セルをコピーして貼り付けても、エラーも音も出ないまま何も起きない。オートフィルのドラッグも反応しない。2026年9月9日以降に突然こうなったなら、あなたのExcelが壊れたのではなく、9月8日配信のセキュリティ更新 KB5002914 が原因の可能性が高いです。
この記事は「原因を特定する」ところから「自分の環境に合った直し方」「アンインストールできない人の当座しのぎ」「会社PCでの正しい対応」までを、環境別に分けて全部書きます。上から順に見ていけば、どれか1つに当たります。
| 使っているExcel | 9月15日時点の状況 | やること |
|---|---|---|
| Microsoft 365版(Excel for Microsoft 365) | 影響の報告なし | この不具合ではない。別原因を切り分け |
| Office 2024 / Office LTSC 2024(C2R) | 修正ビルドが配信され始めている(16.0.17932.20996 以降) | 更新チェックするだけで直る |
| Office 2021 / LTSC 2021(C2R) | 修正ビルド未確認 | 更新チェック → ダメならビルドを戻す |
| Office 2019(C2R) | 修正ビルド未確認 | 更新チェック → ダメならビルドを戻す |
| Excel 2016(MSI版) | 未修正。Microsoftは「調査中」のまま | KB5002914 を個別にアンインストール |
Microsoft は9月10日付でこれを KB5002914 の「既知の問題」として公式に認定し、次のように書いています。
Microsoft Excel 2024、2021、2019、2016 において、貼り付け操作が黙って失敗することがあります。ユーザーが貼り付けを実行しても、コピー元は選択されたままで、貼り付け先は変更されません。この問題が起きているとき、ビープ音やエラーメッセージなど失敗を示すものは一切表示されません。
つまり「静かに失敗する」のが今回の特徴です。エラーが出ないせいで、キーボードの故障・ファイルの破損・Windowsの不調と誤診されやすいのが一番やっかいなところです。
直し方に入る前に、ここを確認してください。原因が違うのに更新をアンインストールしても意味がありませんし、セキュリティだけ落ちて損をします。
9月8日(日本時間9日)より前から調子が悪かったなら、今回の不具合ではない可能性が高いです。
Ctrl+CCtrl+Vメモ帳には貼り付けられるのにExcel内には貼り付けられない なら、クリップボードは生きていて、Excel側の貼り付け処理だけが壊れている状態です。今回の不具合に非常に近い挙動です。
逆にメモ帳にも貼り付けられないなら、クリップボードやクリップボード監視アプリ(Teams、セキュリティソフト、クリップボード履歴ツール等)側の問題を先に疑ってください。
Wordで問題なく貼り付けられるのにExcelだけダメなら、Excel固有の問題です。今回の報告もExcelに集中しています。
3つとも当てはまるなら、KB5002914 起因とみて先に進んでください。
今回の対処はインストール方式(Click-to-Run か MSI か)で手順がまったく違います。ここを間違えると「コマンドを打ったのに何も起きない」になるので、必ず先に確認します。
[ファイル] → [アカウント][Excel のバージョン情報] ボタンを押す表示されるダイアログの1行目を読みます。
Microsoft® Excel® 2024 MSO (バージョン 2408 ビルド 16.0.17932.20996) 64 ビット のように 「バージョン 24xx ビルド 16.0.xxxxx.xxxxx」形式 → Click-to-Run(C2R)Microsoft® Excel® 2016 (16.0.5569.1003) MSO (16.0.5569.1003) 32 ビット のように ビルド番号だけが載っている → MSI版の可能性が高いあわせて、末尾の 32ビット/64ビット もメモしておいてください。あとで使うフォルダのパスが変わります。
補足:
[ファイル]→[アカウント]の画面に[更新オプション]ボタンがあれば Click-to-Run です。このボタンが無ければ MSI版(ボリュームライセンスの古い展開)です。ここが一番確実な見分け方です。
| Office | 問題が出るビルド | 戻す先のビルド |
|---|---|---|
| Excel 2016(MSI) | 16.0.5569.1003 | 16.0.5569.1001 相当(KB5002914 を外した状態) |
| Office 2016(C2R) | 更新後のビルド | 16.0.5563.1000 |
| Office 2019(C2R) | 更新後のビルド | 16.0.10417.20197 |
| Office 2021 / LTSC 2021(C2R) | バージョン 2108 ビルド 14334.20906 | 16.0.14334.20848 |
| Office 2024 / LTSC 2024(C2R) | 更新後のビルド | 16.0.17932.20910(※後述の修正版があるので通常は不要) |
Microsoft Q&A の報告では、Click-to-Run 版は 16.0.17932.20996 で修正されたとされています。まずは更新を試してください。ロールバックもアンインストールも不要です。
