最初に思ったのは、安いガジェットの話というより、手元にある物をもう一度おもしろくし直す話だなということだった。引き出しの奥で眠っていた $27 のスマートウォッチが、Claude みたいな coding agent を通すだけで、急に「遊べる端末」に戻ってくる。そこがかなり気持ちいい。
特に引っかかったのは、著者が最初から完璧を狙っていないところだ。画面の文字位置がずれて読みにくくても、まずは simulator で動かして、次に少しずつ直す。これ、AI を使うと雑に一発で終わらせたくなる場面で、逆に人間が細かく介入したほうが早いことがある、という実感に近いと思う。全部を agent に丸投げするより、1つずつ「ここを直して」と渡したほうがうまくいく。地味だけど、たぶんここが本質だ。
もうひとつ面白かったのは、画面の静的部分を丸ごと画像にしてしまう発想だ。腕時計の中身を全部コードで描こうとするとしんどいけれど、固定部分を画像に逃がせば、一気に難易度が下がる。ただ、その代償として Bluetooth 転送に10分かかったり、画面更新が1〜2秒かかったりする。ここは「賢いけど、やっぱり小さなデバイスは小さなデバイスだな」と感じた。AI が何でも解決するというより、ハードの制約を見ながら設計を変えるほうが大事なんだと思う。
読後感としては、かなり前向きだった。高価な開発機材がなくても、ドキュメントが整っていて simulator があり、しかも open source firmware なら、数時間で「使えるもの」まで持っていける。これって、個人開発の再生力をかなり強くするはずだ。机の奥に眠っていた古い端末が、AI を挟むことでまた実用品になる。その感覚は、単なるデモ以上にうらやましかった。