Claude Code に何でもかんでも放り込むと、だいたい雑になる。しかも、雑になるだけならまだましで、あとから「この前提、どこから出たんだっけ」と自分で迷子になる。材料の仕分け、あるいは文脈の三層化をやると、この手の事故がかなり減る。
ここで言う三層は、やることをきれいに分ける考え方だ。Claude Code に渡す材料を、毎回ぜんぶ同じ箱に入れない。仕事のルール、今回だけ必要な事情、実作業の指示を分けて置く。これだけで、長い会話でもブレにくくなるし、ファイル整理でも文章作成でも、出力の迷走がかなり減る。
筆者は最初、背景説明も制約もやりたいことも、ひとつのプロンプトに全部詰めていた。結果、Claude Code が悪いというより、こちらの指示が散らかりすぎていた。何を固定して、何を今回だけ変えたいのかが曖昧だと、修正のたびに手戻りが増える。これはコードだけでなく、不要ファイルの整理や文書のたたき台づくりでも同じだ。材料が混ざると、判断が鈍る。
三層に分けるときの考え方は、こうだ。
第一層は、ずっと変えたくない前提だ。たとえば「このフォルダは社内共有なので勝手に削除しない」「文章は敬語ではなく常体で統一する」「ファイル名は日付順に並ぶようにする」といった、案件全体のルールが入る。ここはブレると困るので、最初に固定する。
第二層は、今回だけの事情だ。たとえば「今回の対象は請求書フォルダだけ」「この原稿はA社向けではなく社内メモ向け」「重複ファイルの候補は画像だけ見る」といった、案件の範囲を切る情報が入る。ここを雑にすると、Claude Code は広く見すぎる。広く見すぎると、関係ないものまで拾って、判断が重くなる。
第三層は、今やってほしい作業そのものだ。「重複候補を一覧にして」「差分を見て統合案を出して」「この下書きを読みやすく直して」といった実行指示だ。ここは短くていい。むしろ長すぎると埋もれる。
たとえば、ファイル整理ならこんな形が扱いやすい。
第一層: 何をしてよくて、何をしてはいけないか
- 勝手に削除しない
- 移動前に候補一覧を出す
- ファイル名は変更案だけ示す
第二層: 今回の対象
- 対象は Downloads フォルダ
- 画像、PDF、重複っぽい書類だけ見る
- 個人写真は触らない
第三層: 今回やってほしいこと
- 似た名前のファイルをグループ化して
- 削除候補と保留候補を分けて
- その理由も短く書いて
文章作成でも同じだ。
第一層: ルール
- 常体で書く
- 断定しすぎず、でも曖昧にはしない
- 箇条書きは必要なところだけにする
第二層: 今回の事情
- 読者は非エンジニアも含む
- Claude Code の実用記事として書く
- 長く読める evergreen な内容にする
第三層: やること
- 見出しに沿って本文を書いて
- 冒頭は失敗談から入って
- 仕上げに、注意点を1つ入れて
この分け方のいいところは、修正が楽になることだ。たとえば第二層だけ変えれば、対象を Downloads から Desktop に替えられる。第三層だけ変えれば、削除候補の洗い出しからリネーム案の作成に切り替えられる。第一層を毎回いじらなくて済むので、プロンプトが育つ。逆に全部ひとつに混ぜると、どこを直したのか分からなくなる。
Claude Code を使うときは、会話の途中でもこの三層を意識すると効く。新しい情報を足したくなったら、それが「全体ルール」なのか「今回の事情」なのか「次の作業指示」なのかを見極める。ここを雑にすると、前の指示を上書きしたつもりが、ただのノイズ追加になる。筆者はここで何度か痛い目を見た。途中で思いついた例外条件を、作業指示の行にねじ込んでしまったせいで、Claude Code が例外の扱いに引っ張られて、最初の方針がぼやけた。分けて書けば避けられる話だ。
実務では、三層をファイルに分けて持つのもやりやすい。たとえばリポジトリなら、README に全体ルール、案件ごとのメモに今回の事情、Claude Code への依頼文に実行指示を置く。毎回コピペして使うのではなく、材料の置き場を分けるわけだ。これなら、後で見返したときにも「どの情報がどの役割だったか」が分かる。
# ルール
- 常体で書く
- 事実と推測を分ける
- 変更前に対象を確認する
# 今回の対象
- /home/user/Downloads
- 画像とPDFだけ
- 個人写真は除外
# 依頼
- 重複候補を列挙して
- 削除してよさそうなものを理由つきで示して
- 迷うものは保留にして
このやり方で地味に効くのが、Claude Code が余計な遠回りをしにくくなることだ。指示が混ざっていると、何を優先するかを毎回読み解く必要がある。材料を三層に分けておけば、その解読コストが下がる。結果として、返ってくる案の筋が通りやすい。
注意したいのは、三層化をやりすぎて、逆に文章が長くなりすぎることだ。層を分けるのは、情報を増やすためではない。混ざりを減らすためだ。第一層に「常に守ること」を詰め込みすぎると、今度はルールだらけで重くなる。第二層に細かい背景を書きすぎると、結局ノイズになる。第一層は少なく、第二層は絞り、第三層は一文で済むところは一文で済ませる。この引き算が大事だ。
もうひとつ、非エンジニアの用途では「削除」と「保管」を混同しないことだ。不要ファイルの整理でClaude Codeを使うなら、いきなり消させない。まずは候補を分けさせる。文章作成でも、いきなり完成版を出させるより、下書き、整理、清書を分けたほうが安定する。三層化は、作業を急がせる技ではなく、事故を減らすための段取りだ。
実際の依頼は、こんな感じにすると使いやすい。
今回は三層で扱ってください。
第一層は、今後も守るルールです。
- 常体で書く
- 勝手に対象を広げない
- 変更案は理由つきで出す
第二層は、今回だけの前提です。
- 対象は請求書フォルダ
- 10月分だけを見る
- 仕分け対象はPDFと画像のみ
第三層は、今回の作業です。
- 重複ファイルの候補を出してください
- 削除候補と保留候補を分けてください
- 最後に、迷った点を短く書いてください
この型に慣れると、Claude Code への頼み方がかなり安定する。特別なテクニックに見えて、実際はただの整理術だ。だが、この整理術が効く。材料を三層に分けるだけで、判断がぶれにくくなり、手戻りも減る。Claude Code を「賢い道具」として使いたいなら、まずこちらが材料の並べ方を整えるのが先だ。