通販サイトで「4TB」「8TB」と書かれたUSBメモリが数千円で売られているのを見たことがある人は多いはずだ。NANDフラッシュの原価だけ考えても、本物の4TBメモリが小売価格5000円で成立することはまずない。この価格設定そのものが、購入前に気づける最大のサインだった。とはいえ、届いた実物は見た目もパッケージも普通のUSBメモリで、パソコンに挿せば「4TB」ときちんと表示される。ここに気づかないまま買ってしまった人は、責められるようなことは何もしていない。
この手の偽装品は、コントローラのファームウェアを改ざんして、OS に対して実際より大きい容量を申告させている。Windowsのエクスプローラーで見ても「3.63TB」のように正しそうな数値が出るし、フォーマットも通る。だが物理的なチップは32GBや64GBしかないことがほとんどで、申告された容量との差分は存在しないメモリ領域だ。
厄介なのはここからで、存在しない領域に書き込んだファイルは、書き込み自体は成功したように見えて、実際には物理容量を超えた分から順に上書き・破損していく。エラーは出ない。コピーが完了したというダイアログが出て、ファイルサイズも一見正しく表示される。実際に壊れているかどうかは、あとで開いてみるまでわからない。写真や動画のバックアップ用途で使っていた場合、いちばん大事なデータが必要になったときに初めて「開けない」「途中で映像が止まる」と気づくケースが典型的だ。
まず、そのUSBメモリに重要なデータを新たに保存するのをやめる。すでに保存したファイルがあるなら、別のストレージにコピーして中身が正常に開けるか(動画なら最後まで再生できるか、画像なら破損なく表示されるか)を確認する。
容量詐称そのものを検証したいなら、無料の検証ツールが使える。Windowsなら「H2testw」、Mac/Linuxなら「F3(Fight Flash Fraud)」が定番で、どちらもドライブ全体にテストデータを書き込み、読み出して一致するかを確認してくれる。物理容量を超えた時点で書き込みエラーまたは読み出し不一致が出れば、偽装容量品であることが機械的に証明できる。フォーマットしただけでは正しい容量に見えてしまうので、必ずこうしたツールで実際に書いて読む検証が要る。
Amazonのマーケットプレイス出品者から買った場合は、まず「商品が説明と著しく異なる」という理由で返品・返金を申請する。出品者が応じない、あるいは連絡が取れない場合は、Amazonの「Aマーケットプレイス保証」を使えば、Amazon側の判断で返金してもらえることがある。
楽天市場やYahoo!ショッピングでは、まず出店者に直接連絡して返金を求めるのが最初の一歩になる。応答がない、または不誠実な対応をされた場合は、各モール運営元のカスタマーサポートに「詐欺的な出品」として通報すると、モール側から出店者への指導や、被害者向けの補償制度の案内を受けられることがある。
メルカリやヤフオク!などのフリマ・オークション経由なら、取引メッセージで返金を求めつつ、埒が明かない場合は運営の事務局に通報する。フリマアプリは個人間取引が前提のため対応に時間がかかることもあるが、悪質な出品として複数の通報が集まればアカウント停止につながりやすい。
AliExpressやTemuなど海外プラットフォーム経由の場合は、購入から一定期間内であれば「Buyer Protection」の対象になっていることが多い。商品ページの「返金・紛争」メニューから、届いた商品が説明と異なる旨を申請すれば、プラットフォームが仲介して返金処理を進めてくれる。この手続きには期限があるので、気づいた時点ですぐ動くのが重要になる。
出品者・モールどちらに連絡しても解決しない場合は、消費者ホットライン「188(いやや!)」に電話する。市外局番なしでかけると、居住地に近い消費生活センターや消費生活相談窓口に自動的につながる。相談は無料で、専門の相談員が事業者との間に入って交渉(あっせん)してくれることもある。今回のような「表示容量と実容量が著しく異なる」ケースは、特定商取引法や景品表示法上の問題として扱われる典型例で、相談実績も多い分野だ。電話が難しい場合は、独立行政法人国民生活センターの公式サイトから最寄りのセンターを検索し、オンラインや窓口での相談もできる。
クレジットカードで支払った場合は、カード会社に「支払停止の抗弁」を申し出る手もある。これは割賦販売法に基づく制度で、購入した商品が著しく品質・内容と異なる場合に、代金の支払いを一時的に止められるというものだ。特に、返金交渉が長引いている、あるいは出品者と連絡が取れなくなった場合に有効な選択肢になる。カード会社のサポート窓口に事情を説明し、必要な書式を案内してもらうとよい。
容量を偽装して販売する行為は、単なる「説明と違う」を超えて詐欺罪や不正競争防止法に触れる可能性がある。返金には応じたが同じ出品者が別のアカウントで売り続けている、あるいは高額な被害が出ているといった場合は、警察相談専用電話「#9110」や、都道府県警のサイバー犯罪相談窓口に情報提供しておくと、同種の被害の広がりを止める助けになる。緊急性がなくても、記録として残すことに意味がある。
被害に気づいたら、購入したサイトのレビュー欄に「H2testw等で検証した結果、実容量は表示よりはるかに小さかった」と具体的に書いておくと、次に同じ商品を検討している人への強い警告になる。Amazonや楽天には出品そのものを通報する機能もあり、複数の通報が集まれば出品停止につながりやすい。
買う側の防衛策としては、大容量・激安の組み合わせを見た時点でまず疑うこと、レビュー欄を「容量」「偽装」といったキーワードで検索してみること、そして到着後はフォーマットして満足するのではなく、H2testwやF3のようなツールで一度だけでも実容量を検証しておくことに尽きる。数分の手間で、いちばん大事なデータを失う前に気づける。