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ジェンスン・フアンが「知っていたらNVIDIAは始めなかった」と語る理由

キーポイント

「成功したから美談」ではない、という話

NVIDIAといえば、いまやAIブームのど真ん中にいる巨大企業です。GPUの会社というイメージを超えて、今では「AI時代のインフラ企業」と言ってもいい存在になりました。市場価値は5.3兆ドルと記事では紹介されていて、これはもう規模感がちょっと現実離れしています。

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でも、今回のBusiness Insiderの記事で面白いのは、ジェンスン・フアンがその成功を誇る話ではなく、むしろ​「あの苦しみを知っていたら、同じ道は選ばない」​と正直に言っているところです。
これ、かなり率直です。経営者の発言としては、むしろ珍しいくらいだと思います。

彼はポッドキャスト「How I Built This」で、NVIDIAを世界最大級の半導体企業に育てるまでに味わった、長年のプレッシャー、屈辱、ほぼ倒産しそうな危機、そして個人的な犠牲を振り返りました。

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何がそんなに大変だったのか

フアンの話を読むと、NVIDIAの道のりは「ひらめきで大成功」みたいな単純な話ではありません。

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たとえば、こんな局面がありました。

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とくに印象的なのは、2008年の金融危機の話です。NVIDIAの株価は2007年末の高値から約85%も下落したと記事は伝えています。
85%というのは、かなりえげつない下がり方です。普通なら「終わった」と思われてもおかしくないレベルです。

しかもその間、NVIDIAはCUDAというソフトウェア基盤に投資を続けていました。CUDAは簡単にいうと、GPUをゲーム用途だけでなく、計算やAIにも使いやすくするための土台です。
今のAIではこの土台が大きな意味を持っていますが、当時はその価値が理解されず、かなり批判されていたわけです。

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ここが面白いところで、​未来の勝ち筋って、成功してから見るとすごく正しく見えるけど、当時はただの無謀に見えるんですよね。
個人的には、これがスタートアップや技術投資のいちばん難しいところだと思います。

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1996年には本当に会社が吹き飛びかけていた

記事では、NVIDIAが1996年にSega向けのグラフィックチップを納品できず、ほぼ倒産しかけた話も出ています。
そのときSegaが500万ドルを投資し、NVIDIAはなんとか延命できたそうです。

この話、今のNVIDIAしか知らない人にはかなり意外ではないでしょうか。
「AIの覇者」が、昔はゲーム機向けチップの失敗で会社ごと危なかった。成功企業の歴史って、だいたい後から見ると一直線に見えるんですが、実際は崖っぷちの連続なんですよね。

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フアン自身も、起業家の現実として「あなたは会社を畳むことになるかもしれない。人を解雇しなければならない」と話しています。
このあたりは、夢だけでは起業できないという、かなり生々しい現実です。

フアンはどうやって耐えたのか

彼の答えはシンプルで、でもなかなか真似できません。

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「昨日を忘れることに全力を注いだ」

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つまり、過去の失敗にずっと引きずられないようにした、ということです。
記事では、スポーツ選手が「前の1点を忘れろ」と教わる話になぞらえています。たしかに、失敗を毎回抱え込んでいたら、前に進めません。

この考え方は、かなり実用的だと思います。
もちろん「反省しなくていい」という意味ではありません。反省は必要です。でも、反省と自己否定をごちゃまぜにすると、人は動けなくなる。フアンはその境界をうまく理解していたのかもしれません。

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ただし、成功には“見えない支払い”がある

記事でもう一つ重要なのが、NVIDIAの成功には個人的な犠牲があったことです。

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フアンは、スタンフォード大学の大学院に通いながら働いていた時期に、子どもの空手大会を何度も見逃したと語っています。
このエピソードは地味ですが、かなり重いです。会社が伸びるとき、たいてい創業者の生活は普通ではいられません。家族との時間、健康、心の余裕、そういうものを削っていることが多いからです。

彼が妻について「すべてをやってくれた」と感謝しているのも印象的でした。
成功したCEOの話は、どうしても本人の才能や執念だけで語られがちですが、実際は周囲の支えが大きい。これは忘れられやすいけれど、かなり大事なポイントだと思います。

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いまのNVIDIAを見ていると、なおさら考えさせられる

NVIDIAはいま、AIブームの中心にいます。
でも、この会社がここまで来るのに、何度も「終わった」と思われる瞬間を越えてきたと知ると、見え方が変わります。

成功企業って、完成品のように見えるけれど、実際は壊れかけの状態を何度も修理しながら進んでいるんですよね。
そして、その修理の最中は、だいたい誰にも評価されない。むしろ馬鹿にされることすらある。フアンの「屈辱」という言葉は、そこをかなり正直に言っていると思います。

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私は、この話は単なる「苦労話」ではなく、​技術企業の成長はロマンよりも執念と忍耐でできているという現実をよく表していると感じました。
AI時代の勝者に見えるNVIDIAも、最初から勝つことが約束されていたわけではなかった。むしろ、いつ潰れてもおかしくない会社だった。その事実のほうが、今のNVIDIAをより面白くしているのではないでしょうか。

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まとめると


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参考: Jensen Huang says he wouldn't start Nvidia again if he knew the pain ahead

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