案件フォルダが散らかっていると、書面づくりはただの手作業地獄になる。士業でも書類整理でも同じで、探す時間が長いほど、肝心の中身を考える時間が削れる。
Claude Code はコードを書く道具だと思われがちだが、実は「フォルダを掘って、関連ファイルを拾い、下書きを作る」作業にかなり向いている。弁護士の案件管理みたいな使い方でも効く。やることは単純で、案件ごとにディレクトリを切り、そこに集めた PDF、メモ、メール書き出し、下書きテキストをまとめて読ませる。すると、論点の整理や書面のたたき台づくりが一気に楽になる。
ただし、雑に使うとすぐ詰まる。フォルダが深すぎる、指示が曖昧、関係ない資料まで全部入れる。この三つで平気で手戻りする。筆者も最初は「案件名だけ投げれば何とかなる」と思って失敗した。実際には、何を優先して読ませるかを先に決めないと、出てくる下書きがぼんやりする。これはかなり重要だ。
まず、案件の単位で作業用フォルダを切る。たとえばこうだ。
案件A/
00_依頼内容/
10_証拠/
20_相手方書面/
30_メモ/
90_下書き/
番号を付けるのは見た目のためではない。Claude Code に「まず 00 と 10 を見ろ」と指示しやすくなるからだ。人間が迷わない構造は、そのまま AI の迷いも減らす。深いフォルダ名を凝るより、浅くて機械的な方が強い。
次に、書面を作る前に「何を材料にするか」を1枚にまとめる。ここを飛ばすと、Claude Code は正しい資料を読んでいても、論点の重みづけを外しやすい。たとえば、こんなメモを置いておく。
30_メモ/前提.txt
この案件で先に見たい点
- 相手方の主張のうち、事実認定に争いがある部分
- 証拠で裏づけられる部分
- 逆に、証拠が薄くて言い切らない方がいい部分
作りたい書面
- 内容証明の下書き
- 争点整理メモ
注意
- 断定しすぎない
- 日付の整合性を最優先
- 未確認の事実は「要確認」と残す
この「先に見たい点」が効く。何も言わずに「書面を作って」と頼むと、ただの要約文に寄る。書面は要約ではない。主張の順番があるし、言い切るところと言い切らないところがある。そこを先に渡しておくと、出力の質が上がる。
Claude Code への依頼は、こういう形にするといい。
このフォルダ内の資料を読んで、内容証明の下書きを作ってください。
優先して見るもの:
- 00_依頼内容/依頼メモ.txt
- 10_証拠/ 配下のPDFとテキスト
- 20_相手方書面/ 配下の書面
やってほしいこと:
- 時系列を整理する
- 事実と評価を分ける
- 未確認の点は断定しない
- 下書きは 90_下書き/ に txt で出す
書き方:
- 日本語
- 実務向け
- 余計な装飾は不要
大事なのは、「何をしてほしいか」を動詞で書くことだ。要約、整理、抜き出し、下書き作成。ここが曖昧だと、ただの説明文になる。実務では使えない。
ファイルが多いときは、最初から全部読ませない方がいい。先に一覧を作らせて、使うファイルを絞るのが楽だ。
この案件フォルダのファイル一覧を出して、書面作成に必要そうなものを3段階で分けてください。
- A: まず必ず読む
- B: あれば読む
- C: 今回は見送る
判断理由も一行で付けてください。
これで、不要な資料まで全部突っ込む事故を減らせる。Claude Code は広く読ませると賢く見えるが、実務ではだいたい冗長になる。特にPDFや長文メモが多い案件では、材料の選別こそが仕事になる。
注意したいのは、フォルダの中身を「最終成果物」と混ぜないことだ。下書き、証拠、メモ、提出版がごちゃ混ぜだと、どれが正なのか分からなくなる。筆者はこれで一度、修正版のつもりが古い下書きを参照してしまい、微妙に古い日付で戻したことがある。こういうのは地味に痛い。90_下書き は必ず作る。提出版は別フォルダに逃がす。名前で迷うなら、番号で殴るのが一番早い。
もうひとつ、ありがちな落とし穴がある。関連資料を増やしすぎると、肝心の論点が埋もれることだ。証拠の枚数が多い案件ほど、Claude Code は「全部読んだ感」を出すが、そこに安心するとだめだ。下書きの後は、必ず人間が事実関係を一つずつ確かめる。特に日付、当事者名、金額、引用文言は雑に流してはいけない。ここを取り違えると、書面全体が崩れる。
実務で使いやすくするなら、案件ごとにテンプレを固定しておくと強い。たとえば、毎回この3点だけは置く。
00_依頼内容/依頼メモ.txt
30_メモ/争点メモ.txt
90_下書き/
依頼メモには、依頼者の言い分、相手方の言い分、確定している事実、未確認の事実を分けて書く。争点メモには、今回の書面で勝ち筋にしたい部分だけを書く。これだけで、Claude Code が読む材料の順番がはっきりする。
少し進んだ使い方をするなら、書面の種類ごとに出力先を分けるといい。内容証明、準備書面、事実経過メモ、相手方への返信案を同じフォルダに放り込むと、あとで自分が困る。書面ごとに下書きの目的が違うからだ。用途が違う文書を同じ依頼で作らせると、文体も粒度もぶれる。
Claude Code は、情報を集める役と、下書きを作る役を分けると使いやすい。最初に「資料を拾って整理する」、次に「整理した材料から下書きを作る」。この二段階にするだけで、かなり安定する。いきなり完成品を求めない方がいい。
最後に一つだけはっきり言う。Claude Code は、散らかった案件フォルダを勝手に救ってくれる魔法ではない。案件の切り方、資料の置き方、指示の粒度がそのまま成果に出る。だが逆に言えば、そこさえ整えれば、書面のたたき台づくりはかなり軽くなる。弁護士みたいに案件単位で動く仕事ほど、この相性はいい。非エンジニアでも使えるし、書類整理の延長でそのまま導入できる。
まずは一件だけで試せばいい。フォルダを分け、要点メモを置き、必要な資料だけを読ませる。この流れが固まると、次からの書面作成はかなり楽になる。