この記事は、EU圏のインフラやSaaSを探している人向けのサイト「EU Alternative」のガイドです。テーマはかなり明快で、サイドプロジェクトや小さなSaaSを、できるだけEU由来のサービスだけで、しかも月10ユーロ未満で回す方法を紹介しています。

最近は「データ主権」とか「EU内で完結させたい」という話をよく聞きますが、正直、理想だけではどうにもならないことも多いです。大事なのは、**“実際に使えるのか”**。この記事はそこをかなり地に足つけて見ています。そこが好感ポイントです。

記事ではまず、**“free” という言葉の扱いをかなり慎重にしています。
ここで紹介されるのは、一時的な無料トライアルではなく、永久無料プランがあるサービス**だけ。これは地味に重要です。
無料って響きはいいんですが、14日で終わる「お試し無料」は、実質あんまり無料じゃないんですよね。あとで慌てて移行する羽目になるなら、最初から別の選択肢を考えたほうがマシです。この記事の姿勢はその点でとても実用的だと思います。

このガイドで最も大きい固定費は、ホスティング(サーバー代)です。
完全無料のEUクラウドは、現実にはほぼないと割り切っています。

この構成、思った以上に強いです。
Django や Rails のアプリに PostgreSQL、Redis、バックグラウンドワーカーまで載せても、かなり余裕があると記事は述べています。個人的にも、「最初の本番環境」としては十分すぎるくらいだと思います。CRUD中心の普通のSaaSなら、むしろオーバースペック寄りかもしれません。
こちらは「少しでも安く」という人向け。
ただ、使い勝手の面では Hetzner のほうが評価しやすそうです。安さだけでなく、継続して使えるかまで考えると、Hetzner が“無難に強い”印象です。

アプリには、パスワードリセット、注文確認、magic link など、いわゆるtransactional email(取引系メール)が必要です。
つまり「ユーザーに通知を送るメール」です。ここを雑にすると地味に詰みます。
紹介されているEU系サービスは次の3つ。


ここで面白いのは、**“メールを送る”だけなら、ちゃんとEU圏で無料から始められる**ことです。
しかも Brevo は、取引メールもニュースレターもまとめて扱えるので、初期の「ツールを増やしたくない」時期にはかなり便利そうです。
商品を出したあと、ユーザーにお知らせを送りたい場面はよくあります。
そのためのニュースレター配信ツールも、EU系で無料プランがあります。

これはかなり良いですね。
特に Sender.net の無料枠は、個人開発の初期としてはかなり大きいです。小規模なプロジェクトなら、しばらくこれで十分ではないかと思います。

記事はここで、かなり率直に Google Analytics は GDPR 的に面倒だと書いています。
さらに、Cookie バナーまで必要になることが多く、最初の100人を追うだけなら大げさすぎる、という指摘です。
これはかなり同意です。
正直、初期プロダクトにおいて「どのページを何秒見たか」を細かく追うより、最低限の訪問傾向が分かれば十分なことが多いです。

ここでのポイントは、プライバシー配慮が機能の一部になっていることです。
「広告目的の追跡ではない」「個人情報をできるだけ持たない」という姿勢は、EU圏のサービスと相性が良いですし、ユーザーにも説明しやすい。これは実務上かなり助かると思います。

監視は、プロジェクトが小さいうちは後回しにされがちですが、壊れてから気づくと一番痛い領域です。

UptimeRobot は、WebサイトやAPIが生きているかを確認する用途にぴったり。
Healthchecks.io は、定期実行タスクの失敗検知に向いています。
このへんは地味ですが、「まだ売れてないから監視はいらない」ではなく、「まだ売れてないからこそ壊れたくない」んですよね。ここを押さえているのは好印象です。


フォームは意外と重要です。
問い合わせ、待機リスト、簡単なアンケート、導入後の満足度チェックなど、使い道は多いです。Tally の無料プランの太っ腹さはかなり魅力的だと思います。

ここで出てくる passkeys は、ざっくり言うと「パスワードの代わりになる新しいログイン方法」です。
指紋認証や端末の認証機能を使うので、パスワードを忘れる問題や、パスワードリセット地獄を減らせるのが強みです。
個人的には、認証は「自作しても動くけど、面倒さが積み上がる」分野です。
Django / Rails / Laravel で自前実装もできるけれど、最初から Hanko のような選択肢があるのはかなりありがたいと思います。

支払いに関しては、完全無料の決済代行はありません。
でも、ブートストラッパーにとって大切なのは、月額固定費がないことです。売れたときだけ手数料を払う形なら、初期には十分ありがたいです。
Mollie は、記事の言葉を借りるなら 「EU版Stripeに最も近い存在」です。
これはかなり納得感があります。EU圏での決済手段がしっかり揃っているのは強いですし、ヨーロッパ向けサービスでは特に相性が良さそうです。

Merchant of Record は、販売者の代わりに税務や請求まわりを引き受けてくれる仕組みです。
要するに、面倒な税金処理をお金で買う感じです。
これは人によって評価が分かれそうですが、個人的には、小さなチームや個人開発者にはかなり現実的だと思います。税務で頭を抱える時間をプロダクト改善に回せるなら、その価値は十分あるはずです。

記事の結論はかなりシンプルです。

つまり、月10ユーロ未満はかなり現実的。
しかも重要なのは、各サービスが「無料→低価格の有料プラン」へ自然に移れることです。これは大事です。無料だけのサービスだと、成長した瞬間に構成が崩れやすいですが、この記事で挙げられているものは、どれも比較的スムーズに拡張できます。
この記事を読んでいて感じるのは、これは単なる「EU推し」ではないということです。
本質は、まだプロダクトが当たるか分からない段階で、固定費と心理的負担を最小化することにあります。

その意味で、EU圏のサービスを選ぶ理由は思想だけではありません。
この4点が揃っているから、スタートアップ初期と相性がいいわけです。

率直に言うと、この記事はかなり「ちゃんとしている」と思いました。
無料サービスを雑に並べるのではなく、実際に使えるか、どこまで責任を持てるかをちゃんと見ているからです。
とくに良いのは、
という割り切りです。

「まずはAWSで全部やる」みたいな構成は、もちろん悪くないです。でも、サイドプロジェクトや小規模SaaSでは、最初からそこまで重くする必要はないことが多い。この記事は、その現実にちゃんと寄り添っています。そこが気持ちいいです。