PaPoo
cover
technews
Author
technews
世界の技術ニュースをリアルタイムでキャッチし、日本語でわかりやすく発信。AI・半導体・スタートアップから規制動向まで、グローバルテックシーンの「今」をお届けします。

GrafanaがGitHub侵入を公表 盗まれたトークンでソースコードが持ち出された話

キーポイント

何が起きたのか

Grafana Labsが、GitHub環境に侵入され、​ソースコードをダウンロードされたと公表しました。侵入に使われたのは、​盗まれた access token です。

access token は、ざっくり言うと「この人は正規の利用者です」とサービスに証明するためのデジタルな鍵です。これが漏れると、パスワードを知らなくても、正規ユーザーのふりをしてアクセスされることがあります。
個人的には、ここがこの事件のいちばん嫌なところだと思います。​派手なゼロデイ攻撃ではなく、まず「鍵を盗む」だけで中に入っている。攻撃としては地味なのに、効果はかなり大きいからです。

Grafanaは、今回の調査で顧客データや個人情報が漏れた証拠は見つかっていないとしています。さらに、​顧客のシステム自体には影響がなかったとも説明しています。
つまり、少なくとも今回の時点では「Grafana自身の開発環境が狙われた事件」であり、利用者側のサーバーが直接やられたわけではなさそうです。

Grafanaって何がそんなに重要なの?

Grafanaは、​データを見やすくグラフ化するための有名なオープンソース基盤です。監視、分析、リアルタイムの可視化に使われ、企業のシステム運用ではかなりおなじみの存在です。

image_0003.jpg

記事によると、​7,000以上の組織が利用しており、​Fortune 50の70%が使っているとのこと。
この数字を見ると、単なる1社のトラブルではなく、​
開発基盤やソフトウェア供給網に関わる事件
として重みがあるのがわかります。ソースコードは製品そのものの設計図のようなものなので、外に出ると厄介です。

攻撃者は何を狙ったのか

Grafanaによれば、攻撃者は脅迫もしてきました。
「盗んだソースコードを公開されたくなければ金を払え」という、典型的な恐喝の流れです。

ただしGrafanaは、​FBIの公開方針に従い、身代金は支払わないと決めました。理由としては、払ってもデータが戻る保証はなく、むしろ「払う会社がある」と思われると、同様の攻撃を増やしかねないからです。

この判断はかなり現実的だと思います。
被害を受けた側からすると「今すぐ止めたい」と思うのは当然ですが、​払うことが次の被害者を増やすというのは、サイバー犯罪でよくある厄介な構図です。

image_0004.jpg

調査で分かったこと

Grafanaは、漏えいした認証情報の出どころを特定し、​compromised credentials を無効化したと述べています。さらに、​追加のセキュリティ対策も導入したとのことです。

ここで重要なのは、攻撃の後始末として「犯人を追う」だけでなく、

という、地味だけど超重要な作業をやっている点です。セキュリティ事故は、事件そのものより再発防止の設計で会社の実力が見えます。

犯行声明を出した CoinbaseCartel とは

今回の攻撃を主張しているのは、​CoinbaseCartel という比較的新しい恐喝グループです。昨年9月に活動を始めたとされ、今年はすでに100件以上の被害者をデータ流出サイトに掲載しているとのこと。

image_0005.jpg

このグループは、主にデータの窃取と恐喝を行うタイプです。
記事では、複数の研究者の見方として、CoinbaseCartel は ShinyHuntersLapsus$ の関係者で構成されている可能性があるとされています。ただし、これは研究者の分析であって、確定事実として断言されているわけではありません。

また、ShinyHunters 側は BleepingComputer に対して、​CoinbaseCartel は自分たちとは無関係だと話したそうです。
このあたり、名前の似たグループや派生関係が絡んで、外から見るとかなりややこしいです。正直、サイバー犯罪界隈の「誰と誰が同じ陣営なのか」は、一般人には追い切れないくらい入り組んでいます。

こういう事件が怖い理由

今回の事件でいちばん示唆的なのは、​GitHubのような開発基盤が直接狙われることです。

昔ながらの「サーバーにマルウェアを入れる」攻撃だけでなく、今は

image_0006.jpg

みたいな、​ソフトウェアを作る側の道具が狙われます。
ここを破られると、完成品そのものより先に、​設計図や内部情報が抜かれる。これはかなり面倒です。

個人的には、これからのセキュリティで本当に大事なのは「ソフトウェアをどう守るか」だけでなく、​ソフトウェアを作るプロセス自体をどう守るかだと思います。開発環境の防御は、地味ですが最重要級です。

まとめ

Grafanaの件は、派手な破壊よりも、​認証情報の盗難から開発資産を抜き取るという、今どきの攻撃の典型を示しています。

被害としては、少なくとも現時点では

image_0007.jpg

という状況です。

ソースコードが漏れると、すぐに一般ユーザーが直接困るとは限りません。ですが、将来の攻撃研究、脆弱性の発見、内部構造の把握など、いろいろな悪用につながる可能性があります。
だからこそ、こういう事件は「被害が軽そう」に見えても、実はかなり重い。そこが怖いところです。


参考: Grafana says stolen GitHub token let hackers steal codebase

同じ著者の記事