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BitcoinマイナーIRENがNvidiaと結ぶ巨額AI契約とは? 3.4億ドル規模の意味をわかりやすく解説

この記事のキーポイント

Bitcoinマイナーが、なぜNvidiaの相手になるのか

Bitcoinマイナーと聞くと、多くの人は「暗号資産を掘るための電力食いマシン」を思い浮かべるはずです。
でも最近のマイニング企業は、それだけではありません。巨大なデータセンター、安い電力、送電網への接続、土地の確保といった強みを持っているので、​AI向けの計算設備を置く場所としてもかなり魅力的なんです。

IRENはまさにその代表例で、今回Nvidiaと結んだ契約は、単なる「GPUを買う・売る」話ではなく、​AI計算インフラを一緒に作る話だと言えます。

正直、これはかなり面白い流れだと思います。
Bitcoinを掘るために作った“電気を食う箱”が、今度はAIを動かす“頭脳の工場”になる。インフラって、一度整うと用途が変わっても生き残れるんですね。

契約の中身:3.4 billionドルのcloud services契約

Decryptによると、NvidiaとIREN Limitedは、​5年で3.4 billionドルのmanaged GPU cloud services契約を発表しました。
ここでいうGPUは、画像処理だけでなくAIの学習や推論にも使われる高速計算用のチップです。

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この契約のポイントは、IRENがNvidiaに対して、​自社のGPUクラウドサービスを提供すること。
つまりIRENは、Nvidiaの社内AIや研究用途向けに、計算能力を貸し出す側になるわけです。

そして計画の中心になるのが、NvidiaのDSX architectureです。
ざっくり言うと、AI向けの大規模なデータセンターを効率よく組み立てるための設計思想・仕組みのことだと考えるとわかりやすいです。

5 gigawattsって、どれくらいすごいの?

記事では、​最大5 gigawattsのAI infrastructureを展開する計画とされています。
gigawattsは電力の単位で、ものすごく大きな規模です。家庭の電力使用量とは次元が違います。

ここで大事なのは、AIは「賢いソフト」だけでは動かず、裏で膨大な電力とサーバー設備が必要だということ。
今のAI競争は、モデルの性能競争であると同時に、​どれだけ計算資源を押さえられるかの場所取り競争でもあります。

だからこそNvidiaのようなチップ企業だけでなく、IRENのようなインフラ企業の価値が急に上がっているんですね。
個人的には、ここがいちばん今っぽいところだと思います。AIは“頭の良さ”の話に見えて、実はかなり“場所と電力と契約”の世界なんです。

NvidiaがIREN株を買えるオプションも付いた

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今回の契約には、かなり重要なおまけがついています。
Nvidiaは、​5年間で最大3,000万株を1株70ドルで買えるオプションを得ました。
これは将来の値上がり益を狙える権利のようなもので、記事では最大2.1 billionドルの投資権に相当すると説明されています。

要するにNvidiaは、IRENとビジネス上の関係を深めるだけでなく、​資本面でも関わる余地を確保したわけです。
こういう構造は、単なる取引先以上の強い結びつきを示します。言い換えると、NvidiaはIRENをかなり本気で重要なパートナーだと見ているように見えます。

IRENは“Bitcoin miner”から“AI compute provider”へ

IRENはもともとBitcoin miningで知られていました。
でも今では、AI向けの計算能力を提供する会社としての色がどんどん濃くなっています。

記事によるとIRENの共同創業者兼共同CEOのDaniel Roberts氏は、今回の提携について、​NvidiaのAI systemsとarchitectureの強みと、IRENのpower、land、data centers、GPU deployment、infrastructure operationsの経験が組み合わさると述べています。

ちょっとカタカナが多いですが、要するに

この組み合わせはかなり合理的です。
AIは天才的な研究者だけでは回らず、​大規模インフラを長期で運用できる会社が必要です。IRENはそこに入り込んだわけですね。

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スペインの買収で、電力ポートフォリオは5 gigawattsへ

IRENは同時に、スペイン拠点のデータセンター開発会社Ingenostrum(Nostrum Group)を買収することにも合意しました。
これで490 megawattsのgrid-connected powerが加わり、IRENの総電力ポートフォリオは5 gigawattsに達するとされています。