[ファイル] → [アカウント][更新オプション] → [今すぐ更新][ファイル] → [アカウント] → [Excel のバージョン情報] でビルドが 16.0.17932.20996 以降になっているか確認ほとんどの場合、これで元通りになります。
もし [今すぐ更新] が押せない、または更新しても古いビルドのままなら、社内で更新チャネルが固定されている(=情報システム部門が配信を管理している)可能性があります。その場合は Step 4 の管理者向けの話を見てください。
⚠️ 修正ビルド 16.0.17932.20996 は利用者の報告ベースの情報で、Microsoft の KB ページ側は9月15日時点でまだ「調査中」の記載のままです。他のバージョン(2021 / 2019 / 2016)に同じビルド番号は存在しないので、自分のOfficeのビルド系列に合う番号かどうかを必ず確認してください。
まず Step 2A と同じ手順で [今すぐ更新] を実行してください。修正ビルドが降りてきていれば、それで終わりです。
更新しても直らない場合は、9月8日より前のビルドへ戻すのが現時点の現実的な回避策です。Click-to-Run は「この更新だけ外す」ということができないため、Office全体をひとつ前のビルドに戻します。
1. Officeアプリをすべて終了します。Excel・Word・Outlook・Teams(Office統合分)を閉じ、タスクトレイにも残っていないことを確認します。
2. コマンドプロンプトを「管理者として実行」で開きます。スタートボタンを右クリック →「ターミナル(管理者)」でも構いません。
3. 自分のOfficeのビット数に合わせてフォルダへ移動します。
64ビット版Officeの場合:
cd /d "C:\Program Files\Common Files\Microsoft Shared\ClickToRun"
32ビット版Officeを64ビットWindowsで使っている場合:
cd /d "C:\Program Files (x86)\Common Files\Microsoft Shared\ClickToRun"
指定されたパスが見つかりません と出たらもう一方を試してください。そちらにあります。
4. 戻したいビルドを指定して実行します。(下はOffice 2021の例)
OfficeC2RClient.exe /update user updatetoversion=16.0.14334.20848
Office 2019 なら 16.0.10417.20197、Office 2016 C2R なら 16.0.5563.1000 に置き換えます。
5. Officeの更新画面が立ち上がり、ダウンロードとロールバックが進みます。回線にもよりますが5〜20分ほどかかります。途中でPCの電源を切らないでください。
6. 完了後にExcelを起動し、[ファイル] → [アカウント] → [Excel のバージョン情報] で指定したビルドに戻っているか確認します。
7. コピー&ペーストとオートフィルを試します。
このまま放置すると、数時間〜数日で自動更新が走ってまた同じ壊れたビルドに戻されます。修正版が出るまでは更新を止めておきます。
[ファイル] → [アカウント] → [更新オプション] → [更新を無効にする]修正版が出たら、同じ場所から [更新を有効にする] → [今すぐ更新] で戻してください。止めっぱなしにしないことが重要です。
MSI版は、Office全体を戻さなくても KB5002914 だけを個別にアンインストールできます。これが現時点で最も確実な回避策として報告されています。
Windows 10 の場合:
[コントロールパネル] → [プログラム] → [プログラムと機能][インストールされた更新プログラムを表示]KB5002914 と入力[アンインストール]Windows 11 の場合:
Windows 11 の [設定] → [Windows Update] → [更新の履歴] → [更新プログラムをアンインストールする] の画面には、Officeの更新が表示されないことがあります。ここに出てこなくても「入っていない」わけではありません。従来のコントロールパネルを直接開いてください。
Win+R キーを押すcontrol appwiz.cpl と入力して Enter[インストールされた更新プログラムを表示]Windows 11 環境では、コントロールパネルにも出てこないという報告があります。その場合は次のコマンドを管理者権限のコマンドプロンプトで実行します。
"C:\Program Files\Common Files\Microsoft Shared\OFFICE16\Oarpmany.exe" /removereleaseinpatch "{90160000-0012-0000-1000-0000000FF1CE}" "{27882596-A8ED-4382-9C71-6CD2DD19F732}" "1033" "0"
うまくいかない場合の代替:
msiexec.exe /package "{90160000-0012-0000-1000-0000000FF1CE}" /uninstall "{27882596-A8ED-4382-9C71-6CD2DD19F732}" /qn /norestart
