首相の名を連想させる暗号資産「SANAE TOKEN(サナエトークン)」の急騰・暴落から始まった騒動が、出演者同士の責任の押し付け合いと法廷闘争という新局面に入った。元「青汁王子」こと実業家の三崎優太氏が、実業家の溝口勇児氏に内容証明を送付したことを明かし、「きっと裁判になる」と示唆。両者はビジネス系YouTube番組「REAL VALUE(リアルバリュー)」で共同チェアマンを務めた間柄だっただけに、内輪での全面対立として注目を集めている。
サナエトークンは、溝口勇児氏が関わるコミュニティ/DAO発のミームコイン。高市早苗首相の名を冠し、「政治的な後ろ盾がある」との臆測が価格を押し上げた。
価格急騰の引き金になったのが、番組内での「実は高市さんサイドとコミュニケーションを取らせていただいて」という趣旨の発言だった。これが「首相公認」との誤解として拡散した。
金融庁は「無登録での暗号資産関連営業」の疑いという観点から実態把握を進めた。利用者相談室には損失に言及した相談が複数件寄せられ、6月22日の衆院予算委員会では片山さつき金融担当相が、6月18日までに損失に関する相談が3件あったことを明らかにした(別報道では6月9日までに相談5件・うち被害額の主張3件)。タレントの政治利用と無登録営業という、二重の規制リスクを抱えた騒動となった。
三崎氏は早い段階から距離を取っていた。番組への違和感から3月の収録参加を見送り、「(リアルバリューは)1回社会的道義として休止を出すべき」と提言。後のインタビューでは「正直認めたくないけど、なんかカルトみたいになっている」と、自らが立ち上げに関わった組織を痛烈に批判した。
一方で「自分の危機意識が甘かった」とも認めつつ、「リアルバリュー全体の落ち度だとしか言えない」と、経験豊富なメンバーが誰も疑問を呈さなかった構造的問題を指摘している。三崎氏は一貫して「トークンは自分とは関係ない」と無関係を主張してきた。
三崎氏はリアルバリュー側に配信停止と謝罪を要求したが受け入れられず、番組出演を自粛。6月19日のYouTube生配信で溝口氏側に内容証明を送付したことを明かし、「内容証明送りました。きっと裁判になる」と述べた。
6月24日には、サナエトークンの“対応会議”の音声とするものを公開。三崎氏は、溝口氏がトークンの発行・運営を担当していた松井健氏に責任を全部押し付けようとしているとして、これを「トカゲの尻尾切り」と批判した。「サナエトークンも、松井氏に責任を全部押し付けようとしてる音声もある」とXに投稿し、さらなる暴露を示唆している。
X上の応酬もヒートアップ。三崎氏は溝口氏の側近・西川氏の投稿に「お前が無能だからこうなるんだろ犬が」と激怒し、「真実を話すべきかもしれない」と“爆弾”の投下を予告。三崎氏の妻でタレントのてんちむ氏も「色々と話が違い過ぎる」「片方の都合の良い話しか聞いてない感じですか?」と加勢し、論争に参戦した。
これに対し溝口氏は6月25日未明、Xで反論した。
首相の名を冠した暗号資産の暴落から始まった騒動は、(1) 無登録営業を疑う金融庁の関与、(2) 運営側保有65%という配分と“嵌め込み”疑惑、(3) 出演者間の責任の押し付け合いと法廷闘争、という複数の論点を抱えたまま長期化している。三崎氏は「時が来たら全て話す」としており、内容証明を起点とした裁判の行方と、公開された音声の真偽、そして補償が実際にどこまで履行されるのかが、今後の焦点となる。
著名人の信用と暗号資産が結び付いたとき、価格は政治的シグナル一つで乱高下し、被害は一般投資家に及ぶ。サナエトークン騒動は、インフルエンサー主導のトークン発行が抱えるガバナンスと規制の脆弱さを、改めて浮き彫りにした事例だと言える。