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中国がスーパーコンピュータ首位を奪還、でも勝ち筋はGPUではなかった

中国のスーパーコンピュータ「LineShine」が、最新のランキングで世界最速の座を奪い返しました。しかも、ただ速いだけではありません。今回の話でいちばん面白いのは、「最先端=GPU大量投入」という今どきの流れに、あえて乗っていないことです。CPU中心で2 exaflops超えを達成した、かなり異色のマシンなのです。

まず押さえたいポイント

「2 exaflops」ってどれくらいすごいのか

スーパーコンピュータの性能は、ざっくり言うと「どれだけ大量の計算を一気にこなせるか」で比べます。今回出てきた exaflops は、その計算速度を表す単位です。かなり雑に言えば、桁違いの計算マシンだと思ってください。1秒間にとんでもない数の浮動小数点演算を処理できる、という話です。

しかも今回の「2.198 exaflops」は、ただの理論値ではなく、​sustained double-precision performance、つまり「実際に継続して出せる高精度計算の性能」です。ここは地味に重要です。カタログスペックが派手でも、実戦では落ちることがある。その点、今回の数字はかなり“本気の実力”に近い。

個人的には、この「2 exaflopsの壁を超えた」というより、「CPUだけで超えた」という方に驚きました。最近の最速マシンはGPU前提のものが多く、AIブームの影響もあって、巨大なGPUクラスターが当たり前になっています。そこを外して勝つのは、かなり気持ちいい逆張りです。

なぜ中国はGPUなしで勝てたのか

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背景には、米国の技術輸出規制があります。中国は先端GPUの調達で制約を受けているため、他国のように「強力なGPUを大量に積めば勝てる」というやり方をそのまま取りにくい。普通なら不利です。かなり不利です。

ところがLineShineは、そこを正面突破せず、​独自の304コアCPU を中心に組み上げたそうです。全体では 1,379万コア1.55GHz で動作し、独自のインターコネクトでつながっているとのこと。インターコネクトは、各計算ノードを高速に結ぶ通信路のようなものです。スーパーコンピュータでは、計算そのもの以上に「ノード同士がどれだけスムーズに話せるか」が効いてきます。

ここが面白いのは、制約があると人は別ルートを探す、という当たり前のことを、中国の研究者と開発者がかなり大きなスケールでやり切った点です。制裁がそのまま技術停滞につながるとは限らない。むしろ、別の設計思想を生み出すきっかけになることがある。LineShineはその象徴みたいな存在です。

電気を食う巨人、それでも効率は悪くない

LineShineの消費電力は約 42.2メガワット。メガワットと言われてもピンと来にくいですが、要するにかなりの大電力です。スーパーコンピュータは性能だけでなく、冷やすための電力も含めて巨大な設備になります。熱をどうさばくかが、実は性能競争の一部です。

一方で、効率は 52.07 Gigaflops per watt とされています。ここは「1ワットあたりどれだけ計算できるか」を示す指標で、電力効率の良さを見るものです。単純に速いだけでなく、かなり真面目に“使える形”にしてきた印象があります。

ただ、ここで「中国が圧勝」と単純に言い切るのは早いとも思います。なぜならスーパーコンピュータは、用途によって強みが変わるからです。AI向け、科学技術計算向け、シミュレーション向けで最適解は違う。今回のランキングは「総合的にこの条件で速い」という話であって、万能選手の証明ではありません。とはいえ、その条件で世界一を取るのは十分にすごい。

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米国勢も黙っていない。exascale級は5台に

今回のランキングで目を引くのは、中国の逆転だけではありません。​exascale threshold を超えるシステムが、ついに5台になったことです。内訳は、中国が1台、米国が3台、ドイツが1台。

米国勢では、オークリッジ国立研究所の Frontier が3位、アルゴンヌ国立研究所の Aurora が4位、ドイツの Jupiter Booster が5位になりました。Frontierは1.353 exaflops、Auroraは1.012 exaflops、Jupiter Boosterはちょうど1 exaflopsです。

こうして見ると、世界最速争いは「どこか1国が独走」というより、複数の国がそれぞれ違う技術路線で競っている構図です。Top500も、今年のリストは Intel、AMD、NVIDIA など設計の違うシステムが並び、​CPU、GPU、APU、カスタムアクセラレータ の多様性が際立っていると述べています。要するに、勝ち方が一つではない。ここが今の計算機の面白いところです。

情報をあえて隠すのも、この世界では戦略

もうひとつ興味深いのは、LineShineが公開情報の少ないマシンだという点です。中国のスーパーコンピュータは、政府の制限もあって設計をオープンにしにくい傾向があります。加えて今回は、公的資金ではなく民間主導で開発されたため、Top500のテストに出しても問題ないと判断したようだ、とNYTは伝えています。

ただし、CPUをどの会社が作ったのか、どんなプロセス技術を使ったのかなど、細かな部分は明かされていません。ここはモヤッとするところですが、同時に「全部は見せない」のもスーパーコンピュータ業界らしいところです。国家レベルの計算機は、研究装置であると同時に戦略資産でもあるので、全部を公開する義理はない。そう考えると、情報の非対称性そのものが競争力の一部なのだと思います。

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これ、AI時代にも効いてくる話ではないか

今回のニュースは、単なる「中国が1位を取った」という順位の話で終わりません。GPU全盛の時代に、CPU中心でもトップを取れることを示したのが大きい。これは、計算基盤の未来がひとつに収束しないことを示しています。

AIの世界でも、GPUは強い。でも、だからといってGPUだけが答えではない。実際、電力、供給網、コスト、用途の違いを考えれば、CPUや専用アクセラレータ、独自設計の価値はまだまだあるはずです。LineShineは、そのことをかなり派手に証明したニュースだと思います。

しかも、外圧が強いほど別の道を作る力が強まることもある。中国の今回の逆転には、そういう技術史のねじれみたいなものを感じます。素直に「すごい」と言いたいし、同時に「この先も面白くなりそうだ」と思わせる出来事です。


参考: China takes back top spot in latest supercomputer ranking - Engadget

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