GitHub で公開されている wiltodelta/remove-ai-watermarks は、AI生成画像に入る「ウォーターマーク」を取り除くための CLI(コマンドで使う道具) と library(プログラムから呼び出す部品) です。
ここでいうウォーターマークは、いわゆる右下のロゴみたいな見える印だけではありません。
この記事の元ページでは、次のようなものまで対象にしています。
要するに、「画像の表面に見えるもの」だけでなく、「裏側にこっそり入っている情報」までまとめて処理しようとしているわけです。
これはかなり攻めたプロジェクトだと思います。技術的には面白いのですが、同時にかなり議論を呼びそうです。
README では、主に次の機能が挙げられています。
専門用語をざっくり言うと、
です。
README には、対応モデルの一覧もあります。
ここで重要なのは、AI画像の“印”は1種類じゃないということです。
昔なら「画像の隅にロゴを置けばいい」だったのが、今は見える印、見えない印、メタデータ、配布時の証明情報までいろいろあります。
つまり、画像生成の世界は「作る」だけでなく、「どう証明するか」「どう追跡するか」まで含めて戦っている、という感じです。ここは本当に現代的だなと思います。
README は、ただ「消せます」と言うだけでなく、どうやって消すかもかなり詳しく書いています。
Google Gemini は、内部コードネームとして Nano Banana と呼ばれることがあるらしく、出力画像にキラキラしたロゴを重ねるそうです。
README ではこれを alpha blending で載せていると説明しています。
ざっくり言うと、
を使って合成しているので、逆算すれば元に戻せる、という理屈です。
さらに、位置やサイズが変わっても検出できるように、NCC ベースの検出を3段階で行うとしています。
そして、残った縁の違和感は inpainting(周囲から自然に埋める処理)で補正する、とあります。
速度は 約0.05秒/枚、GPU不要とのこと。
ここはかなり印象的です。もし本当にこの速度で安定して動くなら、かなり実用的です。
見えない水印のほうは、もっとやっかいです。
README によると、SynthID や StableSignature、TreeRing などは、頻度領域や潜在空間に埋め込まれ、切り抜き・リサイズ・JPEG圧縮でも残りやすいそうです。
そこでこのツールは、画像をいったん
という流れで処理します。

要するに、**“一度かなり壊してから、作り直す”** という発想です。
これは手品みたいですが、AI画像処理では意外と筋の通ったやり方です。
ただし、これは単純に「元画像を復元する」というより、見えない印を弱めつつ、見た目を保ち直すアプローチだと読むのが正確だと思います。
README では、YOLO で人物を検出し、処理前に顔を切り出して、後でソフトな楕円マスクで戻すとあります。
これはかなり実務的です。AI画像の再生成系ツールは、顔が崩れると一気に“使えない感”が出るので、ここを気にしているのはよくわかります。
EXIF、XMP、PNG text chunks、C2PA など、画像には結構いろいろな“おまけ情報”が入ります。
このツールは、AI関連の項目だけを消し、Author や Copyright などの通常のメタデータは残す設計だと書かれています。
ここは地味ですが重要です。
単に全部削除するより、必要な情報を残しつつ AI関連だけ外すほうが実用的だからです。
とはいえ、SNS側がどう判定するかは別問題で、「ラベルを避ける」目的で使われる可能性もあるので、かなりセンシティブだと感じます。
README では、まずは隔離されたCLIツールとして入れる方法を推奨しています。
pipx install git+https://github.com/wiltodelta/remove-ai-watermarks.git
または uv を使う方法もあります。
uv tool install git+https://github.com/wiltodelta/remove-ai-watermarks.git
リポジトリから直接入れることもできます。
git clone https://github.com/wiltodelta/remove-ai-watermarks.git
cd remove-ai-watermarks
pip install -e .
見えない水印の除去を使うなら、GPU向け依存関係も必要です。
pip install -e ".[gpu]"
README によると、初回実行時に約2GBのモデルが自動ダウンロードされ、デバイスは
の順で自動判定されるとのことです。
個人的には、「透かしを消す」だけではなく、現代のAI画像に埋め込まれる“証拠の層”をまとめて相手にしているところが面白いと思います。
AI画像って、見た目だけ見れば普通の写真みたいでも、裏では
が重なっています。
このツールは、そういう“見えない政治”みたいなものに真正面からぶつかっている感じがあります。技術としてはすごく興味深いです。
一方で、ここははっきり言っておきたいのですが、こうしたツールは悪用される可能性も高いです。
「自分が作った画像の整理」に使う人もいるでしょうが、コンテンツの出所を隠したい人にも便利だからです。
なので、技術的な興味と社会的な慎重さの両方が必要なタイプのプロジェクトだと思います。
remove-ai-watermarks は、AI生成画像に入る見える透かし、見えない水印、メタデータをまとめて処理しようとする GitHub プロジェクトです。
特に Gemini / Nano Banana のロゴ除去や、SynthID のような invisible watermark へのアプローチが目を引きます。
技術的にはかなり野心的で、画像処理・diffusion・メタデータ解析を横断しているのが面白いところです。
ただし、ウォーターマークは画像の真正性や出所を示す役割もあるので、こうしたツールは便利さとリスクが常にセットだと感じます。