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ロサンゼルスの「今ある建物」だけを積み上げた地図が見せるもの

ロサンゼルスの街を、建物ごとにひとつの箱として描き、その箱を「建てられた年」に沿って並べた可視化が公開された。見えてくるのは、都市の成長史そのものというより、いま現存している建物だけで作った“生き残りの街”だ。取り壊された建物は含まれないので、過去の都市の完全な再現ではないが、その偏りがかえって都市の時間の層をくっきり見せる。ふだんは意識しない「何が残り、何が消えたのか」を、直感的に考えさせる作品になっている。

1880年からの「生き残ったロサンゼルス」を箱で並べる

元記事は、ロサンゼルス市内に今立っている建物をすべて、1棟につき1つの箱として表現したインタラクティブな地図を紹介している。箱は建物の輪郭や高さを反映しており、建てられた年ごとに出現する。つまり、年を追うと都市に建物が少しずつ積み上がっていく様子が見える仕組みだ。説明文では、これは「The surviving city, 1880 to now」とされていて、いま残っている建物だけで構成したロサンゼルスだと明言している。途中で壊された建物は入っていないので、「当時の街並み」そのものではなく、現在まで生き残った建物が作る都市の断面図というわけだ。

画面には「Decade built」と「Height」という軸があり、年代と高さの関係を見られるようになっている。表示上は「1 story median 16 ft tallest」といった高さの目安も示され、建物のボリューム感が把握しやすい。操作はドラッグで視点を動かし、右ドラッグや⌃-dragで傾ける形式だ。地図のベースには LARIAC 2020 の building outlines が使われ、LA County Assessor の roll heights が参照されている。ただし、ズームアウトすると高さが誇張されると注記されているので、見た目の迫力だけで実際のスケールを読み違えないようにする必要がある。

元記事の面白さは、派手な統計を並べることではなく、都市の履歴を「残存物」だけで見せている点にある。1880年のところには「0 of today’s buildings already built」とあり、今の街の大半が後の時代に建ったことがわかる。そこから先、年を進めるたびに建物が増え、ロサンゼルスの街がいつどの程度のペースで厚みを増してきたかが、数字より先に視覚で伝わる。単なる年表でもなく、単なる地図でもない。建物一つひとつの存在感を保ったまま、都市の時間を立体化した作品だ。

取り壊された建物が消えると、都市史の見え方も変わる

この可視化でまず印象に残るのは、「都市を見ているつもりで、実は残ったものしか見ていない」という割り切りだと思う。普通、街の歴史を語るときは、建てられたものと壊されたものを合わせて考える。ところが元記事の地図は、現在存在する建物だけを使っている。これは欠点でもあるが、同時に強い編集でもある。残った建物だけを並べると、都市の記憶はかなり別の形で立ち上がる。壊されたものは痕跡すらないから、私たちは「今ある街」がどれだけ例外的な積み重ねの結果なのかを思い知らされる。都市史は、保存されたものの勝者総取りの記録でもあるわけだ。

ロサンゼルスらしさは、高さより「広がり」に出ている

この作品がロサンゼルスを題材にしているのも納得感がある。高層ビルの密度で圧倒する街というより、低層の建物が広く散らばり、その上に時代ごとの層が乗っている都市だからだ。記事中にある「1 story median 16 ft tallest」という表示が象徴的で、上へ上へというより、建物の数が増え、面として街が厚くなっていく感じが強い。ニューヨークのように縦の競争を眺める可視化とは違い、ここでは横方向の拡張と世代交代が主役になる。だからこそ、建物の高さよりも「いつ建てられたか」の方が都市理解に効いてくる。ロサンゼルスの空間感覚を、かなり正直に表した見せ方だと思う。

こういう地図は、保存か再開発かの議論にも刺さる

元記事は政策論争を直接扱っていないが、この種の可視化は保存と再開発の話に静かに効いてくる。古い建物がどれだけ残っているかを見せるだけで、都市の更新は抽象論ではなくなるからだ。新しい建物を足すことが成長だとしても、そのたびに何が消えたのかは地図上から消えてしまう。逆に、残った建物が多い場所は、それだけで都市の記憶の厚みを持つ。ロサンゼルスのように開発圧力の強い都市では、こうした“残存の偏り”が街の個性を決める場面も多いはずだ。だからこの可視化は、単なる見た目の面白さを超えて、都市をどこまで更新してよいのかという感覚を、少しだけ具体的にしてくれる。

データ可視化としては、精密さより「見え方の納得感」が勝っている

LARIAC 2020 の建物輪郭や County Assessor の高さ情報を使っているとはいえ、元記事はあくまで「見え方」を優先している。高さはズームアウトで誇張されると書かれているし、地図そのものも、厳密な測量図というより都市の年輪を感じさせる装置に近い。私はここが重要だと思う。データ可視化は、必ずしも正確な数表をそのまま立体化した方がよいわけではない。見る人が「ああ、こういう街なんだ」と理解できる形に変換して初めて、情報は届く。この記事の作品は、その線引きがうまい。事実を雑に盛るのではなく、何を見せるべきかをかなり明確に選んでいる。だから数字の正確さと視覚の迫力が、きちんと両立しているように感じる。


参考: Every building in Los Angeles

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