毎回同じことを口で説明しているなら、その時点でもう負けである。Claude Code に仕事を頼むたびに「このフォルダは何のためのものか」「どのファイルを触っていいか」「何を勝手に変えないでほしいか」を打ち直していると、コンテキストも時間もじわじわ溶ける。そこで使うのが CLAUDE.md だ。別名でプロジェクトメモリとも呼べる。要するに、プロジェクト固有の作法を置いておくメモである。
これをちゃんと置いておくと、毎回の依頼が短くなる。しかも短くなるのは言葉だけではない。Claude Code が前提を取り違えにくくなるので、手戻りも減る。筆者は最初、都度の指示だけで回そうとして、同じ注意を書いては消し、また書いては消しを繰り返した。結果、依頼文が肥大化して、肝心の作業指示が埋もれた。あれはだるい。CLAUDE.md はその無駄を消すための置き場だ。
やることは単純だ。リポジトリのルートに CLAUDE.md を置き、そこに「このプロジェクトでは何を大事にするか」「どう編集するか」を書く。Claude Code は作業中にその内容を参照するので、毎回プロンプトに長文で貼らなくていい。
たとえば、Web アプリの開発ならこんな具合だ。
# Project notes
- 返答は日本語で書く
- 既存の命名規則を優先する
- 変更は必要最小限にする
- 既存のテストがあるなら先に確認してから編集する
- UI 文言を変えるときは、英語原文も同時に更新する
- 不明点があれば勝手に実装せず、まず質問する
ファイル整理のような用途でも同じだ。たとえば、写真や書類を整理する作業なら、こういうメモが効く。
- ファイル名は YYYY-MM-DD_内容 の形にそろえる
- 元ファイルは削除せず、まず移動で整理する
- 重複候補は削除せず、一覧にして確認する
- 個人情報を含むファイルは内容を要約しない
- 迷ったら勝手に決めず、保留にする
非エンジニアの使い方でも、ここが本丸だ。弁護士が案件ごとにディレクトリを掘って書面を作るなら、「案件名の付け方」「提出版と下書きの分け方」「相手方名の扱い」を書いておく。経理資料の整理なら、「月次ごとに分ける」「PDF と Excel を混ぜない」「原本は触らない」と決めておく。Claude Code は、毎回の雑談を減らしても仕事はできる。むしろ、そのほうが安定する。
書き方にはコツがある。まず、長文の説明書にしないことだ。CLAUDE.md は憲法みたいなものではあるが、細則まで全部詰め込むと読みにくくなる。大事なのは「何を守るか」が一目で分かることだ。冗長な背景説明より、実務で効くルールを置くほうがいい。
次に、曖昧語を避ける。たとえば「いい感じに」「適切に」「必要に応じて」は、便利そうでいて役に立たない。Claude Code には、できるだけ判断基準を渡す。
- 変更は1ファイルずつ確認する
- 既存の関数名は変更しない
- 100 行を超える差分になるなら、先に方針を説明する
- 破壊的な変更は、事前に理由を書いてから行う
この手のルールは、地味だが効く。筆者は以前、差分が大きくなってから「そこじゃない」と止める羽目になったことがある。Claude Code 側は善意でまとめて直していたのに、こちらの暗黙ルールを知らなかったせいだ。CLAUDE.md に「小さく直す」「勝手に広げない」と書いておけば、その事故はかなり減る。
置き場所も大事だ。基本はプロジェクトのルートに置く。そうすると、そのリポジトリで作業するたびに同じ方針を引き継ぎやすい。案件単位、フォルダ単位で分けたいなら、作業の境界に合わせてメモを分ければいい。巨大なモノリシックな一枚紙にするより、実際の運用に合わせて薄く保つほうが長持ちする。
ただし、入れすぎは禁物である。CLAUDE.md に「やること」を全部書きたくなるが、それをやると逆にノイズになる。毎回読むべきものは、せいぜい次の三つだ。プロジェクトの目的、触ってよい範囲、変更加減の基準。これだけで十分な場面は多い。細かな依頼は、その都度のプロンプトで足せばいい。
もう一つ、ありがちな落とし穴がある。CLAUDE.md を置いたからといって、何も言わなくてよくなるわけではない。あくまで「毎回の前提」を減らす道具だ。今日だけ例外があるなら、その場で明示する必要がある。たとえば「今回はテストは触らず、文言修正だけ」「今回は削除禁止、追加のみ」といった一時的な制約は、依頼文に書くべきだ。恒久ルールと臨時ルールを混ぜると、あとで自分が困る。
実務では、こんな分け方が扱いやすい。
# 恒久ルール
- 日本語で返答する
- 変更は最小限にする
- 既存の構成を尊重する
# この案件だけの注意
- 2024年分の資料は触らない
- 送付済みファイルは改名しない
- 下書きは shared/drafts に置く
こうしておくと、後から見ても意味が崩れにくい。案件が終わったら、一時ルールのほうだけ消せばいい。恒久ルールは残るので、次の仕事でも効く。
一歩進めるなら、CLAUDE.md を「作業の癖を記録する場所」として育てるといい。たとえば、よく出る失敗を書いておく。
- 似た名前のファイルが多いので、削除前に一覧を出す
- Markdown の見出し構造は崩さない
- 日本語文書では箇条書きを増やしすぎない
- 既存の画像を差し替える場合は、サイズも確認する
これは単なるメモではない。Claude Code にとっての地図だ。地図があると、毎回の説明は短くなるし、作業の筋もぶれにくい。人間側の口頭指示が短くなるのも地味に大きい。依頼するたびに頭を使わなくて済むからだ。
最後に、CLAUDE.md は「一度書けば終わり」ではない。実際に使ってみて、毎回言い直していることがあれば追記する。逆に、誰も守っていないルールは消す。生きたメモにしておくのが正解である。放置した古い作法は、だいたい邪魔になる。
もし今、毎回同じ説明を繰り返しているなら、先に CLAUDE.md を整えたほうがいい。Claude Code を賢く使うコツは、長い依頼文を書くことではない。繰り返しをファイルに押し込んで、毎回の仕事を軽くすることだ。