ここは地味に大きい話です。
AIデータセンターは、GPUをたくさん積めば終わりではなく、​電力を安定して確保できるかが勝負だからです。
つまりIRENは「Nvidia案件のために設備を整える」のではなく、​そもそも大量電力を扱える企業として体制を固めているわけです。

こういう手を打てる会社は強いです。AIブームは一過性に見えることもありますが、電力と土地とデータセンターは一朝一夕では増えません。そこを先に押さえた会社が、次の勝者になる可能性は高いと思います。

株価は上がったが、決算の弱さで少し失速

市場の反応もドラマチックでした。
IREN株は木曜の時間外取引で一時72ドル超まで急騰し、終値56.85ドルから大きく跳ねました。

ただし、その勢いは長続きしませんでした。
理由は、同日に出した四半期決算が弱かったからです。記事では、​第1四半期に2億4780万ドルの純損失を計上し、アナリスト予想を大きく下回ったとされています。

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これは投資家心理としてはかなりわかりやすい動きです。
「大型契約!」でテンションが上がる
→ でも「決算悪いのか…」で冷静になる
という流れですね。

結局、話題性だけで株価はずっと上がり続けない。
こういうところが市場の面白さでもあり、厳しさでもあります。

それでも評価は高い。Bernsteinは目標株価100ドル

それでも、投資銀行BernsteinのアナリストはIREN株に100ドルの目標株価を設定したと記事は伝えています。
かなり強気です。

さらにNvidia株自体も強く、最近は215ドル超で推移し、過去1年で83%上昇しているとのこと。
AI需要の強さを考えると、Nvidiaにしろ、それを支える周辺企業にしろ、資金が集まりやすいのは納得感があります。

ただ、ここは少し冷静に見たいところでもあります。
AIインフラ企業は今とても注目されていますが、契約規模が大きいぶん、​実際に計画通りの設備を構築し、収益に変えられるかが重要です。
夢は大きい。でも工事は地味。ビジネスは結局そこなんですよね。

Microsoftとの大型契約もすでにある

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IRENは今回のNvidia契約の前に、すでにMicrosoftとの97億ドル規模のGPU cloud infrastructure契約を発表していました。
しかもその案件では、Nvidia GB300 GPUsを使い、テキサス州Childressのデータセンターが使われるとのこと。さらにDell Technologiesとの58億ドルの機器購入契約も含まれていました。

つまりIRENは、Nvidiaだけに頼っているわけではなく、​複数の巨大テック企業向けにAI計算基盤を提供する立場になっています。

記事では、NvidiaとMicrosoftとの契約を合わせると、IRENのコミットメントは15 billionドル超に達するとしています。
これはもう、Bitcoin minerというより、AIインフラの大企業と言ったほうがしっくりきます。

いま起きているのは「AI計算資源の争奪戦」

この記事の本質は、IRENの一社だけの話ではありません。
今、AI業界では巨大な計算資源を先に押さえた会社が有利という状況が進んでいます。

だからこそ、

つまり、Bitcoin miningで鍛えた電力・設備・運用力が、AI時代にそのまま武器になる。
これはかなり大きな産業転換だと思います。

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個人的には、これからの勝ち筋は「AIモデルを作る会社」だけじゃなくて、「AIを回す場所を持つ会社」にも広がっていくのではないか、という印象があります。派手さはないけれど、インフラ企業は強い。結局、文明はインフラで回っているので。

まとめ:IRENは“掘る会社”から“支える会社”へ

IRENの動きは、暗号資産マイニング企業の進化形としてかなり象徴的です。
Bitcoinを掘るために持っていた電力・土地・データセンターの資産が、今はAIの計算基盤として価値を持つ。
この変化は、AIブームの裏側にある「本当に儲かる場所」を示しているようにも見えます。

もちろん、契約が大きいからといって成功が保証されるわけではありません。
しかし、少なくともIRENは、​AI時代に必要な“土台”を押さえる側に回ってきたのは間違いなさそうです。

これは単なる株価材料ではなく、​テック業界の力学が変わっているサインとして見るとかなり面白いニュースだと思います。


参考: Bitcoin Miner IREN Secures $3.4 Billion Nvidia AI Deal, With $2.1 Billion Share Option - Decrypt

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