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自然に学ぶ“Eureka machine”とは何か:AIが苦手な難問に挑む新しい計算機

キーポイント

この記事は何を伝えているのか

Indian Institute of Science(IISc)の記事「A Eureka machine that thinks like nature and explores what AI cannot」は、かなりざっくり言うと、​AIが得意ではない種類の問題を解くための新しい計算機について紹介しています。

ここで言う“Eureka machine”は、単なる派手な呼び名ではありません。
要するに、​ひらめきのように答えを見つける機械、あるいは自然のように探索して安定な状態へたどり着く機械というイメージです。

この研究が狙うのは、たとえば次のような問題です。

こういう問題は、単純に「計算を速くすれば解ける」というタイプではありません。
候補が多すぎて、正解にたどり着く道が複雑なのです。ここが本当にしんどい。

なぜAIでは足りないのか

記事では、AIモデルは文章生成や宇宙船の制御のようなことまでできる一方で、
物流、回路設計、暗号のような組合せ爆発(combinatorial explosion)が起きる問題では止まりがちだと述べています。

組合せ問題というのは、選択肢が増えるにつれて、試すべきパターンが爆発的に増えていく問題です。
たとえば、10個の要素の並べ方より、20個の並べ方のほうが圧倒的に大変になります。
人間の感覚だと「ちょっと増えただけ」に見えるのに、計算機にとっては地獄、というやつです。

この記事の重要なポイントは、
​「AIをもっと学習させればいい」という話ではなく、計算の仕組みそのものを別の方向へ進めていることだと思います。

新しい計算機の正体:neuromorphic Ising machine

今回の研究の中心には、​neuromorphic Ising machineがあります。

neuromorphic って何?

neuromorphic は、​脳の神経回路のようなふるまいをまねた計算方式のことです。
ふつうのコンピュータが「命令を順番に実行する」のに対して、neuromorphic は大量の要素が互いに影響し合いながら答えに近づくイメージです。

Ising machine って何?

Ising machine は、もともと物理学のIsing modelに由来する計算のやり方です。
ざっくり言うと、​たくさんの状態の中から、エネルギーが最も低い“安定な状態”を探す機械です。

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現実の難問は、「どの選択が全体として一番いいのか」を探す問題に言い換えられることが多いです。
Ising machine は、その探索を物理現象っぽい方法でやります。
これがかなり面白い。
“計算”というより“落ち着く場所を探す自然現象”に近いからです。

Fowler-Nordheim annealer が効く理由

記事では、この機械にFowler-Nordheim annealerを組み合わせたとあります。

annealer は、日本語で無理やり言えば焼きなまし器みたいなものです。
最初はざっくりした状態から始めて、少しずつ条件を変えながら、よりよい解へ近づけていく考え方です。

Fowler-Nordheim は、量子トンネルに関係する物理現象です。
細かい理屈はややこしいですが、要は電子が壁をすり抜けるような振る舞いを使って、計算を進める仕組みだと思えば十分です。

記事によると、この組み合わせによって、
難しい最適化問題を大規模に解きつつ、最終的に最適解へ収束していくことが期待されるとのことです。

ここで大事なのは、
「いつでも万能に速い」という話ではなく、​この種の問題に対して、かなり筋のいい計算アーキテクチャを提案しているという点です。
個人的には、こういう“用途特化で強い”方向は、今後ますます大事になると思います。

例として挙げられているタンパク質折りたたみ

記事の説明では、タンパク質折りたたみの例も出ています。
タンパク質は、最初はひも状のような状態から、いくつかの途中状態を経て、最終的に安定した立体構造になります。

この途中には、​molten-globule stateと呼ばれる半端な状態もあるそうです。
つまり、いきなり正解に飛ぶのではなく、​候補を探りながら、だんだん安定な形を見つけていくわけです。

この例が象徴的なのは、
人間が「答えは1つ」と思いがちな問題でも、実際には膨大な候補の山の中から“かなりよい答え”を見つける作業になっていることです。
自然は、この種の探索がやたら上手い。
だからこそ、自然のふるまいを真似る計算機が出てくるのは、かなり筋が通っていると感じます。

研究はどこから来たのか

この研究は、​ColoradoのTelluride Neuromorphic and Cognition Engineering workshopと、​IIScのBangalore Neuromorphic Engineering Workshop(BNEW)​という、世界のneuromorphic研究者が集う場から生まれたと説明されています。

共同研究者には、IIScのChetan Singh Thakur教授に加え、

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などの研究者が参加しています。

こうした国際共同研究の流れを見ると、neuromorphic computing はまだ“完成された技術”というより、​世界中の研究者がアイデアを持ち寄って、次世代の計算機を形にしている最中なのだとわかります。
この「まだ途中」の感じが、実はすごくおもしろいところです。

なぜ今、この話が重要なのか

記事は、Moore’s law、つまり半導体が小型化することでコンピュータ性能が伸び続ける時代が限界に近づいている、と指摘しています。

これはかなり重要な視点です。
これまで私たちは、困ったら「もっと速いCPU」「もっと小さいプロセスノード」と言ってきました。
でも、それが万能でなくなってきた。

そこで必要になるのが、
同じ計算をもっと速くやることではなく、そもそも違うやり方で計算することです。

今回の研究はまさにその方向で、
「AIの延長線」ではなく、​物理・脳型・量子インスパイアの発想を組み合わせた新しい計算を提案しています。

この路線は派手さだけでなく、かなり実用性があるかもしれないと思います。
特に、物流や回路、最適化のような分野では、​答えの精度と探索速度の両方が重要だからです。

ひとことで言うと

この研究は、
“AIが苦手な問題を、自然のように探索して解くコンピュータ”を作ろうとしている話です。

AIがすべてを置き換える、というより、
AIでは届かない場所に別の計算機を置く
この発想はかなり健全ですし、技術の進化としても正直ワクワクします。

個人的には、こういう研究は「すぐに日常に入ってくる」タイプではないけれど、
10年後に振り返ると「ここが転換点だった」と言われる可能性があると思います。
コンピュータの未来は、速さ競争だけではなく、​**“どう考えるか”の設計競争**に入っているのかもしれません。


参考: A Eureka machine that thinks like nature and explores what AI cannot

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