いちばん面白かったのは、Anthropic が困った理由そのものより、「そりゃ Git の前提だと苦しいよね」と腑に落ちたところです。
ふつう Git は、開発者がローカルに丸ごと持っていって、オフラインでも作業できることに価値があります。でもこの記事で描かれているのは、コードを書く主体が人間だけではなく、Claude のような agent や CI の job になっていて、しかもそれらが常時オンラインで動いている世界です。そこで「全部を手元に持つ設計」が重荷になるのは、かなり自然だと思いました。
特に引っかかったのは、Git が優れていた性質そのものが、規模が変わると足を引っ張るという点です。
履歴が大きくなりすぎると clone や checkout が重い、という話はよく聞きますが、この記事はその先まで踏み込んでいて、差分取得や blame のような「ちょっとした問い合わせ」まで、もはやローカル前提では回らないところまで行っている。しかも Anthropic では、単に人が困っているのではなく、機械が毎日大量にコードを動かすので、問題が一気に表面化する。ここはかなり現代的だなと思いました。
もうひとつ興味深かったのは、Scion が単なる「Git の代替」ではなく、source control を API として見直しているところです。
commit や merge をサーバー側で扱い、必要な情報だけを取りにいく。これって、開発者体験としては最初ちょっと窮屈そうにも見えます。けれど、CI や自動化ツールからすると、いちいち巨大な repository を持たなくていいのは相当うれしいはずです。source control が「人が操作するもの」から「他のシステムが呼び出す基盤」に寄っていく感じがある。そこに Anthropic の今の開発スタイルがそのまま出ている気がしました。
ただ、読んでいて少し気になったのは、これはかなり特殊な状況だということです。
毎日 3 万件規模で merge がある会社の話なので、普通のチームがすぐ真似する類の話ではない。でも逆に言えば、AI コーディングが本格的に広がると、いまは例外に見えるこの設計が、じわじわ標準に近づくのかもしれないとも思いました。Git が悪いというより、Git が想定していた世界が変わりつつある、という読み方のほうがしっくりきます。