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AI時代の電力をディーゼル発電機でまかなうのは危険すぎる? 米国で年間数百人の早死につながる可能性

キーポイント

いま何が起きているのか

AIブームの裏側で、地味だけどかなり大きな問題が起きています。
それが「電気、足りるの?」問題です。

AIを動かすためのdata centerは、とにかく電力を食います。検索、生成AI、学習、推論……見えないところで大量の計算が走っていて、そのぶん電力需要がどんどん膨らんでいるわけです。

この記事が取り上げているのは、その対策として出てきた「非常用のdiesel generatorを普段から使えばいいのでは?」という発想。たしかに、すでにある設備を使えるなら手っ取り早い。新しい発電所を建てるより早そうですし、経済合理性だけ見れば魅力的に見えるのもわかります。

でも、ここで話はそんなに単純ではありません。

この記事の結論はかなりはっきりしている

The Conversationに掲載された元記事では、環境工学の研究者が、backup diesel generatorsをAI data centerの電力として常用した場合の影響を分析しています。

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その結果はかなり重いものでした。
ざっくり言うと、​同じ量の電気を通常の電力網(grid)から供給する場合と比べて、diesel generatorを使うと米国内で年間およそ500人多く早死にする可能性があるとしています。

さらに、条件によっては800人超になるケースもあったとのこと。
この数字、かなりインパクトがあります。AIの便利さのために、見えないところで毎年数百人の命が失われうる——そう考えると、さすがに「まあ非常用だし」で済ませられる話ではないと思います。

なぜdiesel generatorが問題なのか

理由はシンプルで、​dieselは汚いからです。
ここでいう汚いとは、燃えるときにfine particulate matter(PM2.5のような超細かい粒子)​や関連化学物質を出す、という意味です。

PM2.5は、肺の奥まで入り込みやすく、心臓や呼吸器系の病気リスクを高めることで知られています。記事では、こうした粒子状汚染が米国で年間約100,000人の早死に関係していると説明しています。

しかも問題なのは、backup generatorはもともと「非常時だけ使うもの」なので、通常の発電所より規制がゆるめに設計されていることです。
つまり、想定外に長時間・常用されると、制度の前提そのものが崩れます。ここはかなり重要なポイントだと思います。制度は「その機械がどんな使われ方をするか」を前提に作られるので、使い方を変えると一気に危なくなるんですよね。

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研究ではどうやって調べたのか

この分析は、かなり慎重に行われています。

著者らはまず、data centerの位置データベースを使い、さらに「米国のdata centerには少なくとも35 gigawatts分のdiesel-powered generating capacityがある」という情報をもとに、発電能力を各data centerの規模に応じて割り当てたそうです。

そして、もしそれらの発電機が1年中ずっと稼働したらどうなるかをシミュレーションしました。
その場合、​310 terawatt-hoursもの電力を生み出す想定です。

もちろん、著者自身も「Wright氏が言っていたのは、年に数時間だけ使う話だった」と認めています。
ただし、ここが人間社会のややこしいところで、「少しだけのつもり」が「いざとなればいつでも使える」に変わりがちです。いったん設備があると、使いたくなる。これはインフラあるあるではないでしょうか。

比較対象としては、同じ電力量を既存のregional electrical grid、つまり地域の電力網から供給した場合と比べています。
さらに、空気汚染の影響を見積もるために、3種類のcomputer simulationを使っているとのことです。1つのモデルだけだと偏りが出るので、複数モデルで確認しているのは妥当で、かなりまっとうなやり方だと思います。

それでも結論はかなり厳しい

結果は、ほぼ一方向でした。
diesel generatorを常用するほうが、grid電力よりも健康被害が大きい

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細かい数値は条件で変わるものの、基本的には前述のとおり、​年間約500人の追加の早死に
しかも、もっと汚い機器だったり、条件が悪かったりすると、​800人超にもなる可能性があるとしています。

また、汚染の強い地域では、空気中の微小粒子状物質濃度が0.25〜2 micrograms per cubic meter増えると見積もっています。
数字だけ見ると小さく感じるかもしれませんが、すでに都市部の空気はぎりぎりのところにあることが多いので、この上乗せはかなり嫌な増え方です。線をちょっと越えるだけでも、ルール上はアウトになりうるからです。

「バックアップだから大丈夫」は通用しない

記事で気になるのは、機械そのものよりも、運用の難しさです。

著者は、分析ではTier 4 EPA emissions standardsに適合する比較的新しい機器を前提にしています。
Tier 4は、EPA(米国環境保護庁)のかなり厳しい基準です。つまり、かなり好意的な条件で見積もっているわけです。

それでも問題が残るなら、現実はもっと悪いかもしれません。
なぜなら、実際には古い機器が混じったり、メンテナンスが不十分だったり、排ガス浄化装置が故障したりする可能性があるからです。

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特に、modern diesel particulate filtersは汚染をかなり減らせるものの、完全ではありません。しかも故障すると、排出量が一気に跳ね上がる。
これ、地味だけど怖い話です。中央集権型の大きな発電所なら監視しやすいですが、小さな発電機があちこちに散らばると、「どこで何が壊れたのか」を把握するのが急に難しくなります。

要するに、​設備が分散するほど、管理コストも事故リスクも増えるわけです。
ここはエネルギー政策の世界でよくある罠だと思います。「あるから使える」と「安定して安全に使える」は全然違うんですよね。

では、どうするのが現実的なのか

著者は、今回の比較対象として「diesel generator vs. 現在のgrid」を置いています。
ただし米国の電力網も、現状で約60%はまだ化石燃料由来です。つまり、gridが完全にクリーンなわけではありません。

それでも、だからといってdieselを常用するのは筋が悪い、というのがこの記事の主張です。
むしろ、​solar panelsやwind powerなどのrenewable energyを増やすほうが、急増する電力需要を満たしながら危険な大気汚染を増やさずに済む、という立場です。

個人的にも、この方向はかなり筋がいいと思います。
AIのために新しい電力が必要なのは事実。でも、その答えが「排ガスを大量に出す非常用発電機を常用しましょう」では、未来のための技術が、ただの公害装置になってしまいます。さすがに本末転倒です。

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この記事が示している本当の論点

この話は、単に「dieselはダメ」というだけではありません。
もっと大きな論点は、​AIの成長コストを誰がどこで払うのかという点だと思います。

データセンターは便利ですし、AIは確かに社会を変えつつあります。けれど、その裏で増える電力需要を、空気の悪化や健康被害という形で地域住民が負担するのはフェアではありません。

しかも、記事の試算はかなり慎重です。
それでもなお、健康被害が大きい。ならば、実際の政策判断では「とりあえずある設備を使う」ではなく、送電網の整備、発電の新設、再エネの導入、需要の分散まで含めて考える必要があるはずです。

AIはたしかに革命的です。
でも、その電源がdieselの排気ガスだらけだったら、ちょっと笑えない未来になります。


参考: Using diesel generators to power the AI revolution would kill hundreds of Americans a year

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