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GoogleがOpenAIの「法人営業の切り札」を引き抜いた話

記事のキーポイント

いま何が起きているのか

Business Insiderの記事が伝えているのは、かなりわかりやすく言うと、​​「AI業界の営業戦争が、プロ向け市場で激化している」​という話です。

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今回の主役は、OpenAIの元「head of private equity」だったPaul Zimmerman氏。彼はGoogleに移り、​GoogleのAIをPE firmsとその投資先企業に売る役割を担うことになりました。

同時に、OpenAIでsales責任者を名乗っていたJames Dyett氏も、OpenAIの大口支援者として知られるThrive Capitalに移ると発表しています。OpenAIにとっては、短期間で有力人材が2人抜けた形です。

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正直、これはかなり象徴的だと思います。AI業界って「すごい技術を作った会社が勝つ」だけではなくなってきていて、​誰がどう売るかがますます重要になっているんですよね。

なぜPE firmsがそんなに重要なのか

ここで出てくる PE firms は、private equity firms のことです。日本語だとプライベート・エクイティファーム、つまり企業に投資して経営改善や価値向上を狙う投資会社のことです。

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これがAI企業にとっておいしいのは、PE firmsが何千社もの企業をまとめて保有・支援しているからです。
もしPE firmsとつながれれば、その傘下の企業群に一気にAIツールを広げられる可能性がある。これは営業としてはかなり効率がいい。

たとえば、1社ずつAI導入を説得するのは大変ですが、PE firmsに「このAIを使えば投資先企業の効率が上がります」と売り込めれば、話が一気に大きくなるわけです。

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個人的には、ここが今回のニュースのいちばん面白いところだと思います。AIの競争って、モデルの性能比べだけじゃなくて、​**“どこに売ると最短で大きな売上になるか”の知恵比べ**でもあるんですよね。

OpenAI、Anthropic、GoogleがPE firmsに近づく理由

記事によると、生成AIの競争はここ1年で、​consumer adoption(個人利用の広がり)​からbusiness use cases(企業での実用)​へと重心が移っています。

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これ、すごく大事です。
個人向けサービスは話題になりやすいけれど、収益は読みにくい。一方で法人向けは、導入が決まれば契約が大きく、継続収益にもつながりやすい。AI企業にとっては、​​「派手さ」より「安定した売上」​がほしいフェーズに入ってきたということです。

その法人市場への入り口として、PE firmsがかなり有力なんですね。
なぜならPE firmsは、投資先企業の業務効率化に強い関心を持っているからです。AIは「コスト削減」「作業の自動化」「分析の高速化」と相性がいいので、売り込みやすい。

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記事では、OpenAIがTPGやBain Capitalなどと組む10億ドル規模のjoint ventureを立ち上げると報じられていることにも触れています。
また、競合のAnthropicも15億ドル規模のPE firmsとの提携を始めたとされています。
さらにGoogleも、​BlackstoneやKKRとAIモデル導入の話し合いを進めているそうです。

つまりこれは、単なる人材の移動ではなく、​AI大手が一斉に「法人営業の入り口」を取りにいっている流れの一部だと見てよさそうです。

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このニュースの本質は「営業人材の争奪戦」

技術ニュースに見えて、実はかなり営業・事業開発のニュースです。

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Paul Zimmerman氏のような人は、単にAIの中身を理解しているだけでなく、

を知っているはずです。こういう人材は、AI企業にとってかなり貴重です。

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だからGoogleが彼を取ったのは、単に「人を採った」というより、​OpenAIが開拓した法人営業の知見を横取りしたような意味合いもあると思います。もちろん、そう断定はできませんが、業界の見え方としてはかなりそういう匂いがあります。

それで、OpenAIにとって痛いのか

痛いです。かなり。

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もちろん、大企業では人の出入りは珍しくありません。しかも記事の中でも、関係者はコメントしていないし、詳細な背景までは見えません。
ただ、OpenAIは今まさに、​製品・研究・販売のすべてを並走させなければならない局面にあります。そこで営業のキーパーソンが抜けるのは、地味ですが効きます。

特に、法人向けの売上を伸ばしたい時期に営業責任者やPE担当が動くのは、チーム作りの面でも痛手です。
AIモデルの精度が高いだけでは売れない。そこに売り方の設計が必要だからです。

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ここがポイント:AI競争は「モデル」から「流通」へ

このニュースを見ていて感じるのは、AI業界の勝負がかなり成熟してきたということです。

最初は「どのモデルが賢いか」が中心でした。
でも今は、

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が重要になっています。

つまり、AIは単なる研究競争ではなく、​流通と営業の競争になってきた。
この変化は、技術好きには少し地味に見えるかもしれませんが、実はとても大きいです。なぜなら、ここから先は​「いいものを作った会社」より「うまく広げた会社」が勝つ場面が増えるからです。

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まとめ

GoogleがOpenAIのPE担当幹部を引き抜いた、というニュースは、表面的には人事ネタです。
でも中身は、​AI大手が法人市場、とくにPE firmsを通じた販売チャネルの確保に本気になっているという話でした。

個人的には、これはAI業界の“第二章”っぽさがあって面白いと思います。
派手なデモやチャットの便利さだけでなく、最終的には誰がどの企業にどう売るかが勝負になる。そういう現実が、だんだんはっきりしてきた感じです。

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参考: Google just snagged OpenAI's head of private equity

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