長い経緯メモを Claude Code に持たせると、だいたいろくなことにならない。読み返すだけでコンテキストを食い、肝心の判断材料が埋もれる。残すべきなのは、途中の雑談ではなく決定事項だ。短い作業メモ、あるいは決定事項の圧縮という発想に切り替えると、作業が急に軽くなる。
Claude Code は会話の流れを踏まえて動く。だからこそ、途中で「ここまで何を決めたか」を短く固定しておくと強い。逆に、経緯をだらだら積み上げると、あとから見返したときに自分でも迷うし、Claude Code も無駄に揺れる。筆者は最初、会議の議事録みたいなメモをそのまま貼っていたが、修正のたびに話が分散して、同じ説明を何度もやり直した。あれははっきり無駄だった。
たとえば、あるフォルダ整理を頼む場面を考える。
悪いメモはこうなる。
昨日の続きで、あの資料も入っていて、こっちのファイル名も少し変えていて、最初はPDF中心だったけど途中で画像も混ざって、クライアントの都合で表紙の扱いが変わって、たしか社内共有用と提出用で分ける話もあって……
これだと、何が決定で何がただの経緯か分からない。Claude Code にとっても、人間にとってもノイズだらけだ。
残すべきなのは、こういう形だ。
決定事項:
- 提出用フォルダと社内共有用フォルダは分ける
- 提出用はPDFのみ
- ファイル名は yyyy-mm-dd_案件名_内容 に統一
- 画像は提出用に入れない
- 旧版は archive に移す
この程度で十分だ。むしろ、これ以上は増やさないほうがいい。作業中のメモは記録ではなく、判断の再利用装置だと考えるといい。
Claude Code にそのまま渡すなら、依頼文の中でメモの役割を明示すると効く。たとえばこうだ。
以下の決定事項だけを前提に作業してください。
経緯の説明は不要です。新しい判断が必要になったら、その場で確認してください。
決定事項:
- 提出用と社内共有用を分ける
- 提出用はPDFのみ
- ファイル名は yyyy-mm-dd_案件名_内容 に統一
- 旧版は archive に移す
ここで大事なのは、「わかるだろう」で済ませないことだ。Claude Code は察してくれる相手ではあるが、曖昧なメモを読めるほど都合よくはない。メモが長いと、後半の本題より、前半のどうでもいい経緯に引っぱられる。これが地味に痛い。差分が膨らむし、修正の意図もぼやける。
筆者がいちばん手戻りしたのは、仕様変更の履歴を全部メモに入れていたときだ。
「最初はAだったが、途中でBになり、さらにCの懸念が出たので……」と残していたせいで、Claude Code が古い方針をまだ生きているものとして扱い、不要な修正を続けた。ここで必要なのは履歴ではなく、今の決定だけだ。古い経緯は消すか、別ファイルに退避する。作業中のメモに全部入れる発想がまず重い。
短くするコツは、次の3種類に分けることだ。
1. 決定事項
2. 保留
3. 参照先
この枠だけで十分回る。実際のメモはこんな感じになる。
決定事項:
- 提出用はPDFのみ
- ファイル名は yyyy-mm-dd_案件名_内容
保留:
- 旧版の保存期間は未確定
参照先:
- 元資料は /docs/2024/project-a/
これなら、Claude Code に渡しても、人間があとで見ても迷いにくい。保留を「保留」と明示するのも大事だ。未決定の話を決定事項に混ぜると、あとで自分が引っかかる。短いメモの価値は、読む速度だけでなく、判断ミスを減らすところにある。
非エンジニアの作業でも同じだ。たとえば、契約書の下書き、請求関連の書類整理、写真やPDFの片づけでも、メモを長文化すると詰まる。
「どの版を残すか」「どれを捨てるか」「どの名前で揃えるか」だけを書けばいい。背景説明は長いほど親切、ではない。むしろ後から見返したときに邪魔になる。
決定事項:
- 2024年分は1つのフォルダに集約
- 社外提出版だけ残す
- 重複PDFは古い日時のものを削除
- ファイル名は日付を先頭にする
こうしておくと、Claude Code に「この決定に沿って重複を整理して」と頼める。ファイルの整理は、途中の迷いをいかに減らすかで決まる。長い説明を残して安心するやり方は、見た目ほど役に立たない。
気をつけたいのは、短くすることと雑にすることは別だという点だ。短い作業メモは、曖昧でいいわけではない。むしろ逆で、曖昧な部分ははっきり「保留」と書く必要がある。ここをぼかすと、Claude Code が勝手に穴埋めしてしまう。穴埋めが許される場面と、絶対に勝手に決めてほしくない場面は違う。そこははっきり線を引く。
もうひとつ、メモは増やしすぎないほうがいい。作業中のメモ帳が肥大化すると、結局どこに決定があるのか分からなくなる。筆者は一時期、箇条書きを増やしすぎて、自分で探すのに時間を取られた。あれは実質的にコンテキストの浪費だ。残すのは、あとでそのまま再利用できる文だけで十分だ。
運用としては、次のやり方がいちばん扱いやすい。
- 作業の節目でメモを1回圧縮する
- 長い経緯は消す
- 決定事項だけ残す
- 新しい判断が出たら、古い決定は上書きする
Claude Code に渡す前に、自分で一度読み返すだけでも効く。もし読んだ瞬間に「長いな」と感じたら、その時点でだいたい失敗している。半分くらいまで削っても困らないことが多い。残すのは説明ではなく、次の手を打つための芯だ。
作業中のメモは、日記でも議事録でもない。短く、決定事項だけ残す。これだけで、Claude Code の動きはかなり素直になる。長い説明を抱え込ませるより、要点を圧縮して渡したほうが、修正も整理も速い。細かい経緯は別にしまう。作業の場には、今使う判断だけ置いておけばいい。