⚠️ このGUIDをそのまま使う前に読んでください。
1つ目の{90160000-0012-....}は製品コードで、Officeのビット数・エディション・言語によって変わります。2つ目の{27882596-...}が KB5002914 のパッチコードです。最後の"1033"は言語コードで 1033 = 英語です。日本語版Officeでは1041に置き換える必要があります。コマンドが「何も起きずに終わる」「エラーも出ない」場合は、ほぼGUIDかビット数の不一致です。むやみに繰り返さず、方法1のコントロールパネル経路に戻るか、情報システム部門に依頼してください。
ネット上には次の方法が出回っていますが、Officeの更新には使えません。
wusa /uninstall /kb:5002914 ← 効きません
Get-HotFix | ? HotFixID -eq "KB5002914" ← 何も返ってきません
wusa と Get-HotFix は Windows本体の更新(.msu)用です。Officeの更新は .msp(Windows Installer パッチ) という別形式なので、そもそも対象外です。「コマンドを打ったのに消えない」「Get-HotFixに出ないから入っていないはず」と判断してしまう人が多いところなので、ここは注意してください。
外しただけだと、次のWindows Updateでまた入ってきます。修正版が出るまでの間、次のどちらかで止めます。
[設定] → [Windows Update] → [更新の一時停止](最大5週間)wushowhide.diagcab)で KB5002914 を非表示にするwushowhide.diagcab はMicrosoftのサポートページからは既に外された旧ツールで、環境によっては動作しないことがあります。会社PCなら、次の管理者向けの手順に従ってください。
会社PCで権限がない、締め切りが今日、IT部門の返事待ち。そういうときのために、更新を触らずに貼り付けを通す方法をまとめます。効く/効かないは環境差がありますが、上から順に試せばどれかは通ります。
通常の貼り付けは書式・数式・リンクなどを丸ごと運ぶ「リッチな形式」で動きます。今回の不具合はここで詰まるため、形式を指定すると通ることがあります。
Ctrl+CCtrl+Alt+V(形式を選択して貼り付け)[値] または [すべて] を選んで [OK]右クリック → [形式を選択して貼り付け] でも同じです。
Excel自身が持つクリップボード履歴の作業ウィンドウから貼り付けると、通常の貼り付けとは別の経路になります。
[ホーム] タブ → [クリップボード] グループの右下にある小さな斜め矢印をクリック「切り取り」→「取り消し」→「貼り付け」の順に押すと、クリップボードの中身が作り直されて貼り付けが通る、という報告があります。手数はかかりますが、他が全滅のときに試す価値があります。
フィルハンドルのドラッグが効かなくても、別のフィル手段は生きていることが多いです。
Ctrl+D … 上のセルの内容を下方向にコピー(範囲を選択してから押す)Ctrl+R … 左のセルの内容を右方向にコピー[ホーム] → [編集] グループ → [フィル] → [連続データの作成] … 増分値と停止値を指定して 1,2,3… を作る連番や日付の作成なら [連続データの作成] のほうがむしろ正確です。
Microsoft 365 のアカウントがあるなら、office.com のブラウザ版Excelはこの不具合の影響を受けません。OneDrive / SharePoint 上のファイルなら、ブラウザで開いて作業するのが一番早い脱出路です。
VBAからの貼り付けは通るという報告があります。マクロ有効ブックが使える環境なら、次の3行をモジュールに入れてショートカットを割り当てます。
Sub MyPaste()
ActiveSheet.Paste
End Sub
[表示] → [マクロ] → [マクロの表示] → [オプション] から Ctrl+Shift+V などを割り当てておくと実用になります。マクロのセキュリティ設定を下げる必要はありません。自分で作ったブック内のマクロを実行するだけです。
利用者が個別に更新を外す運用は、セキュリティ状態がバラバラになるうえ、次回のWindows Updateで元に戻り、また問い合わせが来ます。管理下のPCなら、まとめて制御してください。
rollback.xml を用意します。
<Configuration>
<Updates Enabled="TRUE" TargetVersion="16.0.14334.20848" />
</Configuration>
実行:
setup.exe /configure rollback.xml
TargetVersion は対象エディションのビルドに合わせてください(Office 2019 は 16.0.10417.20197、Office 2016 C2R は 16.0.5563.1000)。
HKLM\SOFTWARE\Policies\Microsoft\office\16.0\common\officeupdate
| 値の名前 | 種類 | 設定値 |
|---|---|---|
enableautomaticupdates |
DWORD | 0(自動更新を止める) |
updatetoversion |
文字列 | 16.0.14334.20848(戻す先を固定) |
