長い資料をそのまま全部投げるのは、だいたい雑だ。Claude Code は長文でも扱えるが、だからといって「最初から最後まで一気に読んで、全部を一発で直してくれ」で済ませると、要点がぼける。途中で重要な条件を落としたり、修正の軸がぶれたりして、あとで手戻りになる。
ここで効くのが、章分けして渡す、あるいは分割投入だ。資料を見出し単位、章単位、用途単位で切り、順番に渡していく。これだけで、Claude Code が今どこを見ているのかがはっきりする。長い議事録、仕様書、契約書の下書き、マニュアル、散らかった手順書。全部に効く。非エンジニアでも同じだ。ファイル整理のルール文書や、社内向けの手順書を整えるときにもかなり使える。
筆者は最初、長文を丸ごと貼って「要約して、ついでに直して」と頼んでいた。結果は悪くないのに、肝心の制約が抜ける。後から「いや、そこは残すべきだった」と気づいて、もう一回やり直しになる。あれはだるい。章ごとに渡し始めてから、話が戻りにくくなった。
やり方は単純だ。まず資料を人間が読んで、章や役割で切る。次に、各章を別々に扱わせる。たとえば、先に全体方針を固め、その後で各章を要約・校正・再構成する。いきなり全体を完成させようとしない。Claude Code にも、こちらにも、順番が必要だ。
たとえば、文章の整理ならこんな渡し方でいい。
この資料は3章ある。
1章は背景説明
2章は手順
3章は注意事項
まず1章だけ読んで、要点を5行で整理して。
そのあと、2章と3章に進む前に、気になる点があれば先に挙げて。
修正までやらせるなら、章ごとに目的を分けるほうがいい。
第1章は要約だけ、第2章は表現を整える、第3章は誤解されやすい箇所を補強する。
全体を通して、用語の揺れがあれば指摘して。
ただし、まだ勝手に全文を書き直さないで。
この「まだ全部やるな」が大事だ。Claude Code は指示が雑だと、全体をそれっぽく整えてしまう。見た目はきれいでも、元資料の意図が薄まることがある。特に、法務、社内規程、運用手順みたいに、言い回しの差が効く文書では痛い。分割投入の目的は、情報を小さくすることだけじゃない。作業の順番を制御することでもある。
コードや設定ファイルでも同じだ。巨大なリポジトリ全体を見せて「バグを探して」と頼むより、まず対象のディレクトリ、次に関連しそうなファイル、最後に差分、という順で渡したほうが当たりやすい。Claude Code にも、人間と同じで、注目点が増えすぎると鈍る面がある。全部を同時に見せると、どれが本命なのかがぼける。
実務では、こう切ると扱いやすい。
- 章ごと
- 目的ごと
- ファイル種類ごと
- 作業フェーズごと
例:
1. 全体の見出しだけ確認
2. 第1章だけ要約
3. 用語の揺れを洗う
4. 最後に全文の整合性を見る
この順番にすると、後の章で出た判断を前の章に戻して反映しやすい。逆に、最初から全文を完成形にしようとすると、途中で見つけた問題を直すたびに、前提が崩れていく。筆者は一度、長い仕様書を一気に直させて、途中の定義変更が後半に効いていないまま終わらせたことがある。全文に目を通しているはずなのに、実際は「読んだつもり」になりやすい。分けて読むほうが、むしろ漏れにくい。
注意点もある。章分けは、ただバラバラに渡せばいいわけではない。つなぎ目の情報、たとえば用語定義や前章の結論は、必要なら毎回少し添える。ここをケチると、章ごとの答えは良くても全体でズレる。もう一つ、各章を渡すたびに毎回まったく同じことを聞かないことだ。要約、校正、リライト、整合性確認を同時に要求すると、また全部が散る。1回1目的で切るほうが強い。
実際の頼み方は、こういう形が使いやすい。
以下の章だけ見て、まず要点を抜いてください。
目的は要約です。校正や書き換えはまだしないでください。
--- 第2章ここから ---
...
--- 第2章ここまで ---
終わったら、この章で前提として必要になる用語だけ列挙してください。
文章の整形まで進めるなら、次の段階で頼む。
今の第2章について、社内向けの文書として読みやすく直してください。
ただし、意味の変化は入れないでください。
専門用語は残し、説明不足の箇所だけ補ってください。
ファイル整理やディスク削減で使うなら、考え方は同じだ。たとえば、フォルダ全体の中身を全部見せてから「不要なものを洗って」と言うより、まず種類別に分ける。画像、重複書類、古い書き出し、キャッシュ候補、みたいに切る。Claude Code は「この種類だけ見ればよい」と分かると、無駄な判断を減らせる。非エンジニアほど、この切り方の恩恵は大きい。全部を一度に説明しなくていいからだ。
要するに、長い資料は最初から一気読みさせるものではない。章ごとに渡して、役割を分けて、最後に全体を合わせる。これだけで、出力の精度も、こちらの確認のしやすさもかなり変わる。雑に全部投げる癖をやめるだけで、手戻りは目に見えて減る。