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ひとつの二項演算子だけで「高校〜科学計算機の全部」を作る話

原文: All elementary functions from a single binary operator

キーポイント

そもそも何が新しいの?

コンピュータの世界では、「たった1つの論理ゲートでブール論理を全部作れる」という話は珍しくありません。たとえば NAND ゲートは有名で、これ1つで論理回路の基本が全部組めます。

でも、​連続的な数学、つまり実数や関数の世界では、そんな“万能部品”はあまり知られていませんでした。
少なくとも著者は、​sin や cos、sqrt や log をひとつの基本演算だけで作るようなプリミティブはこれまで知られていない、としています。

そこで出てくるのが、今回の主役です。

[
eml(x,y) = \exp(x) - \ln(y)
]

この eml は「Exp-Minus-Log」の略で、名前の通り exp と ln を材料にした演算です。
一見するとかなり変な式ですが、著者はこれと定数 1 だけで、科学計算機の標準的な機能を一通り再構成できると示しています。

image_0007.png

これはかなりインパクトがあります。
なぜなら、普通は「exp は exp」「ln は ln」「sqrt は sqrt」と個別に考えるところを、​全部ひとつの部品から出すという話だからです。発想としては、かなり“圧縮”されています。

どうやって使うのか

論文のポイントは、eml を使うといろいろな式を作れる、というだけではありません。
式の形そのものがとても単純になるのが面白いところです。

著者によると、EML形式ではあらゆる式が、同じ種類のノードだけでできた二分木になります。
二分木というのは、各ノードが子を2つ持つ木構造のことです。要するに、

という、驚くほど整った形です。

文法として書くと、

image_0006.png

[
S \rightarrow 1 \mid eml(S,S)
]

これだけ。
普通の数式文法と比べると、かなり潔いです。個人的には、こういう「複雑な世界を、極端に単純な生成規則でまとめる」話はとても好きです。数学の美しさって、こういうところにあると思います。

具体例がわりと強い

著者は例として、

[
exp(x) = eml(x,1)
]

を挙げています。これは式の定義から見ても納得しやすいです。
ln(1) = 0 なので、exp(x) - ln(1) = exp(x) になります。

image_0005.png

さらに驚くのが ln(x) の表現です。論文では

[
ln(x)=eml(1,eml(eml(1,x),1))
]

のような形で表せるとしています。
見た目はかなりクセがありますが、要するに eml を何段か組み合わせると ln も作れる、ということです。

こうした構成が「たまたま数個の例で成り立つ」ではなく、​科学計算機の基礎セット全体に対して構成的に示されたというのが重要です。
ここは単なる思いつきではなく、ちゃんと“作れる”ことを示している点が強いです。

どこがそんなに面白いのか

この論文の面白さは、単に「珍しい関数を見つけた」だけではないと思います。
むしろ、

  1. 連続数学にも万能演算子があるかもしれない
  2. 式の表現を極端に統一できる
  3. それが機械学習的な探索とも相性がいい

image_0004.svg

という、3つの話がつながっているところが魅力です。

特に3つ目は現代的です。
著者はこの EML 木を「trainable circuits」のように扱い、Adam などの標準的な最適化手法で学習させることで、数値データから元の closed-form の式を復元できる可能性を示しています。

ここでいう symbolic regression は、ざっくり言うとデータから“式そのもの”を見つける手法です。
ふつうの機械学習は「入力から出力を当てる」ことが多いですが、symbolic regression は「答えの式を人間が読める形で見つけたい」という方向です。かなりロマンがあります。

ただし、何でも万能というわけではない

論文の主張は強いですが、読み方には少し注意が必要だと思います。

まず、これは「実用上すべてが eml だけで書けば便利」という話ではありません。
むしろ逆で、​表現の理論的な可能性として面白い話です。実際に人間が計算するには、普通の sinlog を使ったほうがずっと自然でしょう。

image_0003.svg

また、symbolic regression の話も「どんなデータでも必ず綺麗な式が出る」という意味ではありません。
著者は、​生成法則が elementary なら exact formula を回復できるかもしれないと述べています。ここは控えめに読むのがよさそうです。
つまり、式の世界に真のルールがあるとき、そのルールを見つけやすくなるかもしれない、ということですね。

個人的な感想

率直に言うと、これはかなり好きなタイプの研究です。
理由は2つあります。

1つ目は、​アイデアがきれいなこと。
「全部をひとつの演算子に押し込める」というのは、数学的にも情報圧縮的にも気持ちいいです。

2つ目は、​実装や学習へのつながりがあること。
ただの遊び心ある理論ではなく、式探索や symbolic regression にも接続しているので、ちゃんと“使い道”の匂いがあります。

もちろん、現時点ではかなり挑戦的な主張ですし、こういう話は「本当に実用になるのか?」とつい疑いたくなります。
でも、研究ってたまにこういう「え、そんな切り方あるの?」という発想から次の道が開けるので、私はかなり好印象です。

まとめ

この論文は、​**eml(x,y)=exp(x)-ln(y) というたった1つの binary operator から、科学計算機レベルの関数群を構成できる**と示した、かなりユニークな研究です。

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単なる奇抜ネタではなく、

までつながっているのが面白いところです。

「数式の世界にも、NAND ゲートみたいな万能部品があるのかもしれない」
そんな夢を感じさせる論文だと思います。


この記事はAIにより自動生成されました

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