中国のデータセンター政策、かなり攻めています。
TNWの記事が取り上げているのは、北京が「グリーン電力をデータセンターに直接つなぎたい」と本気で考えている、という話です。正直、これはただの環境アピールではありません。AIブームで電力消費が跳ね上がるなか、今のままでは電力網が先に悲鳴を上げる。だから、発想そのものを変えにいっているわけです。

記事の舞台は、中国北西部の寧夏回族自治区、中衛市の郊外。砂漠の中に並ぶ太陽光パネルから、データセンター群へ専用の送電線を引く。しかも、その電気は公共の送電網を通らない。ここが肝です。ふつうは発電した電気がいったん電力網に入り、そこから各地へ配られます。でもこのプロジェクトは、発電所から計算機に「直送」する。かなり露骨なくらい、電源と消費先を一体化しています。
この仕組みが面白いのは、見た目の派手さよりも、狙いがかなり現実的なところです。中国は以前から「東のデータ、西の計算」という方針を進めています。ざっくり言うと、電力が豊富で土地も広い西部に、電力を食う計算機を置いてしまおう、という考え方です。AIの学習や推論はとにかく電気を食うので、都市部の高い電力に頼るより、太陽光と風力のある場所で回したほうが合理的だ、という発想ですね。

中衛のプロジェクトでは、中国国営のChina Datang Corpが500メガワット級の太陽光発電所を建設しました。記事によると、これは「データセンター群に直接電力を供給する中国初の大規模グリーン電力プロジェクト」とされています。すでに今年2月に直接供給を始め、5月には正式稼働したそうです。
さらに特徴的なのが、Datangの言う「dual-track structure」です。4本の110キロボルト送電線でデータセンターに電気を送り、足りない分は市場取引で補う。昼は太陽光、夜は風力、足りない谷間は蓄電池で埋める。教科書的に言えば再エネの弱点を組み合わせで潰す設計です。理屈はきれいですし、私はこういう“地味だけど筋のいい”設計、かなり好きです。
数字もかなり大きい。太陽光だけで年間およそ970ギガワット時を発電し、これはクラウド基盤の想定需要の約半分にあたるとのこと。しかもこれは序章で、1.5ギガワットの風力発電と蓄電池を組み合わせた第1期全体では、年間4.3テラワット時まで発電量が伸びる見込みです。データセンター側の年間消費予測は2.29テラワット時なので、計算上は余る。さらに第2期では総容量が4.6ギガワットに膨らむ計画だそうです。スケール感がすごい。
ただ、ここで「すごいね」で終わらないのが現実です。風力施設はまだ建設中で、全面的な系統接続は9月予定。つまり、今見えている成功は、まだかなり“途中経過”です。

中国がここまで急ぐ理由は明快です。AIの普及で計算需要が爆発している一方、中国政府は2030年までに排出量のピークを迎えたい。なのに、電力供給のかなりの部分はいまでも石炭に依存しています。そこで、2030年までにAIデータセンター部門の電力の約8割を再生可能エネルギーにしたい、というかなり高い目標を掲げているわけです。2023年時点では、その比率は約1割だったと記事は伝えています。差が大きすぎる。正直、目標としてはかなり野心的です。

とはいえ、再エネをデータセンターに直結すれば何でも解決、というほど世の中は甘くありません。太陽光は夜に発電しないし、風力も風次第です。電力の需要はコンピューターが相手なので、止まってくれません。だから蓄電池や市場取引が必要になるし、送電網の詰まりも問題になる。中国のグリーン電力目標は、過去にも電力網の制約にぶつかってきたと記事は指摘しています。ここはかなり重要で、理想の設計図と、実際に回るインフラのあいだには、いつも面倒くさい現実が挟まります。
なので、この中衛の案件は「すでに完成した成功例」というより、「本当にうまくいくのかを試す実証実験」に近いです。もし砂漠の太陽と風でデジタル需要を安定してさばけるなら、このモデルは他の地域にも広がるでしょう。逆に、送電の制約や発電の不安定さでつまずけば、立派な実験施設で終わる。記事の言い方を借りれば、9月に風車がつながったとき、初めて数字が“予測”から“結果”に変わります。

個人的には、この動きはかなり示唆的だと思います。AIの時代って、ソフトウェアの話ばかりが前に出がちですが、実際には電気と土地と送電線の話です。しかも、それはかなり泥くさい。中国はその泥くささを隠さず、むしろ国家戦略として押し出している。そこが面白い。
きれいごとだけではなく、「計算するには電気が要る。なら、電気のある場所に計算機を置く」という発想に、かなり強引にでも踏み込んでいる感じがあります。うまくいけば、AIインフラの作り方そのものを変えるかもしれません。失敗すれば、巨大な砂漠の展示物で終わる。どちらに転んでも、かなり見ものです。

参考: China wants its green power wired straight into the data centre