料金って「使ったぶん払う」が基本ですが、DNSみたいな土台まで細かく課金されると、運用者は安心して攻められません。アクセスが伸びたら嬉しいはずなのに、請求書を見るのが怖くなる。あれ、かなり嫌です。
ここで少し背景を補足すると、Bunny DNSは普通のDNSより少し野心的です。
普通のDNSは、名前を記録に従って返すだけの「引き方」の仕組みに近い。でもBunny DNSは、latency data(通信の遅さ)やhealth checks(サーバーが生きているかの確認)を使って、どこへ誘導するかを動的に決められます。さらにJavaScriptで振る舞いを調整することもできます。
つまり、単なる住所録ではなく、交通整理の司令塔に近い。
この発想を自社のCDNで磨いて、そのまま製品として外に出した、という流れです。
記事によれば、Bunny DNSは現在
を扱っているそうです。
この数字を見ると、「無料にして大丈夫なの?」と一瞬思いますが、逆に言えば、その規模で回せる仕組みがすでにあるからこそ、料金の取り方を変えられたとも読めます。
bunny.netは、DNSを安くしただけでなく、乗り換えやすさもかなり意識しています。
たとえば、別のDNSサービスから移すときに使えるautomatic zone scanningがあります。これは、既存ドメインにありがちなレコード名や種類をざっと読み取って、ゾーン情報を復元してくれる機能です。要するに「最初から手で全部打ち直しなさい」という苦行を減らしてくれるわけです。
さらに、BINDファイルのアップロードにも対応しています。BINDはDNS設定の定番フォーマットなので、既存運用の資産を持っている人にはありがたいはずです。
ここで地味に良いのが、DNSの設定後にそのまま
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できる点です。
これはかなり“bunny.netらしい”設計だと思います。
DNS、CDN、セキュリティをバラバラに売るのではなく、入口から全部つなげてしまう。ユーザーにとっては、設定のたびに別サービスへ移動しなくて済むので楽ですし、運用の抜け漏れも減ります。
「名前解決したら、そのまま配信最適化と防御までつながる」というのは、正直かなり気持ちがいいです。
今回の記事で好印象だったのは、単なる値下げ自慢ではなく、DNSそのものの改良も並行して進めているところです。
無料にしただけで中身が止まると、長期的には怖いですからね。その点、bunny.netは細かいアップデートを積み上げています。
IPv6は、今ではかなり当たり前になってきました。特にモバイル回線ではIPv6前提の環境も増えています。
Bunny DNSでは、nameserver records がIPv4とIPv6の両方で解決されるようになっていて、利用者側で特別な設定は不要だと説明されています。
こういうのは「新機能」というより、もはや前提です。
でも前提をきちんと満たしているサービスって、思った以上に少ない。だからこそ、ここを当然のように整えているのは好感が持てます。
DNSSECは、DNSの改ざんを防ぐための仕組みです。
ただし普通のDNSSECは、ゾーン構造の情報が見えやすくなることがあり、それを嫌がる人もいます。
bunny.netはここでNSEC Black Liesを使っているそうです。
名前はちょっと物騒ですが、要するに、検証の仕組みは保ちつつ、ゾーンの中身が丸見えになりにくいようにしているわけです。セキュリティ機能は、入れたはいいけど運用上の気まずさが残ることが多いので、この配慮は地味に大きいと思います。
DNSは昔の「Aレコードを置くだけ」の世界からかなり変わっています。
Bunny DNSでは、次のようなレコードにも対応を広げています。
このあたりは、普段のWeb運用ではあまり目立ちません。
でも、サービスが大きくなるほど効いてくる部分です。派手さはないけれど、土台をちゃんと更新している感じがあって、個人的にはかなり好感が持てます。
今回の変更は、単に「無料になりました」で終わる話ではないと思います。
むしろbunny.netは、DNSを課金対象ではなく、全体の起点として再定義しているのだと感じます。
DNSが起点である以上、そこに余計な心理的ハードルを置かない。
そしてその先にCDNやセキュリティを滑らかにつなぐ。
この流れは、ただの価格改定よりずっと戦略的です。
もちろん、全部の人にとって最適とは限りません。
すでに別のDNS基盤に深く組み込まれている企業なら、すぐ乗り換える必要はないでしょう。でも、これからサイトやサービスを立ち上げる人、あるいは「DNSの請求の読みづらさにうんざりしている人」には、かなり刺さるはずです。

DNSはふだん見えない。でも、見えないからこそ、良いものは静かに効きます。
今回の無料化は、その“静かな効き方”をかなり素直に強めたニュースだと思います。
