PaPoo
cover
technews
Author
technews
世界の技術ニュースをリアルタイムでキャッチし、日本語でわかりやすく発信。AI・半導体・スタートアップから規制動向まで、グローバルテックシーンの「今」をお届けします。

AnthropicとOpenAIは「ちゃんと儲かるAI」にたどり着いたのか

キーポイント

この記事の見どころ

Simon Willisonの記事は、単なる「AIすごいね」ではありません。
むしろ焦点はかなり現実的で、​**“このAIブーム、ちゃんとお金になるの?”** という話です。

著者の答えはかなりはっきりしています。
なってきた。しかも、いちばん儲かる形で。​
その根拠として挙げられているのが、AnthropicのClaude Code、OpenAIのCodexといったcoding agentの急成長です。

これ、地味に見えてかなり重要です。
なぜなら、ChatGPTのような一般向けサービスは爆発的に普及したものの、​ユーザー数のわりに売上化しにくいという課題があったからです。
でも、コードを書くAIは話が別。使えば使うほどトークン(AIが処理する文字量)が増え、請求も増える。企業にとっては痛い出費でも、AI企業にとっては売上になります。商売としては、かなりわかりやすい。

まずPMFって何?

PMFは product-market fit の略で、ざっくり言うと
​「この製品、世の中が待ってたやつだ」​ という状態です。

スタートアップ界隈でよく出てくる言葉ですが、重要なのは「作ったけど誰も使わない」状態を抜け出したかどうか。
著者はAnthropicとOpenAIについて、いままさにこの状態に入ったのではないか、と見ています。

個人的にも、この見方はかなり筋がいいと思います。
AIは長らく「すごいけど、どう儲けるの?」が付きまとっていました。
でも coding agent は、少なくとも企業の開発現場では**“あれば便利”ではなく“ないと困る”に近づきつつある**。ここが大きい。

個人ユーザーは「お得」でも、企業はそうではない

記事の前半で面白いのが、著者自身の体験です。

彼はAnthropicの**$100/月のMaxプランと、OpenAIの$100/月のProプラン**を使っているそうです。
そして、直近30日でAPI課金に換算すると、

合計で $2,180.16 だったとのこと。
つまり、​月200ドルで2,180ドル分くらい使えていたわけです。かなり得。

ただし、ここで重要なのは、​個人向けサブスクはむしろ割安すぎるという点。
著者は当初、企業も似たような割引を受けているはずだと思っていたそうですが、実際には違った。

Anthropicはエンタープライズ契約を、以前の「1席あたり十分な利用量込み」的な設計から、​**$20/seat/月 + 利用分はAPI課金へ寄せたとされています。
OpenAIも同様に、2026年4月にCodexの価格体系を
メッセージ単位からAPIトークン単位へ**変更しました。

ここで起きているのは、かなり露骨に言えば、
“企業向けの大幅ディスカウントをやめて、ちゃんと使った分だけ払ってもらう”
という動きです。

これ、ユーザー目線では「高くなったなあ」ですが、AI企業目線では「ようやく正規料金で売れるようになった」とも言えます。
ビジネスとしてはそりゃ強い。

なぜ今なのか? 答えは coding agents

著者の核心はここです。

ChatGPTはめちゃくちゃ有名で、2023年には史上最速級で普及した消費者向けアプリになりました。
でも、​人気=収益ではありませんでした。
無料ユーザーも多く、月10〜20ドルのサブスクだけでは、巨大なGPUやデータセンター費用を回収するのは簡単ではない。

そこに現れたのが coding agents。
これは、AIに「コードを書いて」「修正して」「実行して」「次を考えて」と頼めるタイプのツールです。
しかも、単なるチャットではなく、​仕事の流れの中に組み込まれる
つまり、使われる頻度も単価も高い。

著者は、これが「本当に儲かる形のPMF」だと見ています。
私もかなり同意です。
生成AIの世界で、一般消費者向けの“バズ”より、​**業務に深く刺さる“地味で高単価な用途”**のほうがはるかに強い、という話ですね。

企業は実際にお金を払っている

記事では、OpenAIとAnthropicの求人状況も証拠として挙げられています。

つまり、両社とも企業向け営業とサポートにかなり力を入れている
これが面白いのは、AI企業なのに、実際には人間の営業・導入支援・契約管理がすごく重要だという点です。

AIが人間の仕事を置き換えるどころか、​AIを売るために人間が大量に必要になっている。
このあたり、かなり皮肉が効いていて好きです。
「未来っぽい技術なのに、売り方は昔ながらに泥臭い」という感じがします。

「AIコストが高すぎる」という話は本当か?

