「送信は成功したのに、送信済みアイテムに残っていない」——Outlook 定番のトラブルだが、2026年の対処は1年前と大きく変わった。理由は3つ。(1) New Outlook for Windows が Classic Outlook を段階的に置き換え、.ost を持たない Web ベース実装に変わりつつあること。(2) Exchange Online の Basic Auth 廃止が長期化し、レガシー IMAP/POP クライアント側の「送信済み」問題が実運用に響いていること。(3) Copilot for Microsoft 365 のインデックス連携と Retention / Litigation Hold の干渉で、「消えた」ではなく「別階層に隔離された」パターンが増えたこと。本稿では2026年時点の原因を頻度・切り分け順に整理する。
⚠️ 前提: 「Outlook」といっても実体は Classic Outlook (Win32 / OL2016〜2024 / M365 Apps)、New Outlook for Windows、Outlook on the Web (OWA)、Outlook Mobile (iOS/Android) の4系統に分かれ、それぞれで「送信済みアイテム」の実装が違う。まずどの Outlook かを確定させないと切り分けが空回りする。
DelegateSentItemsStyle は EWS 廃止後もクラウド側で継続)Recoverable Items に居るケースは、OWA の「削除済みアイテムの回復」または PowerShell で救出できる原因の系統がここで大きく分かれる。ここを飛ばして「送信済みが空です」だけで対処を試すと堂々巡りになる。
| 軸 | 質問 | 影響 |
|---|---|---|
| クライアント | Classic Outlook / New Outlook / OWA / Mobile どれ? | 設定画面と .ost 有無が違う |
| アカウント種別 | Exchange Online (M365) / Exchange オンプレ / IMAP / POP / Outlook.com | 送信済みの保存主体が変わる |
| メールボックス | 自分 / 共有メールボックス / 委任 / エイリアス (別 From) | 格納先メールボックスが変わる |
| 送信経路 | 直接送信 / 予約送信 (Send Later) / ルール転送 / Copilot 下書き | 途中で別フォルダに寄る |
💡 「PCの Outlook では出ないのに OWA では見える」なら Classic 側の同期・キャッシュ問題。「OWA でも空」ならサーバ側またはアカウントの取り違えを疑う——この切り分けが2026年も最短ルート。
| 症状 | 主な原因 | まず試す対処 |
|---|---|---|
| 全端末で送信済みが空 | 「送信済みにコピー保存」オフ / アカウント違い | 設定確認 & OWA で照合 |
| Classic では空、OWA には残る | .ost 破損・同期停止 / キャッシュモード不整合 |
OST 再構築(プロファイル再作成) |
| 共有メールボックスから送った分だけ入らない | DelegateSentItemsStyle 未設定 |
テナントで属性設定 |
| IMAP アカウントだけ入らない | 「Sent」フォルダマッピング / OAuth 未対応 | フォルダ再マップ、OAuth 対応クライアントへ |
| 予約送信したものが送信済みに来ない | Send Later キュー滞留 / ネット障害 | 下書き・送信トレイを確認 |
| 検索で出ない | Windows Search インデックス破損 | OWA 側で検索 → 同期問題を切り分け |
| 一度は残ったのに翌日消えた | Retention / アーカイブポリシー | Compliance で保持ポリシーを確認 |
| 削除した記憶はないのに消えた | ルール / スイープ / 別デバイスの操作 | 「削除済みアイテムの回復」→ Recoverable Items |
昔からある基本設定だが、Classic と New で場所が違う。旧記事のスクショはたいてい Classic のもの。
Classic Outlook (Win32):
New Outlook for Windows / OWA:
.ostが読めない環境(New Outlook)では サーバ側設定がそのまま反映される。逆に Classic はプロファイル/.ostにキャッシュされた設定が優先されるため、テナントで直しても即反映しない場合がある。
2024年から段階的に置き換わっている New Outlook for Windows(旧コードネーム One Outlook / Project Monarch)は、Classic と根本的に別実装。トラブルの原因帯も別物として扱うべき。
