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韓国が1兆ドルをつぎ込む「半導体」と「人型ロボット」の本気度

まず押さえたいポイント

韓国がかなり派手な一手を打ってきました。Ars Technicaの記事によると、政府と主要テック企業が、半導体生産の拡大、AIデータセンターの建設、そして人型ロボットの実用化に向けて、合計1兆ドル規模の投資を進めるそうです。数字の大きさだけでも圧倒されますが、面白いのは「AIを支える部品」から「AIを動かす場所」、さらに「AIが物理世界で働く未来」まで、まとめて国家戦略にしているところです。

私はここに、韓国らしいしたたかさを感じます。半導体で世界の中心に立ってきた国が、AIブームを「流行」で終わらせず、産業構造そのものを再設計しにいっている。かなり攻めています。

この記事の中心にあるのは、メモリチップです。AIと聞くと、ついGPUばかりを思い浮かべがちですが、実はメモリもとても重要です。メモリは、ざっくり言えば「作業机の広さ」みたいなもの。AIデータセンターでは大量のデータを高速で扱うので、メモリが足りないと全体が詰まります。SamsungとSK Hynixは、AI需要のおかげで記録的な利益と株価を得ていますが、その裏で供給不足と価格上昇が起き、一般消費者向けの電子機器にも影響が出ているわけです。

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韓国政府は、SamsungとSK Hynixに合わせて5850億ドルを投じ、新しい半導体工場を南西部に建て、首都圏でも増強する計画を支援します。目標は、5年以内にDRAMの生産量を倍増させること。DRAMはPCやスマホ、サーバーに広く使われる基本的なメモリで、ここが増えると市場全体の需給バランスがかなり変わります。

ただ、工場を建てればすぐ供給が増える、というほど話は簡単ではありません。SK Hynixのトップは、以前に龍仁で工場群を整えるのに9年かかったと話していて、新しい拠点も立ち上がりには時間がかかる見通しです。つまり、今すぐメモリ価格が落ち着くと期待するのは早いかもしれません。しかもAI企業がデータセンター向けにメモリを買い続けるなら、一般向け製品の値段が下がるとは限らない。ここは少し苦いところです。

第二の柱はAIデータセンターです。SK Group、GS Group、Naverが3570億ドルを投じ、地方に大規模施設を作ります。データセンターはAIの“心臓”というより、“工場”に近い存在です。AIモデルを動かす計算機をずらっと並べ、冷やし続ける巨大施設ですね。便利そうに見えますが、実際には電気と水をものすごく食います。韓国政府は、南西部の半導体工場に6.3GWの電力と65万トンの水を確保し、さらにデータセンター向けに8GWの電力を用意しようとしているそうです。GWはギガワットで、ざっくり「都市ひとつ分どころではない」規模の電力と考えてよいです。

この話、地味に重要です。AIはソフトウェアの顔をしていますが、現実には発電所、送電網、水資源の話です。かっこいいモデル名や会話デモの裏で、国はインフラを掘り起こしている。ここにAIブームの本質があると思います。夢のような技術ほど、足元は泥臭い。

電力の話でも韓国はかなり現実的です。再生可能エネルギーや原子力、さらに化石燃料も組み合わせて供給を支える方針で、2024年時点では原子力と石炭がそれぞれ発電の30%超を占めていました。一方で天然ガス依存も大きく、中東の海峡情勢の影響で供給や価格が揺れやすい。AIのために電力を増やしたいのに、エネルギー安全保障の問題まで一緒に背負うことになる。なかなか厄介です。

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そして三本目が、人型ロボットです。韓国政府は「physical AI」、つまり現実世界で動くAIを国家戦略産業に位置づけました。自動運転車やロボットのように、画面の中ではなく物理空間で行動するAIを重視するわけです。これ、個人的にはかなり面白い方向だと思います。生成AIの次に来るのは何か、という問いに対して、韓国は「働く機械」だと答えているように見えるからです。

政府は3年以内に、ロボット向けの韓国版「general-purpose foundation model」を作るとしています。foundation model は大きな基盤モデルのことで、いろいろな用途に転用しやすいAIの土台です。ここに「world model」という言葉も出てきますが、これは現実世界の状態や因果関係を理解して動くためのモデル、とざっくり捉えるとわかりやすいでしょう。要するに、ただ会話がうまいAIではなく、周囲を見て、状況を読んで、失敗しにくいロボットを目指している。

Hyundai Motorは、北米で知られるBoston Dynamicsを2021年に買収していて、そのAtlas humanoid robot を使った量産体制づくりも進めています。記事では、2028年までに年3万台のAtlasを生産する計画が紹介されています。ロボットが自動車工場や倉庫で、重いものを運んだり、単調で危険な作業を担ったりする未来を狙っているわけです。

でも、未来はきれい事だけでは進みません。Hyundaiの労働組合は、ロボット導入にともなう雇用や利益配分への懸念から、スト権をめぐる動きまで見せています。これはかなり象徴的です。経営側から見れば「生産性向上」でも、働く側から見れば「自分の仕事はどうなるのか」という切実な問題ですから。ロボットが工場に入るたびに、技術の進歩と雇用の不安はいつもセットでやってきます。

さらに、韓国では半導体企業の巨額利益をどう扱うかでも議論があります。政府は企業に対して、利益を従業員や中小サプライヤーと分かち合うよう促してきましたし、一時は「national dividend」のような発想まで話題になりました。正式政策ではないにせよ、AIで儲かった果実を誰が受け取るのか、という問いはかなり重いです。技術そのものより、利益の配分のほうが社会をざわつかせる。たぶん、こういう局面こそ本当に現実的な論点なんだと思います。

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この韓国の大型投資で見えてくるのは、AI競争が単なるソフトウェア競争ではないという事実です。メモリを作る工場が要る。AIを回すデータセンターが要る。電気も水も要る。そして最後には、AIを現実世界で動かすロボットまで要る。言い換えれば、AIの勝負は「モデルの賢さ」だけでは決まりません。材料、電力、土地、人材、労使関係まで全部ひっくるめた総力戦です。

韓国はその総力戦に、国ごと乗り出したように見えます。かなり大胆だし、かなり泥臭い。でも、だからこそ面白い。AIをめぐるニュースの中でも、これは「未来の話」に見えて、実はかなり足が地についている案件だと思います。


参考: South Korea to spend $1T on more memory chip production and humanoid robots

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