暗号資産業界ではよくある話ですが、売上が大きく落ちた会社が、別の成長テーマに賭けるという動きが今回のBakktです。
Cointelegraphの記事によると、Bakktの2026年第1四半期のcrypto services revenueは2億4360万ドルで、前年同期の10億7000万ドルから77%減。かなり派手な落ち込みです。
ただし、この数字は見た目以上に少しややこしい。記事では、Bakktのcrypto revenueの多くはcrypto costs and brokerage feesで相殺されると説明されています。要するに、売上が立っていても、その裏で同じくらいコストがかかる構造だったわけです。
このあたり、数字だけ見ると「儲かってそう」に見えても、実際にはかなり薄利だったことがわかります。個人的には、こういうビジネスモデルは相場の波に弱く、かなりしんどいなと思います。

最終的な損益は、Bakktに帰属する純損失が1170万ドル。1株あたり41セントの赤字でした。前年同期は770万ドルの純利益だったので、ここもかなりの反転です。
Bakktは売上減の理由を、主にcrypto trading volumesの低下だと説明しています。
これはシンプルに言うと、「取引される量が減ったので、手数料ビジネスが伸びなかった」ということです。
暗号資産取引の世界では、取引量が多いと企業は稼ぎやすい一方、相場が落ち着いたり熱狂が冷めると、あっという間に収益がしぼみます。
Bakktはまさにその影響を受けた形です。
一方で、営業費用は比較的安定していました。crypto costsを除いた営業費用は1850万ドルで、前年の1890万ドルから少し下がった程度。
つまり、コストをギュッと圧縮したというより、収益構造そのものが弱かったと見るほうが自然だと思います。
ここは地味に重要です。Bakktは四半期末時点で8260万ドルの現金を保有しており、そのうち6960万ドルは株式発行で調達した資金だとしています。さらに、長期債務はないとのこと。

赤字企業にとって現金は命綱です。
借金が少ないのは安心材料ですが、裏を返せば、これからの事業転換がうまくいくかどうかがかなり重要になる、ということでもあります。
株価は発表後に弱含みで、記事では月曜終値が9.92ドル、翌火曜のプレマーケットで9.00ドルまで9.14%下落したと伝えています。市場はやはり、今のBakktを素直に高評価していないのでしょう。
今回の一番面白いポイントは、Bakktが単に業績悪化した会社ではなく、事業の向きを大きく変えようとしていることです。

Bakktは今、crypto trading infrastructureから離れ、
へと進もうとしています。
ここでいうstablecoinは、価格が比較的安定するよう設計された暗号資産のことです。多くは米ドルなどと価値を連動させ、送金や決済に使いやすいのが特徴です。
つまりBakktは、「投機が中心の暗号資産取引」よりも、「実際の支払いで使える裏方インフラ」に賭けているわけです。これはかなり筋のいい方向転換にも見えます。少なくとも、派手さはなくても実需があるからです。

Bakktは4月30日にDistributed Technologies Research(DTR)の買収を完了しました。
記事によれば、これによってAI-native payments engineとstablecoin compliance stackを取り込んだとのこと。
ざっくり言うと、
です。
金融インフラでは、この“ルールにちゃんと従えるか”がかなり大事です。特にstablecoinは便利な一方で、規制の目が非常に厳しい分野。だからこそ、単に技術があるだけでは不十分で、コンプライアンスが強い会社が有利になります。

さらにBakktは、stablecoin providerのZothとMoUを結んだとも発表しています。Zothは、南アジア・中東・サブサハラアフリカを対象に、年換算10億ドルの決済量を狙っているそうです。
MoUは覚書のことで、正式契約の一歩手前の合意です。
ここから見えるのは、Bakktが先進国の既存金融だけでなく、新興国の決済インフラにも活路を見いだしていることです。これはかなり現実的な戦略だと思います。送金需要が大きい地域ほど、stablecoinの強みが出やすいからです。
CEOのAkshay Naheta氏は、stablecoin infrastructureについて
「世界の金融の中でも、ここ数十年で最も大きな構造変化の1つ」
だと述べています。
さらに、米国のGENIUS ActやCLARITY Actといった法整備が、Bakktのようなライセンスを持つインフラ企業に追い風になる可能性を指摘しています。
これらは要するに、暗号資産やstablecoinの扱いをより明確にしようとする規制・法案です。ルールが曖昧な市場では、結局「大きく動けるのは誰か」が不利になりがちなので、規制が整うことはインフラ企業にとってむしろ武器になる場合があります。

個人的には、このコメントはかなり重要だと思います。
暗号資産の世界は「技術がすごい」で終わりがちですが、実際にお金が動く現場では、規制対応・決済・信頼性がすべてです。Bakktはその地味で重い部分を取りにいこうとしているように見えます。
記事はBakktだけでなく、Circle Internet Groupにも触れています。
CircleはUSDCの発行元として知られるstablecoin企業で、株価が月曜に約16%上昇しました。理由は、第1四半期の総収益と準備資産収入が6億9400万ドルに増えたこと、そしてARC blockchain tokenのpresaleを公表したことです。
さらにUSDCの流通量は前年比28%増の770億ドル、onchain transaction volumeは263%増の21.5兆ドルに拡大したとのこと。
この数字を見ると、投機色の強い暗号資産よりも、実際に使われるstablecoinのほうに資金と関心が向いているのがよくわかります。
Bakktの転換は、たぶんこの流れに乗ろうとしているのでしょう。
「取引所まわりの周辺サービス」よりも、「送金や決済の中核インフラ」のほうが、これからの勝ち筋になる——そう考える会社が増えているのではないか、と思います。
Bakktの第1四半期は、数字だけ見ればかなり苦しい内容でした。
でも、ただ沈んでいるだけではなく、stablecoin infrastructureへの大胆な再配置を進めているのが今回の記事の本質です。
もちろん、転換がうまくいくかはまだわかりません。
Stablecoin市場は有望ですが、競争も規制も厳しい。しかもBakktは、まだ収益の柱を作り直している最中です。
それでも、「投機の波に左右される事業」から「実需のある金融インフラ」へ移るという方向性は、かなり納得感があります。個人的には、Bakktがようやく自分の勝ち筋を探しにいっている感じがして、ちょっと面白いなと思いました。
参考: Bakkt’s Revenue Falls 77% in Q1 as Stablecoin Pivot Takes Shape