| 項目 | Classic Outlook | New Outlook for Windows |
|---|---|---|
| 実装 | Win32 ネイティブ (MAPI) | Web ベース (React + WebView2 相当) |
| ローカルキャッシュ | .ost / .pst あり |
実質なし(オフライン限定) |
| PST インポート/エクスポート | ✅ | ❌ (2026年時点で機能限定) |
| COM アドイン | ✅ | ❌(Web アドインのみ) |
| IMAP/POP | ✅ | 一部対応(拡張継続中) |
| Cached Exchange Mode | ✅ | 概念なし |
| プロファイル | mailprofile (レジストリ) |
Windows アカウントに紐づく |
「Classic では送信済みに残るが New では残らない」ケースの典型:
「自分のアドレスから送った分は残るが、共有メールボックスの From で送った分だけ残らない」は Exchange のクラシックな罠。デフォルトでは送信済みが送信者本人のメールボックスに保存され、共有メールボックス側には残らない。
Exchange Online での正しい設定 (2026年):
# 共有メールボックス側にも送信済みを残す
Set-Mailbox <shared_mailbox> -MessageCopyForSentAsEnabled $true
Set-Mailbox <shared_mailbox> -MessageCopyForSendOnBehalfEnabled $true
DelegateSentItemsStyle は Classic Outlook のローカル側の話で、Exchange Online 上では上記コマンドが正.ost 再同期をしないと反映されないので注意エイリアス送信 (Send As Alias):
Exchange Online の Basic Auth は2022年に無効化済みだが、IMAP は例外的に生き残る運用がまだ残っている。ただし2025年以降、テナント既定でさらに絞られ、レガシーな IMAP クライアントで送信済みトラブルが顕在化した。
IMAP でよくある送信済み消失パターン:
Sent フォルダを作り、Exchange Online 側の SentItems と別階層になる。OWA では別フォルダとして両方見える確認手順:
SentItems に実際にあるか確認(サーバ側の真実)Sent Items に明示的にマップ「送信済みに入っていないが、宛先には届いていない」なら、まだ送信トレイに残っている。
.ost にキューされ、オフライン中は送信されない。オンライン確認と Send/Receive Groups の設定を確認.ost 破損 / プロファイル問題(Classic 限定)Classic Outlook は .ost (Offline Storage Table) にキャッシュを持つ。「OWA では見えるが Classic では見えない」ならほぼここ。
手順(軽い順):
.ost をリネーム → Classic 再起動で再ダウンロード
scanpst.exe(受信トレイ修復ツール)は.pst用で、.ostには非対応。**.ostは消して再生成が正解**。
「一度は送信済みに入っていたのに、しばらく経つと消える」は、コンプライアンス系ポリシーが効いている可能性が高い。
Recoverable Items\Purges に保持され続ける「削除した」と思ったものは、まだサーバ上に残っていることが多い。Exchange の削除は多層構造で、階層は次のとおり。
Deletions ← ユーザが Deleted Items から削除した直後(Shift+Del 相当)
Purges ← Deletions からさらに削除 or Litigation Hold で保持
Versions ← In-place Hold 時のバージョン管理
DiscoveryHolds ← eDiscovery Hold の対象
OWA から救う(一般ユーザ):
PowerShell (Exchange Online) から救う(管理者):
# Deletions 内の該当メッセージを検索して復元先を指定
Search-Mailbox は廃止済。代替として下記:
# Compliance Search で対象特定
New-ComplianceSearch -Name "restore-sent" \
-ExchangeLocation user@example.com \
-ContentMatchQuery 'subject:"..." AND from:"..."'
