Microsoftが今回オープンソース化したのは、「これまでに発見された最古のDOSソースコード」とされる資料です。
しかもこれ、ただの古いMS-DOSではありません。MS-DOSという名前が付く前の、86-DOS時代のソースコードだというのがポイントです。
公開された内容には、たとえば次のようなものが含まれます。
ここでいう kernel は、OSのいちばん中心にある部分のことです。
車で言えばエンジンのようなもの、と考えるとわかりやすいと思います。
今の人にはMS-DOSのほうがまだ聞き覚えがあるかもしれませんが、その前に86-DOSというOSがありました。

ざっくり流れを整理すると、こうです。
つまり今回の公開は、あのMS-DOSの“前世代”をのぞけるという話です。
いやこれ、歴史ファンや古いPC好きにはかなり刺さる出来事ではないでしょうか。OSの進化って、完成品だけ見ても面白いんですが、こうして“前の姿”が見えると一気に立体的になります。
このソースコードは、かなり古いので最初からデジタル保存されていたわけではないそうです。
そこがまたすごいところで、今回は DOS Disassembly Group と呼ばれる歴史保存チームが、紙の印刷物から手作業でコードを転記・スキャンしました。
しかも、昔の印字は現在のOCRソフトでも読み取りが難しかったとのこと。
OCRは、画像や紙を読んで文字に変換する技術ですが、古いフォント、かすれ、レイアウト崩れがあると一気に精度が落ちます。
なので、今回はかなり地道な復元作業が必要だったわけです。こういうのは本当に、技術というより執念に近いと思います。尊い。
意外かもしれませんが、Microsoftはこれまでもいくつかの古いソフトを公開しています。
たとえば過去には、

をオープンソース化しています。
さらに、Zork とその続編、Microsoft 3D Movie Maker なども公開してきました。
古い MS-DOS Editor の現代版オープンソースもありますが、これは昔の EDIT.COM そのものではない、という点は注意です。
とはいえ、こうした取り組みは「昔のソフトをただ懐かしむ」だけでなく、技術史を保存するという意味でも価値があると思います。
個人的に一番面白いのは、OSの歴史が「完成された製品」ではなく、試行錯誤の積み重ねとして見えてくることです。
今のソフトウェアって、完成品として配られることが多いですよね。
でも実際には、今回のような初期コードの段階では、
といった、かなり生々しい姿があります。
そういう“未完成の匂い”まで見えるのが、公開ソースの面白さだと思います。

Ars Technicaによると、86-DOSの最初期の既知バージョン自体は、2年前にすでに再発見されて Internet Archive にアップロードされていました。
つまり今回の公開は、「最古の断片を初めて見つけた」というより、その歴史をさらに深く掘り下げた動きと言えます。
古いソフトウェアの世界では、失われたと思われていたものが、ある日ふっと出てくることがあります。
それがまたロマンなんですよね。デジタルなのに、まるで考古学みたいです。
今回のMicrosoftの公開は、単なる懐古ネタではありません。
PCの原点にあるOSが、どんな形で生まれ、どうMS-DOSへつながったのかをたどれる、かなり重要な資料公開です。
技術史に興味がある人はもちろん、普段はOSなんて意識しない人でも、「今ふつうに使っているPCの土台って、こんな昔の紙資料から来ているのか」と思うと、ちょっと見え方が変わるはずです。
私はこういう話、かなり好きです。古いコードって、ただの文字列じゃなくて、時代そのものの化石みたいに感じるからです。
参考: Microsoft open-sources "the earliest DOS source code discovered to date"