まず思ったのは、「ここまで来たか」という驚きよりも、ついに“逆アセンブル”の面倒な部分にAIをつないだのかという、妙に実務的な感想だった。Ghidra や IDA みたいなツールは強力だけれど、慣れていない人には画面を開いた瞬間から壁が高い。そこに coding agent を差し込んで、関数を追わせたり仮説を試させたりするのは、かなり筋がいい。単に便利というより、「触れる人」を増やす方向の進化に見える。
ただ、読んでいて少し引っかかったのは、これが“ソースコードを取り戻す魔法”ではない、とはっきり書いてある点だった。そこを曖昧にしないのは誠実だと思う。逆に言えば、AIが得意なのは完全な復元ではなく、バイナリの中で断片的に見える手がかりをつないで、調査の速度を上げることなんだろう。人間がゼロから読むよりずっと速いかもしれないけれど、最後の判断まで丸投げできるものではない。ここは期待しすぎると危ない。
それと、この手の技術がすぐに「善い用途」と「嫌な用途」の両方に向かうのも、かなりリアルだと思った。正当な研究や保守に役立つ一方で、ゲームやアプリのコピー、機能の抜き取り、保護の迂回にも使えてしまう。記事中の反応が賛否両論なのも当然で、技術そのものより、どう使うかの境界線がいちばん難しい。便利になればなるほど、その線は見えにくくなる。
個人的には、こういうツールが“ハックの自動化”ではなく、“調査の補助輪”として広がるなら面白いと思う。バイナリ解析はずっと職人芸っぽい世界だったので、そこにLLMベースの agent が入るのは、学習曲線をかなりなだらかにするはずだ。ただし、そのぶん「何を見落としたか」を自分で確認する習慣も、今まで以上に必要になるだろうとも感じた。速くなることと、正しくなることは同じではない。
参考: Reverse Engineer Anything Project Brings AI Agents to Binary Analysis