この記事でまず共感しやすいのは、筆者の悩みです。
「大事なメッセージを見落としていたわけじゃない。
でも、返そうと思ったころには時間が経ちすぎていて、なんだか今さら感が出る」
これ、かなりあるあるだと思います。
忙しいと、メッセージを読んだ瞬間に返せないことは普通にあります。でも数日たつと、「今から返すのも変かな」「もう流れたかな」となって、そのまま終わる。結果として、人間関係にじわっと影響が出る。派手じゃないけど、かなり厄介な問題です。
筆者はここで「もっといい inbox が欲しいんじゃない。もう一人の自分が欲しい」と考えました。
この発想が、いかにもAI時代っぽくて面白いです。単に作業を減らすのではなく、「自分の代わりに、でも自分らしく動く存在」を作ろうとしているわけです。
筆者が作ったのは Mae というAIです。
Mae は Gmail、WhatsApp、Slack に接続し、メッセージが届くと次のような流れで動きます。
ここで大事なのは、ただ「それっぽい文章」を作るAIではない、という点です。
最近のAI文章ツールは、たしかにきれいな文章を出します。
でも、きれいすぎて「誰が書いたの?」となることが多い。筆者はそこに満足していません。Mae のゴールはかなり厳しくて、受け取った相手が“自分が書いていない”と気づかないレベルを目指しています。
この基準、相当高いです。
正直、かなり無茶にも見えます。でも逆に言うと、ここまで振り切っているからこそ、単なるおもちゃではなく実用品に近づくのだと思います。
Mae の工夫で特に面白いのが、関係性ごとに文体を分けて学習しているところです。
たとえば、同じ人でも、
こういう違い、ありますよね。
人間って、相手によって話し方を無意識に変えています。なので、単に「過去のメッセージを全部学習しました」では不十分で、誰に対してどう書くかまで見ないと、すぐ不自然になります。
この記事では、Mae は送信相手との関係性に応じて、学習した複数の書き方を切り替えると説明されています。
ここはかなり重要で、個人的には「AIが自然になるかどうか」は、この“文体の切り替え”でほぼ決まるのではないかと思います。
この記事でいちばん「なるほど」と思ったのは、confidence scoring の話です。
Mae は生成した返信案に対して、自分で「これはどれくらい確からしいか」を評価します。
このスコアが高ければ自動送信。低ければ人間に確認を回す。ユーザーは、そのしきい値を調整できるそうです。

これは地味ですが、かなり重要です。
AIって、間違えるときは普通に間違えます。
しかも、文章生成は一見それっぽいので、間違いに気づきにくい。だからこそ、全部を全自動にするのではなく、「AIに任せる部分」と「人間が見る部分」を分ける設計が大事なんです。
筆者も、最初は全部レビューする必要があったものを、信頼できるものだけ自動で送る形に変えたことで、デモから実用ツールになったと述べています。
この変化はかなり本質的だと思います。AIプロダクトって、結局「賢いこと」より「どこを任せるか」の設計で勝負が決まることが多いんですよね。

個人的には、このアイデアはかなり面白いです。
「返信を自動化する」のではなく、「自分が返信しやすい状態を取り戻す」方向に寄っているのがいい。
忙しさで人間関係が薄まるのを防ぐ、かなり現代的な発想だと思います。
一方で、少し考えたくなる点もあります。
たとえば、AIが「自分らしい返事」をするようになると、相手は本当に自分とやり取りしている感覚を持つのか、それとも“代理”と気づくのか。この境界は繊細です。

また、メッセージ内容には当然プライベートな情報が含まれるので、連携先が増えるほどセキュリティや取り扱いの慎重さも必要になります。この記事の本文ではそこまで詳しくは触れていませんが、こういうツールは便利さの裏で、データ管理の設計がかなり重要になるはずです。
Mae の本質は、ただメッセージを代筆することではありません。
時間が空いたせいで返しづらくなる問題を、AIで救うことにあります。

しかも、文章の自然さだけでなく、
まで含めて設計しているのがうまい。
派手な魔法というより、現実の面倒くささにちゃんと向き合ったAI、という感じです。

こういう「生活の摩擦」を減らすAIは、派手なデモ以上に価値があると思います。
未来っぽいのに、悩みの根っこはすごく人間くさい。そのバランスが、この話のいちばん面白いところではないでしょうか。