最近は「AIを使いすぎて、企業の予算が吹き飛んでいる」というニュースもよく見ます。
著者はそれらをかなり慎重に見ています。

例として出てくるのが Uber の話です。
ある報道では、UberのCTOが「2026年のAI予算を数か月で使い切った」とされました。
でも著者は、Claude Codeが本格的に良くなったのが2025年11月以降なので、​2025年に立てた予算が2026年の需要を読み切れないのは当然では?​ と見ています。

さらに、UberのCOOの発言が切り取られて、センセーショナルな見出しになっている点も指摘しています。
要するに、
“AIで大変なことが起きている”という話は盛られがち
という見方です。

これはかなり大事な視点だと思います。
新技術は、成功も失敗も雑に語られやすい。
でも実際には、「使いすぎて困る」は、むしろ需要がある証拠でもあります。

MicrosoftがClaude Codeを減らす話も、実は同じ流れかもしれない

もうひとつの話題が、MicrosoftがClaude Codeのライセンスを減らしているという件です。
ただ著者は、これも単純な“撤退”ではなく、​自社のCopilot CLIを使わせたい・年度末の予算調整もあるといった普通の企業行動の範囲ではないか、と見ています。

ここでもポイントは同じで、
企業はAIを本気で使っているからこそ、コストに敏感になる
ということです。

「高いからやめる」のではなく、
「高いけど、効果があるから続ける。ただしコスト最適化はする」
という動き。
これ、まさに成熟市場の動きなんですよね。熱狂だけの段階から、一気に現実の予算の話になっている。

AI企業は、さらに大きな計算資源を必要としている

記事の後半では、AIラボの裏側のコストにも触れています。
OpenAIやAnthropicは、モデルの学習(training)だけでなく、利用時の推論(inference)にも莫大なお金を使っている。

著者が注目するのは、SpaceXのS-1書類に出てきた、Anthropicとの月12.5億ドル規模のクラウド契約です。
これはかなり衝撃的な数字です。
月12.5億ドルですよ。普通の感覚だと桁が大きすぎて、もはや別世界。

著者は、Anthropicがこれを「Claude CodeやAPIの利用上限を増やすため」と説明している点から、これはモデル学習ではなく推論用の計算資源だろうと見ています。
つまり、ユーザーが使えば使うほど、裏で膨大な計算が必要になる。

このあたりを見ると、AI企業のビジネスは本当に
“売るときも高い、使われるともっと高い”
という構造なんだなと実感します。
派手な魔法というより、巨大なインフラ産業ですね。

2026年4月は「収益の転換点」だったのでは

著者は、2025年11月を「技術的な転換点」と呼び、GPT-5.1やOpus 4.5以降で agent が本当に実用的になったと見ています。
そして2026年4月は、その次の段階、つまり収益面の転換点だったと考えています。

要するに、

という流れです。

この見立ては、かなり説得力があります。
技術が使えるようになるだけでは業界は儲からない。
でも、使えるようになった先で、企業が本気で予算をつけ始めると、一気に景色が変わる。
今まさにその瞬間なのかもしれません。

まとめ

この記事は、AnthropicとOpenAIが単に人気企業になった、という話ではありません。
著者が言いたいのは、​**“AIが初めて、きちんと高単価で売れる商品になった”** ということだと思います。

個人的には、これはAI業界のかなり重要な節目だと感じます。
チャットで遊ぶ時代から、仕事のど真ん中で使う時代へ。
しかもその主戦場は、いまのところ「コードを書く」「業務を自動化する」といった、地味だけど超重要な領域です。

派手な未来予想より、こういう地に足のついた転換のほうが、実はずっと強い。
Simon Willisonの記事は、そのことをかなり鮮やかに切り取っていると思います。


参考: I think Anthropic and OpenAI have found product-market fit

同じ著者の記事