管理用テンプレート(ADMX)では [コンピューターの構成] → [管理用テンプレート] → [Microsoft Office 2016 (コンピューター)] → [更新] → [自動更新を有効にする] / [特定のバージョンに更新する] に相当します。
修正版のリリース後、これらを必ず解除してください。固定したまま忘れると、以降のセキュリティ更新がすべて止まります。これが今回の対応で一番の事故ポイントです。
KB5002914 を承認済みから 拒否(Decline) に変更し、影響PCに対して個別にアンインストールを配布します。
Excelで「コピー&ペーストが反応しない」「オートフィルが効かない」症状が出ている場合、9月8日配信のOffice更新(KB5002914)が原因です。ファイルやPCの故障ではありません。Excelの再インストールは行わないでください。暫定回避として
Ctrl+Alt+V(形式を選択して貼り付け → 値)で貼り付けられます。復旧作業は情報システム部門で順次実施します。
「再インストールするな」を最初に書いておくと、無駄な作業と問い合わせがかなり減ります。
海外フォーラムで出回っている回避策ですが、やめてください。Officeは excel.exe 単体で動いているわけではなく、多数のDLLとバージョンを揃えて動作します。実行ファイルだけ古いものに差し替えると、
を招きます。BleepingComputer も明確に非推奨としています。
今回はアップデート起因なので、再インストールしても最新の更新が再び当たって同じ症状に戻ります。半日かけて元の木阿弥、という最悪のパターンです。再インストールの前に必ず更新履歴を確認してください。
KB5002914 は 29件の脆弱性(リモートコード実行・情報漏えいを含む)を修正するセキュリティ更新です。外すことは「直った」ではなく「リスクを一時的に引き受けた」状態です。修正版が出たら必ず適用することをカレンダーに入れておいてください。
一時的に脆弱性が残る以上、Excelファイルの開き方だけは締めておきます。
[ファイル] → [オプション] → [トラストセンター] → [トラストセンターの設定] → [保護ビュー] の3項目にチェックが入っていることを確認する[マクロの設定] で「警告を表示してすべてのマクロを無効にする」を維持する今回の脆弱性は「細工されたExcelファイルを開く」ことが入口です。ここさえ塞げば、実務上のリスクはかなり下げられます。
ここまでやっても直らない場合、KB5002914 とは別の原因が重なっている可能性があります。次のような、以前から知られている要因です。
[校閲] → [シート保護の解除])[ファイル] → [オプション] → [アドイン] → [COMアドイン] から一時的に全部オフにして切り分け)この不具合の経緯やニュースとしての背景は、こちらの記事にまとまっています。
オートフィル側の症状が主で、コピペ自体は通っているなら、こちらのほうが近いかもしれません。 「コピーはできるが、フィルター後に別の行へ貼り付いてしまう」場合は、そもそも今回の不具合ではありません。 それでも解決しないなら、Microsoft サポートに問い合わせてください。会社PCなら、まず情報システム部門を経由するのが確実です。問い合わせの際は、`[Excel のバージョン情報]` に出るビルド番号と、KB5002914 の適用状況をセットで伝えると話が早く進みます。Q. Microsoft 365 を使っているのにコピペできません。
今回の不具合は Microsoft 365 版での報告が確認されていません。Step 0 の切り分けからやり直し、クリップボード監視アプリやアドインを疑ってください。
Q. アンインストールしたのに、翌日また同じ症状になりました。
Windows Update が再インストールしています。Step 2C の「再インストールを防ぐ」を実施してください。Click-to-Run なら [更新を無効にする] が必要です。
Q. WordやPowerPointも同じ症状になりますか?
今回報告が集中しているのはExcelです。Word・PowerPointで同様の症状が出ている場合は、別の原因を疑ってください。
Q. Mac版のExcelは影響を受けますか?
今回のKB5002914はWindows版Office向けの更新です。Mac版での同様の報告は確認されていません。
Q. 修正版はいつ出ますか?
Click-to-Run 版には修正ビルド(16.0.17932.20996)が出始めていますが、Microsoft の公式KBページは9月15日時点で「調査中」の記載のままで、MSI版 Excel 2016 向けの修正は公表されていません。
OfficeC2RClient.exe /update user updatetoversion=... でロールバックwusa と Get-HotFix は効かないCtrl+Alt+V(形式を選択して貼り付け)、Officeクリップボード、Ctrl+D / Ctrl+R で当座をしのぐエラーが出ない不具合は、原因にたどり着くまでが一番つらいところです。ここまで来たならもう原因は分かっているので、あとは自分の環境の行を選んで実行するだけです。
※本記事は2026年9月15日時点の情報です。Microsoftから正式な修正版が公開された場合、対処方法は変わります。