AIブームの影で、静かに存在感を増しているのが data center です。
検索、動画配信、生成AI、クラウドサービス……こうしたサービスを支える巨大なコンピューター群は、電気を食うだけではありません。水も使います。
今回紹介するのは、テキサス大学オースティン校の新しい white paper(政策提言を含む報告書)です。ここで示された見通しはかなりインパクトがあります。
2040年には、テキサス州の水使用量の3〜9%を data center が占める可能性があるというのです。
率直に言うと、これはかなり重い数字です。
3%と聞くと「それくらい?」と思うかもしれませんが、州全体の水の話になると話は別です。しかもテキサスは、もともと水不足や干ばつのリスクを抱えやすい地域。そこに AI 向けの設備投資がどんどん入ってくるわけですから、「便利さのコスト」がどこに乗るのか、ちゃんと見ないといけないなと思います。
研究によると、現在の data center の水使用量は 州全体の1%未満。
ただし、今後は次のような条件で大きく変わります。
ここが面白いところです。
data center の水使用は、単純に「機械を冷やす水」だけではありません。報告書では、サーバーを冷却するための直接的な水に加えて、その施設を動かす電気をつくる過程で使われる間接的な水も含めて見ています。
つまり、水の話なのに電力の話でもある。
このへんが現代インフラのややこしいところで、でも逆に言えば、ここを切り分けずに考えないと本質を見誤るわけです。
data center は大量の計算を24時間回し続ける施設です。AIの学習や推論は特に負荷が高く、サーバーが熱を持ちます。
熱がこもると機械は不安定になるので、冷却が必要になります。
冷却方法はいくつかありますが、研究者によると、どの方式を使うかで必要な水量がかなり変わるとのこと。
しかもテキサスでは、電力の多くを natural gas、coal、nuclear energy などでまかなっており、これらの発電も冷却のために水を使います。報告書では、この発電由来の水使用だけでも 州全体の約5% に相当するとされています。
ここは個人的にかなり重要だと思います。
「データセンターが水を使う」と聞くと建物の中の話に見えますが、実際には電力網全体の水消費までつながっている。ITインフラって、雲の上の話のようでいて、めちゃくちゃ地に足のついた資源問題なんですよね。
研究チームによると、テキサス州には 400以上の data center が稼働中または建設中で、さらに計画中のものもあるそうです。
ただし、計画段階のものが全部実現するかは不透明です。
この「不透明さ」こそが、今回の論点の核心です。
水需要の見通しを立てるには、単に「何件あるか」だけでは足りません。実際に建つのか、どれだけの規模か、どの冷却方式か、どの地域に置かれるかまで見ないといけない。にもかかわらず、業界の情報は十分に公開されていないことが多い。これでは自治体も住民も、計画の立てようがありません。
この white paper は、UT Austin の Bureau of Economic Geology が作った COMPASS という研究コンソーシアムによるものです。
COMPASS は、業界、政策担当者、地域社会と連携しながら、data center の影響を整理する役割を担っています。
研究者たちが提案しているのは、かなりまっとうで、でも実務上はかなり難しいことです。
要するに、「それぞれが別々に動くのをやめて、最初から一緒に考えよう」という話です。
言うのは簡単ですが、実際にはかなり大変です。なにしろテキサスの水行政には、都市、地下水保全地区、民間供給業者、河川当局、州水開発委員会、環境当局など、たくさんのプレイヤーが関わっています。これでは情報がバラバラになりやすいのも無理はありません。
COMPASS の関係者は、業界や行政との議論で使う前提条件や指標がバラバラだと指摘しています。
Ning Lin 氏は、shared definitions and a common framework、つまり「共通の定義と共通の枠組み」が必要だと述べています。
これは地味だけど、かなり本質的です。
たとえば「この施設はどれだけ水を使うのか」と聞いても、ある人は敷地内の冷却水だけを数え、別の人は発電に必要な水まで含めるかもしれない。これでは議論が噛み合いません。
私はこういう話を見るたびに、技術の問題というより合意形成の問題だなと思います。
データセンターの水使用は、単に計算式で答えが出る話ではなく、どこまでを対象にするかというルール作りが必要なんです。そこを曖昧にしたままだと、数字はあっても政策にはつながらないでしょう。
報告書の最後では、UT の研究者たちが進めている技術的な取り組みも紹介されています。
たとえば:
つまり、問題を指摘するだけでなく、「どうやって負担を減らすか」まで考えているわけです。
これは好印象でした。批判だけなら簡単ですが、実際にはインフラ需要は止まらない。ならば、より水を使わない冷却、より効率のよい電力供給へ進むしかない。現実的です。
今回の話はテキサスの事例ですが、他の地域にもそのまま当てはまります。
AI が伸びれば data center は増える。data center が増えれば、電力と水の需要も増える。これはかなり普遍的な構図です。
しかも厄介なのは、水は「見えにくい」ことです。
電気代は請求書で見えますが、水は地域の供給システムの中に吸収されて、利用者には実感しづらい。だからこそ、公開データと共通の指標が必要になる。今回の white paper は、その必要性をかなりはっきり示したといえます。
個人的には、AI の話題はどうしても性能や便利さに目が行きがちですが、こういう物理的な制約を見ておくのがすごく大事だと思います。
「賢いモデルを作る」ことと、「そのモデルを支える社会インフラをどう維持するか」は、もはや切り離せません。
参考: Data centers are growing in Texas, but big questions remain about water use