Start-ComplianceSearch -Identity "restore-sent"
# 復元は New-ComplianceSearchAction -Purge の逆で、
# Restore-Mailbox 系は廃止済のため EWS/Graph 経由の再挿入が必要
2025年に
Search-Mailboxcmdlet は廃止。Compliance Search + Purview eDiscovery が公式代替。UI に慣れておく方が回り道が少ない。
「そもそも送信されたのか」から疑うなら、Message Trace が最終手段。2025年に Get-MessageTrace は Get-MessageTraceV2 に置き換わった。
# 直近10日以内の送信ログを追う
Get-MessageTraceV2 -SenderAddress user@example.com \
-StartDate (Get-Date).AddDays(-3) -EndDate (Get-Date) | \
Where-Object { $_.Status -eq "Delivered" -or $_.Status -eq "Expanded" }
FailedByBounce や Quarantined なら送信済みに来ないのも道理2026年の新しめの原因帯。Copilot for Microsoft 365 が下書き生成 → 送信を代行するフローでは、Sent Items の書き込みに以下の不整合が起きる報告がある。
Drafts 内でしか閲覧できない状態で送信され、送信済みへのコピーが遅延する| 起きた場所 | まず確認 | 次に確認 |
|---|---|---|
| Classic Outlook | OWA で同じか照合 → .ost 再構築 |
プロファイル再作成 |
| New Outlook | Classic に戻して再現するか | サーバ側の Sent Items を OWA で確認 |
| OWA | ブラウザ拡張 / キャッシュ | アカウント/テナント取り違え |
| Outlook Mobile | 同期完了しているか | オフライン送信キュー |
| IMAP (Thunderbird 等) | Sent フォルダマッピング | OAuth 未対応クライアントか |
Q. 送信は成功しているのに1通も送信済みに入らない。
A. まず OWA を開き、サーバ側の SentItems に本当にあるかを確認。あれば同期問題、なければ「保存する」設定オフ / 別メールボックス送信 / IMAP APPEND 失敗 のどれか。
Q. 共有メールボックスから送ると自分の送信済みに入ってしまう。
A. Exchange Online の仕様。Set-Mailbox -MessageCopyForSentAsEnabled $true を共有メールボックスに設定すれば両方に残る。
Q. Classic の設定を New Outlook が引き継いでくれない。
A. New Outlook はプロファイル/.ost を持たないため、Classic のローカル設定は原則引き継がない。サーバ側の設定を正として使う設計。
Q. scanpst.exe で .ost は直せる?
A. 直せない。.ost はサーバのキャッシュなので、消して再生成が正解。
Q. 削除して数日経ったが救えるか?
A. Deleted Items 内なら通常削除、そこから消しても Recoverable Items に既定14日(設定で30日まで)。Litigation Hold 中は Purges に長期保持され、eDiscovery で救える。
Q. IMAP でずっと使っていたが最近急に送信済みが空になった。
A. Basic Auth が段階的に切られていて、SMTP は通るが IMAP 側の APPEND が失敗している可能性。OAuth 対応クライアントに移行するか、公式クライアントへ切り替え。
Q. 検索しても出てこないが本当にないのか?
A. Classic の場合は Windows Search インデックス破損の可能性。OWA で検索して出れば、サーバには残っている。
MessageCopyForSentAsEnabled を最初に立てておく.pst、Compliance Center: PST エクスポート、Graph API: /me/mailFolders/SentItems/messages で JSON 保管)2026年の「Outlook 送信済みが見えない」は、Classic か New か、クライアント側かサーバ側か、自分メールボックスか共有か——この3つの切り分けを外さないことがすべてだ。旧記事の手順は Classic Outlook 前提のことが多いが、New Outlook や OWA では設定場所も同期の仕組みも別物になっている。まず OWA で照合し、サーバ側に無ければ設定・IMAP・共有の格納先を疑う。サーバ側にはあってクライアントに出ないなら .ost かプロファイルの再作成。Retention / Litigation Hold が絡む環境なら Recoverable Items と Compliance Search が最後の砦。Search-Mailbox 廃止・Get-MessageTraceV2 移行・New Outlook 移行という3つの構造変化を押さえておけば、Outlook の「消えた」はほぼ体系的に片付けられる。