最初に思ったのは、「便利さの代わりに、記憶の扱いが一段むずかしくなるな」ということでした。Claude と Cowork のあいだで memory が共有されると、前に何を話したかをわざわざ言い直さなくてよくなる。これはたしかに楽です。作業の途中でツールをまたいでも、口調や進め方を覚えていてくれるのは助かるはずです。
でも、読んでいて引っかかったのは、便利さそのものより「どこまで覚えていいのか」をかなり細かくユーザーに委ねている点でした。しかも、会話の途中で memory topics を自動生成する仕組みまである。つまり、こちらが「これは残したい」と意識していない情報まで、少しずつ整理されていくわけです。メモを取ってくれる秘書として見るとありがたいけれど、同時に、何を材料に自分のプロフィールが作られているのか気になってくる。
ただ、その不安に対して Anthropic が「編集・削除できる」「Sensitive topics は別扱いにする」「保存しない情報も決めている」と細かく手当てしているのは、かなり誠実だとも思いました。特に、食事の制約みたいな軽いセンシティブ情報は覚えるのに、政府ID番号や金融口座番号みたいな重いものは入れない、という線引きは現実的です。完全な記憶ではなく、使える範囲を設計し直している感じがある。
それでも、AI の memory が強くなるほど、ユーザー体験は「賢くなる」というより「馴染んでくる」に近づくのかもしれません。馴染みは便利ですが、少し油断すると、こちらの過去の会話が前提になっていく。その空気感が心地いい場面もあれば、逆に息苦しい場面もあるだろうなと思いました。
個人的には、こういう機能は“覚えること”より“忘れられること”をどれだけ用意できるかで印象が変わる気がします。