長いメモを残して「あとで Claude Code が全部わかるはず」と思うと、だいたい逆に詰まる。
ここで効くのは、短い作業メモを残し、決定事項のみを書き、余計な経緯は落としていくやり方だ。要するに、コンテキスト圧縮である。Claude Code に渡す情報は、議事録ではない。次の一手を迷わないための手がかりだけでいい。
筆者は最初、ここを盛大に外した。要件をそのままベタ書きして、しかも途中の試行錯誤まで全部残したら、Claude Code が「どれが現在の方針か」を拾いきれず、無駄に広く触り始めた。修正差分が増え、見なくていい古い方針まで引きずる。あれは気持ちいい失敗だった。メモは増やすほど賢くなるわけではなく、むしろ鈍ることがある。
やることは単純だ。残すのは「何をやるか」「何をやらないか」「もう決めた制約」だけにする。たとえば、文書作成でもファイル整理でも、次のような短いメモで足りる。
目的: 契約書の下書きを整える
決定事項:
- 口調はやや硬め
- 見出しは3つ
- 参考資料Aは使う
- 参考資料Bは使わない
未決定:
- 署名欄の表記
これだけで十分だ。
「なぜそうなったか」は、Claude Code が今の作業を進めるうえでは大抵いらない。必要なら後で聞かれたときに足せばいい。先に全部入れると、かえってノイズになる。
実際に使うときは、メモの置き場所も大事だ。Claude Code に毎回長文を貼るより、作業ディレクトリの中に短いメモファイルを置いて、必要なときだけ参照させるほうが扱いやすい。たとえばこうだ。
work/
memo.txt
draft/
assets/
memo.txt
---------
目的: 請求書PDFを整理する
決定事項:
- 2023年以前は archive/ に移動
- 重複は残すより削除優先
- ファイル名は YYYY-MM-DD_案件名_種類.pdf
例外:
- 進行中の案件は移動しない
このくらい短いと、Claude Code にとっても読みやすい。人間が見返しても迷わない。
逆に、ここへ「過去にどういう経緯でそのルールができたか」「例外を採用した会話の全文」まで書くと、メモが説明書になる。説明書は読むだけで疲れるし、作業のたびに重い。Claude Code に持たせるものではない。
注意したいのは、短くすることと、雑にすることは別だという点だ。短いけれど、曖昧ではだめだ。たとえば「いい感じに整理して」は最悪だ。これでは判断材料がない。
代わりに、判断が分かれる場所だけ決めておく。
決定事項:
- 同名ファイルは新しい版を残す
- 画像は削除せず images/ に集約
- 空フォルダは削除
- 迷ったら移動せず保留
こう書けば、Claude Code は勝手な解釈をしにくい。人間も「何を優先するか」を再確認できる。
筆者はこの書き方に変えてから、修正の手戻りがかなり減った。特に、途中で方針が変わりやすい整理作業では効く。長文メモだと、古い方針が静かに残っていて、あとから「なんでこれを消したんだっけ」となる。短いメモなら、その事故が起きにくい。
もうひとつ大事なのは、メモに“作業ログ”を混ぜないことだ。
「試しにこうしたが失敗した」「こっちの方が速そうだった」みたいな途中経過は、Claude Code に毎回抱えさせる必要がない。残すのは、最終的に採用した決定だけでいい。途中の迷いまで載せると、コンテキストが膨らむ。すると、エージェントは過去の迷路を一緒に歩くはめになる。
だから、メモは次の順で削るといい。
まず、同じ意味の文をまとめる。
次に、理由を消す。
最後に、今の作業に関係ない制約を落とす。
悪い例:
- 以前はA案も検討したが、互換性の都合でB案にした
- チーム内でCという意見もあったが、最終的にはDを採用した
- 先週の会議ではEが話題になった
よい例:
- 採用: B案
- 不採用: A案
- 制約: 互換性を優先
この変換をやるだけで、メモはかなり軽くなる。
そして、軽いメモは更新しやすい。更新しやすいメモだけが生き残る。ここが地味に重要だ。重いメモは、書いた瞬間にもう古くなる。誰も直したがらないからだ。
非エンジニアの作業でも同じである。たとえば、案件ごとにフォルダを分けて文書を整える人なら、メモに書くのは「案件名」「保存先」「使う書式」「捨てていい重複」の4つくらいで足りる。
「なぜその案件ではその表現にしたか」まで残す必要は薄い。文書の下書きでも、要るのは再現可能な条件だけだ。
案件Aメモ
- 保存先: /案件A/提出用
- 書式: A4、横書き
- 用語: 顧客向けは平易な言い回し
- 版管理: final は1つだけ
これなら、あとでClaude Code に「この条件で新しい版を作って」と頼める。
長文の経緯が要るのは、せいぜい本当に意思決定の監査が必要な場面だけだ。日々の作業では、むしろ邪魔になることが多い。
最後に、迷ったらこの基準で切るといい。
その一文がなくても、次の作業を始められるなら削っていい。
その一文がないと、今の判断が変わるなら残す。
それだけだ。
Claude Code は万能の記憶装置ではない。むしろ、手元の情報が少ないほど筋が通ることがある。短い作業メモ、決定事項のみ、コンテキスト圧縮。この3つを意識しておくと、Claude Code はずっと扱いやすくなる。長い説明を貯める癖を捨てるほうが、結果は速い。