JPMorgan ChaseのCEO、Jamie Dimon(ジェイミー・ダイモン)氏が、かなり率直なことを言いました。
「これからは銀行員をあまり採用しなくなって、代わりに“AI people”をもっと雇うことになるかもしれない」 という話です。
この発言、かなり象徴的だと思います。
なぜなら、銀行というのは昔から「人が多く、階層も厚く、若手が下積みをする」世界の代表みたいな業界だったからです。そこにAIが入ると、仕事の作り方そのものが変わってしまうわけです。
Dimon氏はBloombergのインタビューで、AIは**“every job”**、つまり「すべての仕事」に影響すると述べました。
これは大げさに聞こえるかもしれませんが、銀行の仕事を考えるとわりと納得感があります。

たとえばAIはすでに、
などに使われているそうです。
ここでいうコーディングは、プログラムを書くことです。
要するに、銀行のIT部門だけでなく、営業や企画に近い仕事にもAIが入ってきているということです。
Dimon氏は、これがまだ「氷山の一角」にすぎないとも話しています。
この表現も面白いですよね。つまり、今見えている変化はまだ序章で、本当の変化はこれから来る、という見方です。
気になるのは、AIで仕事が減るなら社員はどうなるのか、という点です。
Dimon氏は、JPMorganでは毎年約10%の離職があると説明しました。これは約3万人に相当するとのことです。
そして会社としては、その人たちに対して
という対応を考えているそうです。
個人的には、ここがかなり重要だと思います。
「AIで人が減る」と聞くと冷たい話に見えますが、実際の企業はたいてい、いきなり全員を切るわけではありません。まずは配置転換、つまり「別の部署や別の役割に動いてもらう」ことから始まります。JPMorganもすでに**“huge redeployment plans”**、かなり大規模な再配置計画を持っていると話していました。
この記事で特に面白いのは、AIが銀行業務の“地味だけど大事な仕事”を変えつつある点です。
若手の銀行員はこれまで、
といった仕事を通じて経験を積んできました。
でも今は、スタートアップのRogoやHebbiaのような企業が、そうしたgrunt work、つまり「地味で面倒な下働き」を自動化しています。
Anthropicも金融向けのAI agentsを出していて、面倒なpitch deck(提案資料)やモデル作成を助ける機能があるそうです。
これ、かなり本質的な変化ではないかと思います。
若手が苦労して覚える“銀行の基礎体力”の一部を、AIが先回りしてやってしまう。そうなると、若手の育て方そのものを見直さないといけません。
便利な一方で、「昔は下積みで覚えたことを、今の若手はどう身につけるのか」 という問題も出てきます。
Dimon氏は、AIによる効率化が雇用削減につながることも認めています。
ただし、それは今回初めて起きることではなく、彼の長いキャリアの中でも似たことは何度も起きてきた、と述べました。
この発言には、経営者らしい現実感があります。
技術の進化って、いつも「仕事を全部奪う」か「仕事を全部楽にする」かの二択ではないんですよね。実際には、
という形でじわじわ変化していきます。
だからこそ、今回の話の本質は「AIが人間を消すか」ではなく、どんな人材を増やすのかにあると思います。JPMorganが“AI people”を増やすというのは、その答えの一つです。
記事では、Standard CharteredのCEO、Bill Winters氏の発言も取り上げています。
Winters氏は、サポート部門の削減について「lower-value human capitalを置き換える」といった言い方をして、オンラインで批判を浴びました。後に内部メモで言い方を修正し、「役割がなくなるとしても、それは人の価値ではなく仕事の変化を反映したものだ」と説明したそうです。
Dimon氏はWinters氏を友人だとしつつ、「言い方がまずかったことは誰にでもある」 とコメントしました。
この話、かなり現代的です。AIや人員削減の話は中身だけでなく、どう表現するかでも炎上しやすい。
本音を言えば、企業トップの一言は重いので、少し雑な表現でもかなり大きく受け取られてしまうんですよね。
Dimon氏は、AIの影響は下位層の社員だけでなく、誰にとっても無関係ではないとも強調しました。
これはかなり大事です。
AIの話って、つい「単純作業の人が危ない」という文脈で語られがちですが、実際には中堅の分析、資料作成、企画、管理にもどんどん入ってきます。
つまり、影響は“末端”だけでは終わらない。むしろ、ホワイトカラー全体の仕事のやり方を変える可能性が高いわけです。
JPMorganは巨大な組織で、従業員は30万人超。しかもテクノロジー予算は200億ドルあるといいます。
この規模だと、AI導入は単なる実験ではなく、会社の構造を変えるプロジェクトになります。
ただ、Dimon氏の話を読む限り、JPMorganは「AIで人を切る会社」になりたいわけではなさそうです。
むしろ、AIで生産性を上げつつ、人を再配置して組織を組み替える方向に見えます。
個人的には、これが大企業の現実的な落としどころだと思います。
AIは人件費を削るためだけの道具ではなく、会社の中で「人をどこに置くか」を再設計する装置なんですよね。
今回の発言は、単なる「AIすごいね」という話ではありません。
もっと生々しく言うと、巨大金融機関が、これから必要とする人材の中身を変え始めているというニュースです。
銀行員が減るかもしれない。
でも、AIを使いこなす人は増える。
そして、その変化は銀行だけでなく、ほかのホワイトカラー職にもじわじわ広がっていく。
そんな未来を、Jamie Dimon氏はかなりはっきり口にした、というのが今回の記事のポイントです。
この手の話は少し怖いけれど、同時に「仕事の定義が変わる瞬間」を見ている感じもして、正直かなり面白いです。これからの数年で、金融業界の採用ページに“AI skills歓迎”がさらに増えても、私はまったく不思議ではないと思います。
参考: Jamie Dimon says JPMorgan will probably hire fewer bankers in the future — and more 'AI people'