学習支援サービス Canvas が、ハッキング集団 ShinyHunters によるデータ漏えいの脅しを受けたあと、一時的にオフラインになりました。Canvasは、学校や大学で宿題の提出、課題の配布、成績確認などに使われる「授業用のオンライン教室」みたいなものです。学校生活に深く入り込んでいるサービスなので、止まるとかなり困る。記事の見出しにある Homework may have to wait は、まさにその状況をうまく表しています。

今回の件でInstructureは、システムの一部を守るためにCanvasを停止し、その後、ほとんどのユーザー向けに復旧させたと発表しました。こういうときの判断は難しいですが、外から見ると「止めるのは不便だな」と思っても、情報漏えいの可能性があるならいったん止めるのが筋だと思います。被害拡大を防ぐには、それがいちばん現実的です。

今回、Canvasにアクセスしようとした学生の画面には、ShinyHuntersを名乗るメッセージが表示されていたといいます。その内容はかなり直接的で、要するに「こちらはInstructureを侵害した。黙っていたが、相手は対応せず“security patches”を入れた。データを公開されたくなければ、サイバーアドバイザリー会社に相談して、私たちに秘密裏に連絡してこい。期限は5月12日まで」というものです。

ここで使われている security patches は、簡単に言うと「セキュリティ上の弱点をふさぐ修正プログラム」のことです。つまりInstructure側が守りを固めたので、攻撃側が焦って圧をかけた、という構図にも見えます。
もちろん、これはハッカー側の主張なので、そのまま鵜呑みにはできません。ただ、画面を書き換えられた事実やサービス停止が起きていることを考えると、かなり深刻な侵害があったのは間違いなさそうです。

The Vergeによると、今回の侵害では次のような情報が含まれていた可能性があります。


さらにShinyHuntersは、Canvas経由で侵害したとする学校の一覧を持っているとも主張しています。Bleeping Computerの報道では、そのデータ漏えいサイトには9,000校が含まれ、2億7500万人分の学生、教師、スタッフの情報があるとされています。

この数字が事実なら、かなりとんでもない規模です。個人的には、こういう事件で怖いのは「パスワードが漏れたかどうか」だけではなく、メールアドレスやID番号、メッセージのような“地味だけど使い道が多い情報”が積み上がることだと思います。詐欺メール、なりすまし、標的型攻撃の材料になりやすいからです。
InstructureはThe Vergeへの声明で、不正な攻撃者が進行中のセキュリティインシデントの一部として、学生や教師がログインしたときに表示されるページを改変したと説明しています。そのため、アクセスの遮断と調査のためにCanvasを一時停止した、という流れです。

また、同社は次の点も明らかにしました。


ここで出てくる Free-For-Teacher accounts は、先生向けに無料で使えるアカウントだと考えるとわかりやすいです。こうした“無料枠”や“試用枠”は便利な反面、本番運用のアカウントとは別の管理が必要になりやすく、攻撃者に狙われると面倒です。
技術サービスの世界では、こういう「一見すると本筋じゃなさそうな入口」が、実は本番への抜け道になっていることがよくあります。地味ですが、セキュリティではかなり重要なポイントです。

今回の件で面白いのは、攻撃者が単にデータを盗んだだけでなく、利用中の画面そのものを改ざんして脅しをかけたことです。これはユーザーの目に直接入るので、インパクトが大きい。学校の先生や学生からすると、ある日いきなりいつものCanvasに脅迫文が出るわけで、かなり不気味だったはずです。

重要なのは、教育プラットフォームがもはや「学校内のシステム」ではなく、巨大な個人情報の集積地になっている点です。宿題や成績だけでなく、連絡先やID、やり取りの内容まで入っている。だから1回の侵害が、単なるITトラブルでは済まなくなっています。
正直、こういう教育系SaaSの事故はもっと注目されてもいいと思います。派手さはないけれど、影響を受ける人数がとんでもなく大きいからです。

Instructureは、先週すでに「セキュリティを強化するパッチを配布した」と述べていました。今回の復旧後も、Canvas BetaやCanvas Testはまだメンテナンスモードのままで、Free-For-Teacher accounts の再開時期は明言されていません。

つまり、サービスは戻ってきたものの、完全に落ち着いたわけではない、というのが現状です。こういうケースでは、表向きの復旧よりも、そのあとに残る調査や再発防止のほうがむしろ本番です。
個人的には、今後Instructureが「どこから侵入されたのか」「どこまで影響したのか」「学校側が何を確認すべきか」をどれだけわかりやすく説明できるかが、信頼回復のカギになると思います。

参考: Canvas is online again after ShinyHunters threaten to leak schools’ data